70年代のニール・セダカのソロ・ワークスはかつてVANDA22号で大特集したようにまさに神がかり、どのアルバムも素晴らしく、オールディーズではない70年代の芳醇なメロディとサウンドに満ちていて、リスナーを必ず満足させる高いクオリティを持っていた。この時代のニールは前半、イギリスでしかスマッシュ・ヒットを出せなかったが、そのソングライティングの素晴らしさに感銘を受けた腕利きのミュージシャンが次々とバッキングを買って出た。このBGOレーベルでは1972年リリースの新生ニール・セダカの第一弾『Emergence』と翌年発売の第2弾の『Solitaire』をカップリングでリリースし、我々70年代ニール・セダカ・フリークを狂喜させてくれたものだが、本CDは続く1973年の『The Tra-La Days Are Over』と、1975年の『Overnight Success』のこれまた未CD化のアルバムのカップリングだ。
『The Tra-la Days Are Over』のバッキングは『Solitaire』から続く10CC。ファンキーな「Little Brother」のバンドサウンドが心地よいが、やはりニールはピアニストを目指ししたこともある卓抜したピアノをバックにした「The Other Side Of Me」や「Alone In New York City」「For Peace And Love」などのナンバーが光る。アルバム中のポップな「Love Will Keep Us Together」は後にキャプテン&テニールが歌って4週連続全米1位になった快作だ。捨て曲が一曲もない充実したアルバムでイギルスでは13位にランクされたが、なんとアメリカでは発売されずに終わる。その時、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのエルトン・ジョンが、ニールのアメリカでのプロデュースを名乗り出て、自らのレーベルRocketへ招いた。するとシングル「The Laughter In Rain」をアメリカで売り出すとはあれよあれよとチャートを駆け上がりついに全米1位を獲得する。以降はアメリカでの成功が続くのだが、シングルと合わせて作っていたアルバム『Laughter In The Rain』も名曲揃いなのにこれもアメリカで発売されていない。そのかわりRocketはアメリカ未発売のアルバム3枚から選んだベスト盤を発売して、こちらはヒットを記録している。そして本CDのカップリングの『Overnight Success』は1975年発売のその次のアルバムである。『Laughter In The Rain』のバッキングはザ・セクション、本『Overnight Success』のバッキングにはリーランド・スカラーに加えスティーブ・クロッパーやデビッド・フォスターらの実力者を並べており、これも凄いサポーターだ。特に10CCとザ・セクションのバッキングはまだニールが再ブレイクを果たす前のバッキングであり、いかにニールがプロ中のプロに尊敬を受けていたか分かる。『Overnight Success』ではエルトン・ジョンとデュオで吹き込み全米1位を再び獲得した「Bad Blood」がヘヴィなロックナンバー。持ち前の美しいバラードは「The Hungry Years」や「New York City Blues」などがあるがAORへスタンスを移したようなサウンドの曲が多くなっていた。このアルバム、アメリカでは『The Hungry Years』のタイトルで発売されたが、イギリス盤の『Overnight Success』とは2曲選曲が違う。アメリカ編集のものはVarese SarabandeからCD化されているのでそちらを聴いてもらいたい。このリリースの順をみると次は間違いなく未CD化のままの『Laughter In The Rain』と、順に行けば『Steppin' Out』か。さらにその後には未CD化のまま残っているジョージ・マーティンがプロデュースした『A Song』などが残っている。BGOのニールのCD化には4年間のブランクがあり、じっくりと腰を据えて次のCD化を待つとしよう。(佐野)
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