活動を再開した新生GREAT3が、12年の『GREAT3』に続くニューアルバム『愛の関係』を3月19日にリリースした。 12年5月に片寄明人と白根賢一の2人で活動再開を発表と同時に高桑圭が脱退するも、同年8月に若干23歳のjan(ヤン)が新ベーシストとして参加。 今年結成20周年を迎えたメモリアルに相応しい完成度の高いアルバムとなった。
ソングライティングにおいても三者三様、各々がその個性を曲に投射させ、絶妙なバランスでアルバムのトータリティを生んでいる。これもバンドにおける新たなトロイカ体制の賜物だろう。
先入観では相容れないであろう、70~80年代のダンス・ミュージックやニュー・ウェーヴ・サウンド、60年代サイケデリック、70年代のブルーアイドソウルから00年代音響派等々、時空を飛び越えたジャンルレスなスタイルが奇妙に共存しているのが彼等最大の魅力である。音楽マニアを自認する弊誌読者には聴きどころが多いので紹介したい。
GREAT3は94年のロッテンハッツ解散後、ヴォーカル兼ギターの片寄明人を中心にドラムの白根賢一とベースの高桑圭による3ピース・バンドとして95年にアルバム・デビュー。
オリジナル・アルバム7枚とシングル13枚を発表し、ポスト渋谷系という枠を超えてコアな音楽通やクリエイターから大きな支持を得ていたが04年に活動休止。メンバーはそれぞれのソロ・ユニットと平行しながら、プロデューサーやセッション・ミュージシャンとして幅広く活動を続けていた。リード文から繰り返すが、12年の活動再開に伴うメンバー・チェンジで新生GREAT3として今回2作目としてリリースされたのが本作『愛の関係』である。
では主な収録曲を解説していこう。 アルバム冒頭はフアナ・モリーナに代表されるアルゼンチン音響派にも通じるエレクトロニカとフォーキーなサウンドにスモーキーなヴォーカルが心地いいjan作の 「丸い花」。
では主な収録曲を解説していこう。 アルバム冒頭はフアナ・モリーナに代表されるアルゼンチン音響派にも通じるエレクトロニカとフォーキーなサウンドにスモーキーなヴォーカルが心地いいjan作の 「丸い花」。
続くのは前アルバムの軸となり先行配信された「彼岸」と同じく、片寄の作詞と白根の作曲によるタイトル曲「愛の関係」で、今年のグラミーで最優秀レコード賞を獲得したDaft Punkの「Get Lucky」(ファレル・ウィリアムスとナイル・ロジャースをフューチャー)にも通じるグルーヴィーなサウンドが懐かしくも新しい。作詞面では「彼岸」へ対する回答というべきパンチラインの「どうせいつか 死ぬんだろ 崖っぷちで 笑いたい ・・・」(「愛の関係」より歌詞引用)が耳に残って離れない。
アルバム中最もキャッチーでライヴ・レパートリーとして盛り上がるであろう「穴と月」も完成度が高い。今月来日公演を成功させたばかりのローリング・ストーンズのギター・サウンドに、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサイケデリックなエッセンスを注入した様な名曲である。片寄の作詞、白根とjanによる作曲でリード・ヴォーカルはjanが取っている。
「Don't Stop Words」は一聴して片寄が中心になって作られたと思しき洗練されたブルーアイドソウル~ファンク・ナンバーで、GREAT3流ソウル・ミュージックの典型である。
一方で片寄はヘヴィなサイケデリック感覚を全開させた「マグダラ」の様な快作を生み出すのだから面白い。ここでの白根のドラム・ソロはビートルズの「THE END」(『Abbey Road』69年)のそれを彷彿させてにんまりする。とにかくこの曲は未整理ながら編集による構築力が素晴らしく、個人的にはアルバム中1,2を争う好みの曲である。
「モナリザ」は「愛の関係」と同様に片寄=白根作のダンスナンバーで、片寄のリード・ヴォーカルにはオートチューン!が掛けられているが、その刹那的な歌詞の世界と相まって非常に効果的である。
続く「タランチュラ」は片寄作で、jan作の「丸い花」と同じくアルゼンチン音響派を彷彿させるサウンドで、アルペジオで奏でられるアコースティック・ギターのひんやりした感触はS&Gの諸作にも通じる。
ラストの「砂時計」は片寄=jan作による洗練さとサイケデリックな怪しさを共存させたニュー・ソウル風のテイストで、『There's No Place Like America Today』(75年)の頃のカーティス・メイフィールドのサウンドでネッド・ドヒニーが歌っているかの様な曲である。
jan作曲だが片寄のソロ・アルバム『Hey Mister Girl!』(2000年)に収録されていても違和感はない。筆者的にもアルバム中ベストと思える名曲だ。
プロデュースは前作と同様、佐野元春&ザ・ハートランド~Dr. Strange Loveのギタリストとして活躍した長田進で、ファースト・アルバムからGREAT3には欠かせない重要人物である。
GREAT3の最高傑作がこの『愛の関係』によって塗り替えられるのは間違いないので、興味を持った音楽ファンは是非入手して聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)
(ウチタカヒデ)
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