2014年1月19日日曜日
☆マーク:『マーク・ファースト「六夢」+1』(Clinck/CRCD5079)☆マーク:『マーク・ブライト+1』(Clinck/CRCD5080)
久々に感動の日本アーティストのリイシューだ。そう、マークことGAROの堀内護が、1976年のGARO解散直後の11月に発表した最初のソロ・アルバム『マーク・ファースト「六夢」』と、77年11月に続けてリリースしたセカンド・アルバム『マーク・ブライト』の2枚が、それぞれアルバムに合わせてリリースしたシングルのみの貴重な音源をボーナス・トラックに入れて、紙ジャケ、当時の歌詞カード(コード付きなのが泣ける)で完全復刻、さらに全曲に対する堀内さんの当時のスタッフも含めた詳細な証言、そして高木龍太氏とのインタビューで、解散後から、この2枚のアルバムを最後に音楽業界からの長期引退までの話を一気に知ることができる。解散後もトミー(故・日高冨明氏)と、仲よく交流を続けていたエピソードなど長年のGAROファンとして読んでいて嬉しくなる。GAROの全音源(一部初期ライブは別発売中。Web VANDAのGARO Collecting Guide参照)が収録された『GARO BOX』は廃盤のため10万円近い高額プレミアムが付いていて、今でもどれだけGAROの音楽が先進的で愛されていたかが分かる。この2枚のソロのあと、17年後に堀内さんは1994年のグッドフレンズ名義のアルバム『ウッドストックの夏』に参加して4曲を提供する。その後に私は2回ほど、堀内さん達と飲みにいく機会があり、色々お話をさせていただいたが、ともかく謙虚な物静かな方で、自分が中学生の頃に憧れていたあのGAROのマークが目の前にいるなんて忘れてしまうほどだったことを思い出す。その堀内さんは2007年頃から音楽活動を本格的に再開し、ついに昨年、豪華ゲストを招いて3枚目のソロ・アルバム『時の魔法』をリリースしたばかり。『GARO BOX』さえあれば、この解散直後の2枚のアルバムとシングル以外の音源は、全て入手可能なので、このリイシューで多くのファンにとって欠けていたミッシング・リンクが見つかったことになる。今はとうに存在していないディスコメイトからのリリースだったので、リイシューの関係者には敬意を表したい。
さてでは『マーク・ファースト「六夢」+1』から紹介しよう。アルバムは頭と終わりが「天の川パート1」「天の川パート2」というマークらしい美しいメロディのインストではさまれているが、マーク自体は演奏に参加していないのだという。後者の方が個人的に好きだが、堀内さんの「皇室アルバム」でこの曲が使われていたのを偶然聴いて驚いたというコメントには思わず笑ってしまった。皇室ご一家の映像に突然、自分の曲が流れたとしたら...それは誰でも驚くはず。2曲目のシングルになった「蒼いハイウェイ」がまず聴きもの。アップテンポの爽やかなポップ・ナンバーで、アコースティック・ギターのストロークの心地よさと、マークのメロディ作りのセンスの良さが光る。続く「甘いお酒」はマークお得意のオールディーズ・タッチのナンバーで微笑ましい。そして「ディープ・ブルー」だ。マークらしい傑作で、耽美な静かな歌いだしが、サビのメロディで解放される実に鮮やかな曲だ。まさにGARO。その後の「風の館」もいい。冒頭にキャッチーなメロディのサビを持ってきた曲で、曲の展開にメリハリが効いていて印象に残る。そして「木の舟」だ。黒鍵を使って書いたという曲は、デビッド・クロスビーを彷彿とさせ、マークらしさを際立たせる。ハーモニーのからみなど、GAROファンなら納得の曲だ。なお、ボーナストラックの「蒼いハイウェイ(シングル・ヴァージョン)」はアルバムだと冒頭に被っている雷鳴が除かれたものだ。他ではアップテンポのポップ・ナンバー「夏色の空」のバック・コーラスがシンガース・スリーということも注目である。続いてセカンド・アルバム『マーク・ブライト+1』に移ろう。このアルバムも冒頭と最後から2曲前(ラストはシングル・ナンバーの「電車がつけば」で、営業上で入れたためこの曲がラストになっている)がインストの「フレデリシアの城」で挟まれ、マークの当時のアルバム作りのこだわりを感じされる。「銀河旅行」は個人的なお気に入り、マークらしい流麗なポップ・ナンバーで、サビの後に大好きなトーネイドーズ(日本ではベンチャーズ。マークもベンチャーズと言っている)の「Telstar」が出てくるのが嬉しい。オールディーズ路線の「エナメル靴のシンデレラ」を挟んで、マークらしさが全開の快作「眠い夜明け」が登場する。GAROのファーストの「水色の世界」のような曲の透明感、こういう曲はマークの独壇場である。日本人の琴線に触れるメロディとサウンドがある。「潮騒」はデビッド・クロスビー・タッチのナンバーだが、青木望のハープと弦が深みを出している。GAROは3人なのでCSN&Yではなく、CS&Nだと思っているのだが、マークはクロスビーの色を残したナッシュ、トミーはナッシュだが目指すはスティルスのハードさ、という印象だがどうだろうか。村井邦彦作の「僕は死なないだろう」は唯一のカバーで、GARO時代のリメイク。好きな曲だが、歌い方が気に入らなかったので再録音したのだという。「星くずの浜辺」はシングルを狙ったポップ路線の曲で自分の書くタイプの曲ではないと語っているが、個人的にはこういうアップのポップなチューンは大好き。こういう曲が書けるのがマークの強みだと思うのだが。オリエンタルな「ブラインドをあけると...」の後の「GOOD VIBRATION」はトミーが書いたようなナンバーで、サウンドもトミー風で興味深い。シングル曲の「電車がつけば」は後期GAROを思い起こさせるマイナー調のポップ・チューン。ナッシュの「The Prison Song」を狙ったというが、アレンジャーのセンスが違っていたようだ。ボーナス・トラックはそのシングルB面のみの「僕から」で終わる。この両アルバムはマークにとって満足できる仕上がりだったが、録音状態の良さでセカンドの方が納得していると語っている。しかしレコードはヒットに結びつかず、作曲家を目指した時もあったようだが、親しい人にデモを「昔より良くない」と言われ、あっさりと音楽業界から身を引いてしまうところも繊細なマークらしい。その頃メキメキ上達していたテニスの腕前を生かしてテニス・スクールを立ち上げ、新たな道で成功を収めていくが、その頃はギターに触ることもなかったそうだ。しかしマークは音楽の世界に戻ってきてくれた。ブライアン・ウィルソンというと大げさだが、その音楽から離れた年月はブライアンを彷彿とさせる。これからの活躍をますます期待したい。これで残るはトミーの77年のファースト・アルバム『Tommy』と、79年のセカンド・アルバム『シークレット・ゾーン』、そしてトミーのMama・Do・Do!!名義の80~81年のシングル2枚である。アルバムは東芝EMIとワーナーで、Mama・Do・Do!!もワーナー、音源ははっきりしている。是非、Clinckレコードにライセンス生産でもリイシューを実現ざせてもらいたい。(佐野邦彦)
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