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2013年9月1日日曜日

☆Beach Boys:『Made In California』(UMJ/TOCP-71591~96)

ビーチ・ボーイズ結成50周年を記念したレーベルを超えたオールタイム・ベスト&レアリティーズのCD6枚組ボックス・セット。同封の写真集も今まで見たことがないメンバーの写真が大半でそれも60年代が多いのも嬉しい限りだ。このWeb VANDAの読者の方なのでこのボックスで初めて登場の音源のみ、紹介させていただきたい。残念なことに今、長期入院中なので資料はこのボックスと2万数千曲入れたiPod Classicのみ。ブートで既に聴ける音源か...などの細かい調査はできないので勘弁いただきたい。初登場音源は70曲近くあり、リミックスのマーク・リネットらの力によって、初めて聴こえるコーラスやバッキングなど命を新たに与えられたこれらの曲はファンならたまらない贈り物。絶対に購入しなければいけないマスト・バイ・アイテムだ。 ではディスク1。「Home Recordings/Surfin' Rehearsal Highlights」に出てくる「Surfin'」の自宅デモは『Hawthorne CA』の冒頭の2曲を編集してつないだもの。「Surfin'」「Surfin' Safari」「409」は『Good Vibrations Box』に収録されていたものと同じ音源で、それぞれ歌の前に、やり直しのあとTake7の声入り、12秒長く完奏まで収録、6秒長く自然終止近くまで入っている、というお徳用。「Lonely Sea」のモノは冒頭にTake2の声が入り曲も11秒長くリフレインが2回多く聴ける。「Surfers Rule(with Session Intro)」は冒頭にベース、続いてピアノの練習が入っている。「Back Home」は後に『15 Big Ones』に収録されたブライアンの曲だがなんと1963年の録音が残されていたとは!ホーンが入り、『Little Deuce Coupe』あたりに入っていてもサウンド的には違和感がないが、後のヴァージョンと違って若々しく爽やか。「Little Saint Nick」のStereo Single Versionは『U.S. Singles Collection』で登場した、『Ultimate Christmas』のように鈴やチャイムがよく分離して聴こえるステレオではなく、ヴォーカルが全面に出て、鈴・チャイムが後ろで鳴っているモノのようなミックスになっている。長さもモノと同じで少し短い。「Fun Fun Fun」のNew Stereo Mixは従来のステレオより長く、最後のブライアンのファルセットが1回多く3回で、4回のモノに迫る仕上がり。「The Warmth Of The Sun」のNew Stereo Mixも最後のリフレインが3回まで聴けて、最長ヴァージョンとなっている。「I Get Around(with Session Intro)」は頭にサビのバッキングの練習が30秒程度入ってからスタートする。ディスク2は「Amusement Parks USA(Early Version)」からスタート、ヴォーカルがまだ薄く、サビにはハル・ブレインの呼び込みの声が入っているが掛け合いの女性の声はまだ入っていない。「Graduation DaySession Excerpt & Master Take 2012 Mix)」は頭に40秒の歌の練習が入る。『Today/Summer Days』の2イン1のボーナストラックのものより音がいい。「There's No Other(2012 Unplugged Mix)」は『Beach Boys Party』用の「ガヤ」を入れる前の録音。曲前の録音風景ではビートルズの「Ticket To Ride」の最後のリフレインを歌っているのが聴きとれる。「Our Prayer2012 Smile Sessions Stereo Mix」はタイトルのとおり。「Vegetabels」「Wind Chimes」も『Smile Sessions』収録のものからステレオ化されていた。「Country Air(2012 Stereo Mix)」は初登場で、『50 Big Ones』(注:『Made In California』には「Isn't It Time」のシングル・ヴァージョンも収録されたので、『50 Big Ones』でしか聴けない曲は無くなった)に登場した「Darlin'」「Wild Honey」のステレオ、『Hawthorne CA』で登場済みの「Let The Wind Blow」と合わせて『Wild Honey』のステレオ化4曲をまとめて入れてある。「Darlin'」のステレオほどの衝撃はない。チビチビやらずに早くにアルバムごとステレオ化して欲しい。ディスク3に入ると「Meant For You(Alternate Version)」はあの40秒しかない『Friends』のものより1分以上長い。というのも『Friends』の歌の後に別のメロディが出てきてまた元のメロディに戻っており、これがオリジナルだったようだ。でも明らかに後半は出来がイマイチで『Friends』の編集が正解。ヴァージョンも頭にキーボードが入っていないなど違うもの。「Sail Plain Song(2012 Stereo Mix)」は『Endless Harmony』収録のもののステレオ・リミックス。後半部分がまったく違っているので別テイクのように思える。「We're Together Again(2012 Stereo Mix)」も『Friends/20/20』のボーナストラックに入っていたテイクのステレオ・リミックス。大きく違う点はストリングスが入っていることで曲も長い。音は格段にいい。「Do It Again(2012 Stereo Mix)」は『Stack O Tracks』制作時に誤ってステレオマスターが消されずっとモノのままだったが新たに8トオラックのマスターが見つかったそうで目出度くステレオが登場した。ベース音になっている低いブラスがはっきりと聴こえ迫力が増している。「Susie Cincinnati(2012 Mix)」は『15 Big Ones』のテイクよりヴォーカルがオン気味で軽快な印象だ。シングル・ヴァージョンは冒頭、アルバム・ヴァージョンは1番と2番の間にエキゾーストノートが入るが、このミックスは両方とも入っている。なおこのディスク3には『Summer Love Songs』で素晴らしいミックスが登場したデニス・ウィルソン&ランボ名義唯一のシングル「Fallin' In Love」のカップリング「Sound Of Free」が初CD化されていて、どちらも収録されたのは特筆すべき朗報だ。このカップリング曲も力強く出来はいい。ディスク4には「(Wouldn't It Be Nice ToLive Again」は『Surf's Up』の頃に録音されたデニスの未発表曲で、メロディの美しさ、サウンドの雄大さで、「Make It Good」などよりこちらを収録すべきだった。「Rock And Roll Music(2012 Mix W/E Extra Verse)」は、カットされた最後のヴァースが入っているため40秒長い。そして『15 Big Ones』のテイクではよく聴こえないコーラス部分のファルセットがはっきりと聴こえる。「It's OK(Alternate Mix)」はイントロに初めて聴く前奏?があり、『15 Big Ones』の音のスカスカ感がない。「It's Over Now(Alternate Mix)」は『Good Vibrations Box』に収録されたテイクよりキーが高く、テンポもやや早く修正。ストリングスも表に出ている別テイク。2002年にブライアンの単独録音ながらビーチ・ボーイズ名義で発表されたブライアン作の「California Feelin'」は、『L.A.』時に録音されたビーチ・ボーイズ・ヴァージョンが初登場。カール、ブライアンが交互に歌い、サビをブルースがリード・ヴォーカルを取っていた。ハーモニーもいいし、なぜオクラ入りにしたのか理解に苦しむ。「Brian's Back(Alternate Mix)」は『Endless Harmony』収録のものより1分短く編集されている。それが功を奏してコンパクトでいい出来だ。みんながバカにするマイクの曲だが、個人的にはいい曲だと思う。そして「It's A Beautiful Day(Single Edit)(2012 Mix)」。アルバムとしては『Ten Years Of Harmony』にだけ収録された曲だが、個人的には隠れた傑作だと思う。"It's A Beautiful Day"のメロディの解放感がたまらないアルとマイクの作品で、このミックスではその聴きもののコーラスのバッキングに鉄琴のような音が聴こえていて爽やかさをさらに増しグッド!「Goin' To The Beach」は『Keepin' The Summer Alive』の時に録音されたマイク作のロックナンバーだが、たいした曲ではない。ディスク5に入るとまずバリー=グリーンウィッチ作でフィル・スペクターがプロデュースした2曲のカバーが登場する。まずはロネッツの「Why Don't They Let Us Fall In Love」で、ブライアンとマイクが歌い1980年に録音している。もう1曲は同時期の録音でクリスタルズの「Da Doo Ron Ron」をカールが歌う。ただのオールディーズもののカバーというレベル。「California Dreamin'」は『The Warmth Of The Sun』で登場した風の音から始まり雨音に被ってイントロとなり雷鳴が大きいヴァージョンだ。続いて1995年にブライアンはアンディ・パレイと共作で製作していた"アンディ・パレイ・セッション"でビーチ・ボーイズが参加した2曲が収録された。まずブライアンのソロ・アルバムにも収録された「Soul Searchin'」はアルバムと同じくカールがリード・ヴォーカルを取っていて、堂々たる素晴らしい仕上がり。「You're Still A Mystery」はブライアンのリードにカール、マイク、アルがハーモニーを付けこれも素晴らしいバラードだったが未発表で終わってしまっていた。その後は"ビーチ・ボーイズ未発表ライブ集"だ。まずは1965年シカゴでのアルが歌う「Runaway」。この曲はアルのお気に入りらしく1986年の『25 Years Of Good Vibrations』にその当時のライブが収録されていたほど。「You're So Good To Me」は1966年のパリのライブで、アルのリードが力強い。「The Letter」は1967年のハワイのリハーサルだが、このハワイの録音は総じてサウンドがスカスカで出来がよくない。それよりも1968年のシカゴでの「Friends」と「Little Bird」だ。『Live In London』の頃の録音なのでホーンも入りサウンドは充実。特に「Little Bird」はファンなら涙もの。「All I Want To Do」は1968年のロンドンのライブで、『Rarities』収録のものと違って完奏していた。ここからはブロンディ・チャンプリン&リッキー・ファターが入り、ビーチ・ボーイズが最も「ロック」していた時のライブが並ぶ。1972年ニュージャージーの「Help Me Rhonda」「Wild Honey」、ニューヨークの「Only With You」、1973年シカゴの「It's About Time」がそれだ。特にブロンディ・チャプリンが歌う「Wild Honey」は最高にカッコいいロックンロールで、ゴリゴリのロック野郎でも気にいるだろう。「It's About Time」もギターがカッコよく見事なロックンロール。そして1975年メリーランドの「I Can Hear Music」は華麗なハーモニーと厚いサウンドが組み合わさりいい出来だ。1993年ニューヨークの「Vegetables」「Wonderful」はブライアンのいない時代なのであまり期待していなかったが、ハーモニーもサウンドもよく驚かされた。やはりカールがいると大きい。そして1995年ルイビルの「Sail On Sailor」でライブは終わりとなっていく。ディスク6はア・カペラで「Slip On Through」「This Whole World」「Our Sweet Love」とまず『Sunflower』をこよなく愛する我々ビーチ・ボーイズ・ファンの心をつかむ。「Don't Worry Baby(Stereo Sessions Outtake/Alternate Lead Vocal)」は本番前のテイクだが、歌が長く演奏が終わるまで入っているので、USシングル盤でしか聴けなかったフェイドアウト寸前の上昇していくパートをバッチリ聴くことをできる。「Pom Pom Play Girl(Vocal Session Highlight)」は40秒ちょっとでいったん歌を止め、そこから本番をスタート、完奏まで聴くことができる。「Guess I'm Dumb(Instrumental Track With Background Vocals)」はグレン・キャンベルの歌のないインストにメンバーのコーラスが付いたトラックでこれも興奮してしまう。「Sherry She Needs Me(1965 Track With 1976 Vocal)」はブライアンのソロでもリレコされているのでお馴染みのものだが、ブライアンの絶頂期の曲なので誰もがこの当時のヴォーカルで聴きたかったと思うだろう。「Mona Kana(Instrumental Track)」は『20/20』時に録音されたデニス作のインストで、ホーンなどの使い方が洒落ていて一瞬ブライアンが書いたのではと思わせる佳曲。「Where Is She」は『Sunflower』時にブライアンが書いた曲で、ワルツのこじゃれた曲だが、このレベルならやはりボツ曲。デニスの「Be With Me」は『20/20』時のピアノをバッキングにしたデモ。「I Believe In Miracles」は『Smiley Smile』時に録音されたブライアン作のア・カペラの断片でまさに『Smile』の延長の雰囲気。「Why(Instrumental)」はブライアン作の実に爽やかなリゾート感溢れるインストで、『M.I.U. Album』時の録音。やはりこのアルバムの頃はいい曲が満載だ。「Barnyard Blues」は1974年に録音されたデニス作の曲だが、デニスにしては明るいサウンドだ。ライチャス・ブラザースが歌いスペクターがプロデュースした「You've Lost That Lovin' Feeling」は『Love You』の頃の録音で、前作『15 Big Ones』で同じコンビの大ヒット「Just Once In My Life」をカバーしたブライアン本人が歌いたかったのだろう。「Good Vibrations」(Stereo Track Sections)は『Smile Sessions』のSession Highlightsの編集版。それなりのカバー。ディスク1に登場した「Back Home1970 Version)」だが今度は『Sunflower』時の再録音で、ハーモニカをフィーチャーしたカントリーにアレンジされ、この手が得意なアルが軽快に歌っている。前述の「California Feelin'Original Demo)」は1974年のブライアンが歌うデモも収録された。内容はいかにもデモでマニア向け。「California Girls"Lei'd In Hawaii" Studio Version)」「Help Me Rhonda"Lei'd In Hawaii" Studio Version)」は、音がスカスカの"Lei'd In Hawaii"ものなので内容はつまらない。ピアノがバッキングの「Surf's Up(1967 Version/2012 Mix)」は個人的には『Smile Sessions』収録のものと大きな差は感じられなかったが...My Love Lives On」は1974年に録音されたデニス作のピアノのバッキングのきれいなチューン。「WendyBBC/Live In The Studio 1964)」「When I Grow UpBBC/Live In The Studio 1964)」「HushabyeBBC/Live In The Studio 1964)」はスタジオ・ミュージシャンではないバンドサウンドのリアルなスタジオ・ライブが楽しめ個人的には大のお気に入り。ハーモニー、演奏ともにこの当時のバンドとして十分な出来で、ビーチ・ボーイズがスタジオ・ワークだけのバンドでないことが十分にわかる。「Had To Phone Ya」「Don't Go Near The Water」「Transcendental Meditation」はただのオケのみ。なお「Carl WilsonCoda(2013 Edit)」は曲ではない。(佐野邦彦)
カリフォルニアの夢 (完全生産限定盤)(6CD)


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