ポール、フー、ストーンズがこの手で発売しているので、今後のリリースが心配になる。個人的な話で恐縮だが、狭い自分の部屋は既に限界状態で、横に並べられないのでどんどん隙間を見つけて積み重ねるだけ、先日の東日本大震災では見事に倒壊し片づけるのも四苦八苦、身の危険を感じるばかりだ。置き場所がない...。
それにしても『Ram』はいいアルバムだ。大傑作と胸をはるアルバムではないが、少し詰めが甘いがいい曲が多く入っていて、ソロになってからのポールの職人技のような曲がないので、逆に親しめる。1971年発売当時はともかく音楽評論家にバカにされていたが、今は人気盤であり、時代は変わるものだ。『Band On The Run』が出るまでの、ポール叩きを是としていた音楽評論家達...、だから音楽評論などクズだと思うようになった。特に「ロック」にこだわる連中に顕著で、反商業主義、ルーツ志向こそ正しく、それ以外は邪とするというその頑迷な姿勢は実に不快。かつての社会主義と一緒で、革新、進歩などという良さそうな言葉に踊らされ、振り返ってみたら、こいつらは歴史と共に消え去る運命なのである。発表から40年経って、曲の良さでアルバムを判断する、当たり前の姿に戻ったといえよう。『Ram』に関してはもう何も語る必要がない。リマスターは音が非常によく、モノ・アルバムもプラスされた。さらにスピン・オフものである『Thrillington』まで入ってしまったのはご愛嬌。肝心なのは『Bonus Audio』のディスクで、素晴らしく音がクリアーな「Another Day」「Oh Woman Oh Why」「Little Woman Love」からスタート、別テイクを聴いているように新鮮だった。あとは『Ram』時に未発表だったデモ集で、軽快なロック・ナンバー「A Love For You」はポップな小品、「Hey Diddle」は『Wingspan』のナレーションが被るテイクではなく、ポールのアコースティック・ギターを中心にポールとリンダでハモるフォーク・タッチの小品。「Great Cock And Seagull Race」はジャム・セッションのようなインスト。「Rode All Night」は8分42秒にも及ぶ即興のロック・ナンバーで、アルバムにそのまま入れるトラックでないが、ノリノリで気持ちいい。後にロジャー・ダルトリーに「Giddy」として提供されている。「Sunshine Sometime」はインストだが、ポールらしいセンスの良さが随所に出ていて、実に爽やかだ。このディスクは「デラックス・エディション」にも入っているので、一般のファンはそれで十分だろう。我々のようなコレクターはDVD『Bonus Film』が入っていたことが救いで、『Ram』の時のポールの追想から始まり、1971年の仲睦まじいポールとリンダのプライベート・フィルムをバックにした「Heart Of The Country」と「3 Legs」のミュージック・クリップへ移る。ここからがハイライト、1971年、スコットランドの野外でポールのアコースティック・ギターに合わせてポールとリンダがハモりながら歌う「Hey Diddle」はまさに即興、貴重なフィルムだ。周りでは二人の子供も映っていた。そして1972年のオランダでのウィングスのツアーの模様を収めた「Eat At Home」も素晴らしく、前半はギターの中心のジャム・セッション風でスタートし、お馴染みの「Eat At Home」へメドレー風につながる。シンプルなバンド・サウンドで、ギター中心のバッキングは実にカッコよく、個人的には最高に気に入ったテイク。ツアーバスにたくさん同行する女性たちは、メンバーの彼女達なのだろうか。なんだか楽しそうで、これから始まるワクワク感が伝わってくる。(佐野)
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