あけましておめでとうございます。2013年は自分にとってほとんどが入院生活で、病気により障害者になった忌々しい一年で、最後の最後には大滝詠一の急逝というあまりにショックな訃報が飛び込んできました。しかし2014
年の最初のアップロードは自宅から、そしてライフワークのビーチ・ボーイズと、いい年になりそうです。
2013年に突如現れたビーチ・ボーイズの『Surfin'
1962』とビートルズの『I Saw Her Standing There』。Web VANDAで既に紹介したが、やはりEUの著作権の保護が50年なので、期限切れの1962年の音源が登場してきたのである。今、法改正をしていてさらに20年延長される模様だが、既発表の音源の権利が守られるだけで未発表の音源については保護されない。それでブートレガーに美味しい思いはさせないとApple/Capitolは未発表にしていた1963年の音源を一気にデジタルで放出した。ビートルズは日本のiTunesで『The Beatles
Bootleg Recordings 1963』として59曲がダウンロードできる。そしてビーチ・ボーイズはアラン・ボイドが声掛け役になってEndless Summer Quarterlyのリー・デンプシーが個人的に所有している当時のアセテートを提供するなどして、22曲が集まった。その内、アナログのEPブートでリリースされた「Gonna
Hustle You」とハニーズのLPブート『The Definite Album Vol.Ⅲ』に収められていたオリジナルの5曲はかつて聴くことができた曲だが、残りの16曲は初めて聴く超貴重音源ばかり。さらにその内15曲はブライアンのオリジナルである。このアルバムはアメリカのiTunesで『The
Big Beat 1963』としてダウンロードできるが日本では未発売で入手できない。この度ハワイ経由で入手できたので紹介しよう。
さっそく、クレジットされている名義ごと紹介していこう。特に記述しない曲は全てブライアンのオリジナルである。まずはタイトルになったボブ&シェリから。ボブとはブライアンのクラスメートで「Your Summer Dream」を共作したボブ・ノーバーグのこと。ボブのグループのサヴァイヴァーズでもブライアンは「Pamela Jean」の作曲・プロデュースで支えていて、ブライアンの初期の親友の一人である。ボブ&シェリ名義のレコードはブライアンの最も初期のプロデュース&作曲を担当した超レア盤「The Surfer Moon/Humpty Dumpty」のみだが、1962年のリリースなのでまだサウンドは薄かった。しかしここに収録された「The Big Beat」と「Ride Away」は1963年の録音なので、ピアノやサックス、コーラスでサウンドはパワフルになり、見違えるほど。ただ曲は「The Big Beat」は「Do You Remember」であり、「Ride Away」は「Surfer's Holiday」なので、ボツにされてビーチ・ボーイズとアネットで使われた。サヴァイヴァーズの「Pamela Jean」が「Car Crazy Cutie」で使われてしまったように。よくよく不運な人である。次にビーチ・ボーイズ名義から。いかにもデモの「Mother May I」は、単純なコード弾きでブライアンのファルセットで歌われるのでおや?と思ったがこれは「Our Car Club」の原型である。そして「I
Do(Demo)」のデモ。テンポが幾分スローで、サウンドも単純だが、ハーモニーは出来上がっており、爽やかだ。「County Fair」を発展させた曲である。「Ballad
Of Ole' Betsy(Demo)」はインストで、まずは通しで演奏してみたというテイク1のような感じ。ついでブライアン・ウィルソン名義のデモ。「First Rock And Roll Dance(Instrumental)」は、ギター、サックス、ピアノが順にソロを取り、ドラムのビートも激しくカッコいいロックンロールである。リード・ギターの切れ込み方がソリッドで、カールだとするといいセンスだ。ドラムはバスドラの使い方が明らかに「Surfin' USA」で、この部分は原型と言えよう。「Gonna
Hustle You」はジャン&ディーンの「The New
Girl In School」の元歌であり、その後このタイトルでも歌われたブライアンの代表曲のひとつ。このデモはかつてアナログ・ブートで出回ったものだが、ブライアンのファルセットが素晴らしく、ジャン&ディーンの完成品より出来がいい。「Bobby Left Me(Backing Track)」は、サックスがパワフルで『Little Deuce Coupe』あたりの収録曲のようなサウンドのオケ。そして「Side Two(Instrumental)」は、単純なビートのロックンロールで、完成品とは思えない。「Thank Him(Demo)」はきれいな曲だが、ブライアンにしては工夫がなく、ボツにしたのが分かるスロー・バラード。ボブ・ノーバーグ&ブライアン・ウィルソンwithハニーズの「Marie」はハンドクラップを入れたカントリー・タッチのロック・ナンバーで、なかなかいい出来だ。そしてゲイリー・アッシャーの「If It Can't Be You」は、ブライアンにしては珍しいオールディーズ・スタイルのロッカ・バラードで、ボツにしたのが分かる。そしてYou Tubeに突然アップされ話題を呼んだヴィッキー・コッハー(後のヴィクトリア・ヘール)の「The Summer Moon」が遂にオフィシャル・リリースとなった。オケは完全な『Surfer Girl』の「The Surfer Moon」であり、歌が彼女。歌詞はsurferをsummerに変えてありサビの歌詞はまったく違う。ボブ・ノーバーグの知人の彼女は当時ミス・ロサンゼルスに選ばれた美人で、後に女優になり「ハワイ・ファイヴ・オー」にレギュラー出演し、「スパイ大作戦」や「インベーダー」にゲスト出演した経歴を持つ。歌も軽やかで、彼女の言葉によるとブライアンはこのテイクを聴いてすっかりこの曲に恋してしまったそうだが、結局はボツにされ、ビーチ・ボーイズとして発表してしまったので、とてもガッカリしたそうだ。この頃のブライアンは『Surfer Girl』と『Little Deuce Coupe』をほぼ同時発表という超人ぶりを見せてくれたが、さすがに曲が足りなかったのだろう、この「The Summer Moon」や前述の「Pamela Jean」の歌詞を変えてビーチ・ボーイズで使ってしまった。仕方のないところだ。残るは全てハニーズである。「Funny Boy」はハニーズにしては初めて聴くシャウトして歌うパワフルなナンバーで新しい彼女らの面が見える。ヒットには結びつかないだろうがボツなのは惜しい。「You Brought It All On Yourself」はハニーズらしいハーモニーが楽しめる佳曲で、アップテンポで快調な出来。「Make The Night A Little Longer」は、キング=ゴフィン作のきれいなチューンで、ストリングスも付けられているので、発表予定だったのだろう。「Rabbit's Foot(Unfinished Track With Backing Vocals)」は、ビートの付け方といい明らかな「Our Car Club」。コーラスはハニーズだが、誰がリードを入れる予定だったのか。そして残る5曲は70年代のLPブート『The Definite Album Vol.Ⅲ』でしか聴くことが出来なかったジンジャー・ブレイクとダイアン・ローヴェルの書いたオリジナル・ナンバーで、ブライアンはプロデュースを担当した。「Once You've Got Him」はいかにもハニーズらしい弾むようなナンバー。「For Always And Forever(Demo)」はオルガンを入れたミディアムのバラードで、ハーモニーも爽やかで出来はいい。「Little Dirt Bike(Demo)」は、アップテンポのホットロッド・ナンバーで、これも快調。「Darling I'm Not Stepping Out On You(Demo)」と「When I Think About You(Demo)」はスチール・ギターをフィーチャーしたカントリー・タッチのナンバーで、また違った魅力を見せる。こうやって聴くとハニーズは、オリジナルも書けるし、なかなかの才女だったことが分かる。早く日本のiTunesでもダウンロードできることを望む。(佐野邦彦)Special
Thanks To 伊藤博通
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