フーの代表作『Quadrophenia』がスーパー・デラックス・エディションでリリースされた。アルバムは96年リミックスのリマスター、目玉のボーナス・ディスクはアルバム収録曲のデモと未発表デモによるピート・タウンゼンドによるもうひとつの『Quadrophenia』。「5:15/Water」のアナログ・シングル、5.1サラウンド・ミックス8曲が収められた。
このLPボックス・サイズのデラックス版はフーとローリング・ストーンズ、ポール・マッカートニーで進行していて、未発表曲や貴重な映像のDVDが見られてファンとしては嬉しい限りだが、この仕様が続くのはお金とスペースの問題で頭が痛いところ。CDサイズではキンクスのデラックス・エディションも進んでいる。インターネットからのダウンロードでは持った気がしない私たちのようなオヤジ世代を狙った新手の商売とも言えよう。まだまだ無限に続きそうな予感がする。値段は日本盤を買うと1万円を超えているが、そのくらいは購入できる50代付近をターゲットにしているようだ。給料は上がるどころか毎年一律下げられるので、休日は出かけず家に籠って金を使わないようにして、どこが一番安いか、日米英独仏のamazonとHMVなどで比較検討を続ける。こうやってこの手のリイシューに備えるしかないのだ。ケッ。
少しグチが出たが、本CDボックスのピートのデモ集は本当に素晴らしい。『Scoop』のシリーズでみなさんご存じだろうが、ピートのデモは完成度が高く、アレンジもほぼ出来上がっている場合も多い。デモは25曲で、実際のアルバムは17曲なので8曲も多い。ピートはコンセプトを大事にするし、ロックに真摯に向き合っているので、我々がいい曲だと思ってもコンセプトにそぐわないと思うとオクラ入りにしてしまう。アルバムのデモはフーが演奏しているトラックも多く、『Another Quadrophenia』と言ってもいいだろう。初登場の曲では「You Came Back」がとてもきれいなメロディとサウンドを持つ洒落た曲なのに未発表だったのがもったいない。「Get Inside」もポップで、ピートらしいナンバーだが、アルバムのコンセプトから外れ、ボツになった。「Anymore」はピアノの弾き語りのシンプルなデモで、フーで演奏すれば大作になっただろう。「Is It Me?」は一部がアルバムの中でテーマのように使われていた。ピアノによるインスト「Fill No.2」と、シンセサイザーを駆使したインスト「Wizardry」はピートがこのアルバムを頭の中で映像化していてそのシーンに当てはめたサントラのようなナンバーだ。その他では、サントラの『Quadrophenia』や『Odds And Sods』にフーのヴァージョンが収録された「Fill No.1-Get Out And Stay Out」「Quadrophenic-Four Faces」「Joker James」「We Close Tonight」のデモも収録されていて、どの曲も必聴。本編はオリジナル・ミックスがロジャー・ダルトリーのヴォーカルのミックスが小さすぎたので、96年のリミックス版をマスターとして使用したリマスターである。その他、インターネットにアクセスするともう1曲デモが入手できる。(佐野)
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