Tom & Jerryは、エヴァリー・ブラザースの路線を狙った曲が多い。オールディーズだが「I'm Lonesome」や「Surrender,Please Surrender」(後者はポールの曲ではない)などは爽やかなバラードだった。True Taylorはエルヴィスを狙ったもの。Jerry Landis名義は数も多く、バラエティに富んでいる。最初のシングルはロックンロール路線だが、同年のデモ「Dreams Can Come True」はフォークタッチのバラード、60年のデモ「Up And Down The Stairs」は陽気なポップ・ナンバーで、その路線を継承したのが60年のシングル「Just A Boy/Shy」だった。片面を入れ替えた「I'd Like To Be」はポールの曲ではないが洒落たオールディーズ・バラード。61年の「Play Me A Sad Song/It Means A Lot Of Them」は女性コーラスを入れ、古いタッチのオールディーズ・バラードに戻る。61年の8曲の未発表デモはロックンロール、ラテン、フォークなど色々試行錯誤しているが個人的には古いタッチのきれいなバラードの「Sleepy Sleepy Baby」がいいと思っている。61年と62年にJerry Landis名義で2枚シングルを出したが、ここでは進歩はなく、「I'm So Lonely」のサウンドが厚い、「Lisa」がきれいなバラードというだけだ。61年から62年にかけてポールがTicoとなって作ったグループTico & The Triumphsのシングル4枚はドゥ・ワップ・スタイルのものが多く、まさに先祖帰り。まったくヒットはしないない。ポールが参加したThe Mysticsのシングル「All Through The Night」はポールが書いた曲で、軽快なポップ・バラードである。さて残るはアート・ガーファンクルの2枚のシングルだ。59年のArtie Garr名義のシングル「Beat Love/Dream Alone」はどちらもアートの曲で、特に「Beat Love」は持ち前の甘いヴォーカルの魅力が発揮された傑作と言えよう。61年には「Private World/Please Forgive Me」を出しA面はアートの曲だったが、ブラザース・フォー調の暗いフォーク・ソングだった。全48曲、今までリリースされたこの時代のCDはみな、時系列はバラバラ、名義も書いていないものが大半で、何が何だか分からなかったが、このCDは全48曲が、時系列に並べられ、名義とレコード番号まで書かれているので今までの中のベストと言える。作曲者の名義がないのが唯一の欠点だ。このCDを基本としてここに収録されなかった曲の入ったCDと、未だCD化されていない音源を紹介しておこう。
2009 『Early Simon & Garfunkel』(Deejay)※59年のThe Cosines(Paul Simon & Carol King)の録音「Ask Me Why」(オールディーズ・スタイルのバラード)収録。ただしこのシングルは1992年になってChanceよりJerry Landis名義で、アナログでリリースされた。
2000 『Two Can Dream Alone』(Burning Airlines)※58年の録音だが66年のPickwickのTom & Jerry時代の廉価盤LP『Simon & Garfunkel』で発表されたインスト曲「Simon Says」「Tia-Juana Blues」と、59年のArtie Garr(Garfunkel)のシングル「I Love You(Oh Yes I Do)」「A Soldier And A Song」(どちらもオールディーズ・スタイルが際立ち出来は良くない)、63年のJerry Landis(Simon)の音源「Flame」(ポールの曲ではないが、63年なのでサウンドがあか抜けている)、他にArtie Garrのシングル「Beat Love」の前半からハーモニーが入るヴァージョン収録。
1993 『Tom And Jerry Their Greatest Hits Vol.1』(Domino)※64年のJerry Landisの未発表曲「Forever And After」(もう64年なのでS&Gに通じるサウンドと歌声によるフォーク・ナンバーに仕上がった)「Aeroplane Of Silver Steel」(ラテンのビートを使ったフォーク・ナンバー)収録。-
1993 『Tom And Jerry Their Greatest Hits Vol.2』(Domino)※64年のJerry Landis(Simon)の未発表曲「Bingo」(トラディショナルナンバー。まさにフォーク)収録。
☆Tom & Jerry時代の必要なシングル
1962 The Mystics(Paul Simon参加):「Don't Tell The Stars/Let Me Steel Your Heart Away」(Laurie)※A面はPaulがリード・ヴォーカルだという。どちらも軽快なドゥワップナンバー。1960年リリースという説もある。You Tubeで聴ける。
1992 Jerry Landis: 「Just To Be With You」※B面は「Ask Me Why」。1959年に The Cosines(Paul Simon & Carol King)で録音されたもの。こちらの方がポールのソロ・パートがあり出来はいい。You Tubeで聴ける。
※なお、1961年のTom & Jerry:「I'll Drown In My Tears/The French Twist」(Mercury)もディスコグラフィーに記載されているが、どちらもソウルフルなインストで、作曲がA面Glover、B面J.Kennedy-B.Tubert-B.Bisney-M.Singleton、プロデュースはShelby Singletonとクレジットされていたので、同名異グループと思われる。(佐野邦彦)
0 件のコメント:
コメントを投稿