ソフトロックの名曲「Don't You Know」で知られるバタースコッチの唯一のアルバムがCD化された。VANDAと浅田洋さんだけでプッシュしてきたこのグループ、クリス・アーノルド、デビッド・マーティン、ゲオフ・モロウの作曲家トリオが作ったグループで、全ての曲がこの3人の作曲・プロデュース・歌であり、自作自演のグループだった。
1970年にリリースされたアルバムに、RCA、Bell、JAM、AMMOといったレーベルで1970年から1974年までにリリースされたシングル曲7曲を加えた仕様になっている。
ただバタースコッチ名義の最初「Surprise,Surprise」のシングルB面の「In The World Of Loving You」、「Don't Make Me Laugh」のB面「One Day I'll Write A Book」、「Sunday Won't Be Sunday Anymore」のB面「This Way That Way」が入らず、これらのシングルと並行してリリースされたArnold,Martin&Morrow名義のシングル4枚も入らなかった。最も問題なのは「Don't You Know」で、このアルバムヴァージョンはフェード・イン、フェード・アウトしてしまうため完全版ではない。20秒以上短く編集されている。肝心な看板曲の完全版を入れないのは困ったものだ。充実したライナーや、日本盤シングル3枚のジャケットを使うなどかなりマニアックなのに、音のセレクトがあまりに雑だったのは残念。「In The World Of Loving You」もシングルA面で十分いける高揚感に満ちた快作だったのだがいい曲が漏れてしまった。
ただ、このアルバムが、というよりこのグループのCDが出ただけで、快挙といえる。
キャッチーなメロディと弾むリズム、軽快なハーモニーとソフトロックの理想が詰まった「Don't You Know」がスマッシュヒットしただけあり圧倒的に優れているが、シングルになった「Office Girl」「Things I Do For You」「The Closer To You」「All On A Summers Day」「Sunday Won't Be Sunday Any More」もそれぞれいいメロディと的確なアレンジが施されており、アルバム曲でもバブルガム調の「Constant Reminder」や牧歌的な「Cow」がいい出来だった。ただヴォーカルは弱い。線が細いのだ。メロディもトニー・マコウレイやロジャー・グリーナウェイのような一回聴いただけですぐそのフックを覚えさせてしまうような、圧倒的なポップさに乏しい。そこが知名度、実績の差になってくのだが、この3人、後にバニー・マニロウに書いた「Can't Smile Without You」が全米3位になり、大きな実績を残している。(佐野)
2011年10月29日土曜日
2011年10月16日日曜日
☆Kinks:『Kinks Kollected』(Universal Music/278040-4)DVD
キンクスの60年代の映像はLD時代には単独で『The Kinks 1964-1984』『Shindig!The Kinks Early Years』が出ていたが、DVD時代になってからは単独では『Beat Beat Beat』以外まともなものは出ていないなと思っていたが、ようやくこのDVDがリリースされた。
全20曲、1964年から1984年のライブとプロモが集められた。年代は同じだが、上記のLDとは選曲からまったく違うので別物である。本DVDはまず『Beat Club』の映像は「Muswell Hillbilly」以外は全て収められ(『Beat Club』についてはひとつ前のレビューを参照してほしい)、「A Well Respected Man」「Till The End Of The Day」は『Beat Beat Beat』からの映像である。「Sunny Afternoon」は雪の中で歌うオランダのテレビ用のプロモ。「Wonderboy」はLDとは違う『Top Of The Pops』での映像だ。素晴らしいのはカラーの「Days」。どこかのTVでの出演シーンで、カラフルな60年代ファッションもいいし名演。「Autumn Almanac」も『Top Of The Pops』より。レイ・デービスの胸の大きな花がなかなかオシャレだ。「Lola」も今回は『One For The Road』からの映像でお茶の濁すのではなくこれまた『Top Of The Pops』でおまけにカラー。これもいい映像だ。最も驚いたは「Sitting In The Midday Sun」のプロモ。演奏シーンながら大半がレイ・デービスのアップで映像的にはイマイチだが、レイの人生哲学が凝縮したようなこの個人的に大好きな曲の映像が見られたのは本当によかった。他は「Apeman」や「Come Dancing」などの楽しいプロモーション・フィルムが収められていた。(佐野)
全20曲、1964年から1984年のライブとプロモが集められた。年代は同じだが、上記のLDとは選曲からまったく違うので別物である。本DVDはまず『Beat Club』の映像は「Muswell Hillbilly」以外は全て収められ(『Beat Club』についてはひとつ前のレビューを参照してほしい)、「A Well Respected Man」「Till The End Of The Day」は『Beat Beat Beat』からの映像である。「Sunny Afternoon」は雪の中で歌うオランダのテレビ用のプロモ。「Wonderboy」はLDとは違う『Top Of The Pops』での映像だ。素晴らしいのはカラーの「Days」。どこかのTVでの出演シーンで、カラフルな60年代ファッションもいいし名演。「Autumn Almanac」も『Top Of The Pops』より。レイ・デービスの胸の大きな花がなかなかオシャレだ。「Lola」も今回は『One For The Road』からの映像でお茶の濁すのではなくこれまた『Top Of The Pops』でおまけにカラー。これもいい映像だ。最も驚いたは「Sitting In The Midday Sun」のプロモ。演奏シーンながら大半がレイ・デービスのアップで映像的にはイマイチだが、レイの人生哲学が凝縮したようなこの個人的に大好きな曲の映像が見られたのは本当によかった。他は「Apeman」や「Come Dancing」などの楽しいプロモーション・フィルムが収められていた。(佐野)
☆Hollies:『Look Through Any Window 1963-1975』(Eagle Vision/EV3-3769)DVD
ホリーズのオフィシャルで単独のDVDはやはり『Beat Beat Beat』くらいで、前述の『Beat Club』にまとめて収められていたが、これだけのキャリアがあるグループにしては少なすぎるリリースだった。しかしこのDVDで一気に解消だ。
22曲が収録され嬉しいことに18曲がグラハム・ナッシュ時代。ナッシュにアラン・クラーク、トニー・ヒックス、ボビー・エリオットの4人が当時を振り返り、ホリーズ・ヒストリーになっているので充実している。それにしても月日とは恐ろしいもので、ナッシュは当然すぐに分かるが、他の3人は最初、誰だか分からなかった。クラークとヒックスはもう老人で、時にあんなにかわいい顔をしていたヒックスの変貌ぶりにはショックを受けた。
インタビューは字幕を出せるのでだいたい内容が分かる。では内容へ。まず冒頭の「Baby That's All」と「Here I Go Again」が素晴らしいカラーの画質で驚かされる。1964年の『Swings Again』のフィルムでこの時代のカラーは珍しい。「Rockin' Robin」と「Just One Look」はNMEのPole Winnerコンサートでのリアル・ライブ。「I'm Alive」はTVショーでのライブ。(当時は口パクの方が普通なので特に口パクとは書かない)そして内容が素晴らしいのは『Beat Club』での「Look Through Any Window」「I Can't Let Go」と、『Beat Beat Beat』での「Stop Stop Stop」「Bus Stop」、そしてユーゴスラビアで行われた『Split Festival』での「Do The Best You Can」「Jennifer Eccles」「Carrie Anne」で、全てリアル・ライブだ。このうち1967年に収録された『Beat Club』と『Beat Beat Beat』は既にDVD化されたものの抜粋である。しかし1968年の『Split Festival』は初登場。1967年の演奏も含めホリーズは3声のハーモニーが完璧だし、演奏もしっかりしているし、そしてビートがあって曲がポップと本当にいいバンドだ。私はヒックスのギター・プレイが好きで、ナッシュは実質的に演奏面では貢献していないので、彼のギターがホリーズのサウンドのカラーを作っていると言っていい。小気味いいリフを弾くいいギタリストだ。エリオットもいいドラマーだし、クラークのヴォーカル、ハーモニーの中核のナッシュ、サウンドの核となるヒックスとエリオット、こんな実力者が揃ったいいバンドなのに日本ではあまりに過小評価され過ぎている。初めて見る『Split Festival』のみ記述しておくと、「Do The Best You Can」は途中の3人のアカペラが実に美しい。ヒックスとナッシュがバンジョーを弾いているのも面白い。「Jennifer Eccles」ではナッシュがあの印象的な口笛を、Jennifer Ecclesの歌詞が出てくる後に吹くように観客に練習させていて楽しい。そして「Carrie Anne」は珍しくトニー・ヒックスが一部リード・ヴォーカルを取るのだが、その時にナッシュとクラークが拍手するのがとても微笑ましいかった。また間奏のスティール・ドラムのみテープなのだが、メンバーがいったい誰が引いているんだ?みたいな顔をしているのも笑ってしまう。ナッシュは脱退する前になると自分の書いた曲(名義はクラーク=ナッシュ=ヒックス)では自分でリード・ヴォーカルを取るようになるが、その「Dear Eloise」と「Wings」のプロモはスウェーデンの『Popside』で披露された。その他では1963年と収録が一番古い「Little Lover」は、カラーである上に花屋での演奏、お客の若い女性がダンサーになって中心で踊り、面白いフィルムだった。ナッシュはいないがトニー・マコウレイの書いた「Sorry Suzanne」は『This Is Tom Jones』でのフィルムで、加入したばかりのテリー・シルベスターの演奏シーンが見られる。そしていよいよこのDVDの目玉「King Midas In Reverse」について書こう。映像は歌とは関係のないシーンなのだが、全編1968年のホリーズ日本公演でのカラーフィルムなのだ!東京と京都で撮影していて、クラークの木刀をナッシュが花で止めたり、ナッシュが甘栗を買ったり、ヒックスが三味線を弾く真似をしたりと日本を満喫しているようだ。どこかの公園の木に、そこには日本人がいくつもあいあい傘を書いているのだが、そこにナッシュがマジックでまずハートマークを書いてその中に漢字で平和、英語でPEACEと書いたのは、いかにもナッシュらしくて嬉しくなった。ナッシュは平和主義者で知られているが、今から20年くらい前にナッシュがソロで来日した時、渋谷クアトロでのライブを見に行った。人柄の良さが溢れるアトホームなライブだったのだが、「Military Madness」の歌詞を「Nuclear Madness」と歌ってやんやの喝采を浴びたのを思い出す。nuclear madness、kill the countryと歌っていたのだから、今だとさらに重い。そして一瞬、昔の渋谷の道玄坂商店街を歩くシーンがあり、懐かしくて目が釘付けになった。古本屋が映っていたが、鮮明な記憶がある。中学の友人が道玄坂に住んでいてしょっちゅう遊びに行っていた。そして坂の上の方には、当時、日本ではほとんど売っていなかった輸入盤を扱っていたヤマハがあり、行けば必ずヤマハに行き、輸入盤をチェックしたものだ。しかし1970年頃、日本盤LPが2000円の時代に輸入盤は3200円くらいしていたのだからまさに高値の花。でもビーチ・ボーイズの60年代のアルバムなんて手に入らないから、輸入盤を扱う渋谷のヤマハと新宿レコード、ディスクユニオンを歩き回っていたものだ。話は横道にそれたが、とにかくこのDVDほど充実した内容のものは珍しい。絶対購入すべきDVDだ。なお、紹介しているディスク番号のものはリージョン1。ただし安い。お金を出してもいいならヨーロッパで買えばリージョン2でPAL。PALは普通のDVDプレイヤーなら再生する。(DVDレコーダーはダメだが。)(佐野)
22曲が収録され嬉しいことに18曲がグラハム・ナッシュ時代。ナッシュにアラン・クラーク、トニー・ヒックス、ボビー・エリオットの4人が当時を振り返り、ホリーズ・ヒストリーになっているので充実している。それにしても月日とは恐ろしいもので、ナッシュは当然すぐに分かるが、他の3人は最初、誰だか分からなかった。クラークとヒックスはもう老人で、時にあんなにかわいい顔をしていたヒックスの変貌ぶりにはショックを受けた。
インタビューは字幕を出せるのでだいたい内容が分かる。では内容へ。まず冒頭の「Baby That's All」と「Here I Go Again」が素晴らしいカラーの画質で驚かされる。1964年の『Swings Again』のフィルムでこの時代のカラーは珍しい。「Rockin' Robin」と「Just One Look」はNMEのPole Winnerコンサートでのリアル・ライブ。「I'm Alive」はTVショーでのライブ。(当時は口パクの方が普通なので特に口パクとは書かない)そして内容が素晴らしいのは『Beat Club』での「Look Through Any Window」「I Can't Let Go」と、『Beat Beat Beat』での「Stop Stop Stop」「Bus Stop」、そしてユーゴスラビアで行われた『Split Festival』での「Do The Best You Can」「Jennifer Eccles」「Carrie Anne」で、全てリアル・ライブだ。このうち1967年に収録された『Beat Club』と『Beat Beat Beat』は既にDVD化されたものの抜粋である。しかし1968年の『Split Festival』は初登場。1967年の演奏も含めホリーズは3声のハーモニーが完璧だし、演奏もしっかりしているし、そしてビートがあって曲がポップと本当にいいバンドだ。私はヒックスのギター・プレイが好きで、ナッシュは実質的に演奏面では貢献していないので、彼のギターがホリーズのサウンドのカラーを作っていると言っていい。小気味いいリフを弾くいいギタリストだ。エリオットもいいドラマーだし、クラークのヴォーカル、ハーモニーの中核のナッシュ、サウンドの核となるヒックスとエリオット、こんな実力者が揃ったいいバンドなのに日本ではあまりに過小評価され過ぎている。初めて見る『Split Festival』のみ記述しておくと、「Do The Best You Can」は途中の3人のアカペラが実に美しい。ヒックスとナッシュがバンジョーを弾いているのも面白い。「Jennifer Eccles」ではナッシュがあの印象的な口笛を、Jennifer Ecclesの歌詞が出てくる後に吹くように観客に練習させていて楽しい。そして「Carrie Anne」は珍しくトニー・ヒックスが一部リード・ヴォーカルを取るのだが、その時にナッシュとクラークが拍手するのがとても微笑ましいかった。また間奏のスティール・ドラムのみテープなのだが、メンバーがいったい誰が引いているんだ?みたいな顔をしているのも笑ってしまう。ナッシュは脱退する前になると自分の書いた曲(名義はクラーク=ナッシュ=ヒックス)では自分でリード・ヴォーカルを取るようになるが、その「Dear Eloise」と「Wings」のプロモはスウェーデンの『Popside』で披露された。その他では1963年と収録が一番古い「Little Lover」は、カラーである上に花屋での演奏、お客の若い女性がダンサーになって中心で踊り、面白いフィルムだった。ナッシュはいないがトニー・マコウレイの書いた「Sorry Suzanne」は『This Is Tom Jones』でのフィルムで、加入したばかりのテリー・シルベスターの演奏シーンが見られる。そしていよいよこのDVDの目玉「King Midas In Reverse」について書こう。映像は歌とは関係のないシーンなのだが、全編1968年のホリーズ日本公演でのカラーフィルムなのだ!東京と京都で撮影していて、クラークの木刀をナッシュが花で止めたり、ナッシュが甘栗を買ったり、ヒックスが三味線を弾く真似をしたりと日本を満喫しているようだ。どこかの公園の木に、そこには日本人がいくつもあいあい傘を書いているのだが、そこにナッシュがマジックでまずハートマークを書いてその中に漢字で平和、英語でPEACEと書いたのは、いかにもナッシュらしくて嬉しくなった。ナッシュは平和主義者で知られているが、今から20年くらい前にナッシュがソロで来日した時、渋谷クアトロでのライブを見に行った。人柄の良さが溢れるアトホームなライブだったのだが、「Military Madness」の歌詞を「Nuclear Madness」と歌ってやんやの喝采を浴びたのを思い出す。nuclear madness、kill the countryと歌っていたのだから、今だとさらに重い。そして一瞬、昔の渋谷の道玄坂商店街を歩くシーンがあり、懐かしくて目が釘付けになった。古本屋が映っていたが、鮮明な記憶がある。中学の友人が道玄坂に住んでいてしょっちゅう遊びに行っていた。そして坂の上の方には、当時、日本ではほとんど売っていなかった輸入盤を扱っていたヤマハがあり、行けば必ずヤマハに行き、輸入盤をチェックしたものだ。しかし1970年頃、日本盤LPが2000円の時代に輸入盤は3200円くらいしていたのだからまさに高値の花。でもビーチ・ボーイズの60年代のアルバムなんて手に入らないから、輸入盤を扱う渋谷のヤマハと新宿レコード、ディスクユニオンを歩き回っていたものだ。話は横道にそれたが、とにかくこのDVDほど充実した内容のものは珍しい。絶対購入すべきDVDだ。なお、紹介しているディスク番号のものはリージョン1。ただし安い。お金を出してもいいならヨーロッパで買えばリージョン2でPAL。PALは普通のDVDプレイヤーなら再生する。(DVDレコーダーはダメだが。)(佐野)
2011年10月11日火曜日
☆Various:『The Story Of Beat-Club Volume1 1965-1968』『Volume2 1968-1970』『Volume3 1970-1972』(ARD Video)DVD
1965年9月より1972年12月まで、7年3カ月にわたって放送されたドイツのラジオブレーメンの音楽番組『Beat
Club』がコンプリートな形でボックスセット3組、DVD24枚のボリュームでリリースされた。
80回分の放送が収められ(収録日順のナンバーでは83回になっているが再放送で構成された3回分は外されている)、その貴重な映像の数々にはただただ、目まいがしてしまうほど。これだけの豪華ラインナップを揃えたシリーズは、『Ed Sullivan Show』と『Hullabaloo』以来だろう。いやボリュームでは完全に凌駕しているので、史上最強のボックスセットがリリースされたのである。収録時間は64時間分もあり、この原稿を書いた現在でもまだちゃんと見られていない。日本盤はボックスセット3つで27%近く割引をしているアマゾンでさえ44284円とおいそれと手が出ない値段だ。ただご心配なく。今は超円高なのだ。この3つをドイツのアマゾンで注文したが送料込みで15355円(9月29日現在。決済は円)、そして注文から丁度一週間で届いた。安くて早くて申し分ない。そしてリージョン2、PALなのでDVDプレイヤーなら普通に再生する。レコーダーしかない...という方はパイオニアのDVDプレイヤーDV2020を日本のアマゾンで3623円で買えば、この2つの組み合わせでも19000円もしない。(ちょっとだけ高い5002円の上位機種を買えばリージョンフリーにも変更できる。こちらはパイオニアDV220。)心配なのはドイツ語のサイトが分からないという事だが、実はアマゾンは日本と米英仏独は全て同じレイアウトなのだ!だから日本のアマゾンを立ち上げておいて、同じ場所を入力していけば簡単に登録してクレジットカードで購入できる。高い日本盤を買う必要はまったくないので、是非ドイツ盤で購入してほしい。(ちなみに米英仏では扱っていなかったり高かったりするのでドイツがベスト)
この『Beat Club』がソフト化されたのは1988年、今から23年も前の事だ。フォーマットはレーザーディスク。何しろその頃は60年代、70年代のアーティストの動く映像など夢のまた夢の時代だったときに、パイオニアLDCからこのシリーズが出た時には本当に狂喜乱舞したものだ。今から思えば一部なのだが、おいしい部分はしっかり入っていた。日本のみのリリースで、この画期的な企画を実現させたのはVANDAでもおなじみ、当時パイオニアLDCにいて、現在はワーナーのプロデューサーの宮治淳一さんだった。さすが!でもその宮治さんも、その全部がリリースされるなんて夢にも思わなかっただろう。
前置きが長くなったところでさっそく本題に入ろう。Web VANDAなので、VANDAで特集したアーティストを中心に紹介していきたい。
ではフーから紹介しよう。ボックス1に入ったのはリアル・ライブの超カッコいい「Happy Jack」「So Sad About Us」「My Generation」。同じディスクに口パクの「I'm A Boy」「Heat Wave」「Happy Jack」も入っていた。『Who's Better Who's Best』などでもお馴染みの「Substitute」「Pictures Of Lily」のプロモもこのボックス1で、口パクの「Happy Jack」だけLDに入らず、初かもしれない。ボックス2ではなんといっても「Overture」「Pinball Wizard」「Tommy Can You Hear Me」「Smash The Mirror」「Sally Simpson」「I'm Free」「Tommy's Holyday Camp」「We're Not Gonna Take It」をまとめて披露するミニ『Tommy』が目玉。全て口パク、スタジオで編集されているが、LD版でも少ししか入らず、これは素晴らしい。ただエフェクトと固定カメラの引きのカットを最後まで続けるのはいただけない。「Magic Bus」は他でもよく見ることができるプロモ。ただカラーになった「The Seeker」は、メンバー4人のアップの切り替えが続き、画面に歌詞が被る見づらいプロモだが初めて見るもので貴重。
キンクスはボックス1に「Mr.Pleasant」「Waterloo Sunset」が入っているが、LDの『Beat Club』と同じもの。ボックス2の「Plastic Man」もLDでお馴染み。そして若い頃はレイよりハンサムだったのでソロ・シングルも出していたデイブ・デーヴィスの「Death Of A Clown」「Susaanna's Still Alive」も含め、今は『Kinks Kollected』(Universal Music)で見られる。ボックス3の「Muswell Hillbilly」のみ上記のDVDに収録されず、LD『Beat Cub』以来の登場だ。ただリアル・ライブはひとつもないし、『Beat Club』ではキンクスは軽い扱いだった。
スモール・フェイセスはボックス1に「I Can't Make It」「Here Comes The Nice」「Green Circles」「Itchycoo Park」「Tin Soldier」「Lazy Sunday」の6曲が入った。スティーブ・マリオットが帽子をかぶって歌う「I Can't Make It」とペイズリーのジャケットでまだおかっぱ頭ではない「Itchycoo Park」、フリルのシャツを着た「Tin Soldier」は、どれも『All Or Nothing』のDVDとは別のフィルムで内容もこちらの方がいい。ほどなく解散するので、スモール・フェイセスはこのボックス1にしか入っていない。
ホリーズはボックス1でリアル・ライブの「Look Through Any Window」「A Very Last Day」「I Can't Let Go」の3曲を連続で披露してくれるが、ビートはあるしハーモニー完璧だしさすがの出来だ。この時のグラハム・ナッシュはジョージ・ハリスンそっくりだし、トニー・ヒックスはポール・マッカートニーによく似ているし、ホリーズはルックスがいい。アラン・クラークもいいのだろうがどうしても峰岸徹に見えてしまうのは私だけ?他では演奏シーンがない「Carrie Ann」、口パクの演奏で「Jennifer Eccles」、5人の生首?だけが浮かぶやりすぎのプロモ「Do The Best You Can」も入っていた。ボックス2ではお揃いの白いスーツに蝶ネクタイで「Listen To Me」を口パクで歌うが、お揃いの白いスーツなんてまるでビーチ・ボーイズ...。時流から外れてきてしまっている。その次の「Sorry Suzanne」も同じ白いスーツだが、グラハム・ナッシュは脱退してしまっていた。代わりに入ったのはテリー・シルベスター。ちなみにテリーはホリーズではその才能は発揮できなかったが、ソロでは自作のメロディアスな曲をたっぷり披露し、その隠された才能を十二分に発揮していた。LDで聴けるのは「A Very Last Day」「I Can't Let Go」と「Sorry suzanne」の3曲。
ローリング・ストーンズは何と言ってもボックス3の「Shake Your Hips」「Tumbling Dice」「Jam Session」「Loving Cup」の4トラックを披露、あの名盤『Exile On Main Street』の曲を、ミック・テイラー時代の映像で、リアル・ライブで聴けるなんて夢のようだ。やはりストーズはほれぼれするほどカッコいい。全て初登場だ。あとクレジットはないがボックス2で超名曲「Jumpin' Jack Flash」のリアル・ライブが見られる。顔にメイクをして歌うフィルムで見たことがある人も多いだろう。
なぜビーチ・ボーイズがこんなに後ろなのか。ボックス2では「Bluebirds Over The Mountain」「Break Away」「Do It Again」「California Girls」「Surfin' USA」が登場するがみな1968年から1969年のフィルムなのにお揃いの白いスーツ。マイクだけはキリストのような服になるが、どちらにしても時代遅れで恥ずかしい。ビーチ・ボーイズ・フリークだけに見たくない、恥ずかしい、そんな感じがするので後回しになった。「Bluebirds...」だけ初のディスク化。
ボックス1のムーディーブルースの「The Night In While Satin」はお馴染みのフィルムでインパクトがないが、アソシエイションの「Time For Livin'」は初登場で、口パクながらこの頃に多いエフェクト処理がないのがいい。ハワイ出身のラリー・ラモスの顔がいかにもアジア人で印象に残る。なんといっても超名盤『Birthday』の曲なので曲が最高だ。
ボックス2ではまずメリー・ホプキンの「Goodbye」を挙げたい。このプロモは曲を作ったポール・マッカートニーと一緒に撮影されていて素晴らしい。そしてこのメロディ!ポールの天才ぶりがいかんなく発揮された名曲だ。こういう曲や「Martha My Dear」のような曲をかけるポールがいたからビートルズは偉大なのだ。ロック評論家は圧倒的にジョン派が多いが、自分が選べば6割はポールの曲になる。ビートルズ時代のヒット曲を書いた比率もポールの方が同じ程度多い。ポールを軽く見る奴は音楽ファンの資格なしというのが私の持論だ。話を戻そう。同じくディスク2の目玉はハーモニー・グラス。口パクだが曲が「Move In A Little Closer Baby」なので申し分ない。ハーモニー・グラスの動く映像が見らえるなんて信じられない。ラスカルズの「Heaven」はLDで披露されていたフィルム。フェリックス・キャバリエが髭だるまで見苦しいが、今となっては珍しい。CCRは「Proud Mary」、ボックス3で「Sweet Hitch Hiker」のプロモが放送されるが、まともに演奏が見らえるものはなく、フィルムとしてはガッカリもの。
さらにVANDAらしいチョイスをしよう。ボックス1でのトニー・マコウレイの曲はロング・ジョン・ボードレーの「Let The Heartaches Begin」だけ。ボックス2ではまずファウンデーションズの「Build Me Up Buttercup」が出てくるがオープニングのナレーションが半分くらい被っているし、ダンサー2人が合成で写っていたりとひどい扱い。しかしその半年後の「In The Bad Bad Old Days」はトリを飾り完奏で、ヒットを連発したためか扱いが格段によくなっていた。この曲は高揚感があって素晴らしい。そしてマーマレードの「Baby Make It Soon」がいい。フライング・マシーンよりリード・ヴォーカルがしっかりしている。逆にロジャー・グリーナウェイ&ロジャー・クックは自らでデュオとしてデビューしたデビット&ジョナサンで「Lovers Of The World Unite」「Ten Storeys High」を歌う。ヒットした前者は高揚感がある名曲だ。もう一曲、この二人のナンバーが出てくるが、分かりやすいので日本語で。それは口笛ジャックの「口笛天国」で、実際にジャックさんらしい人が出てきて一人で口笛を吹く悲しい映像だ。このあとに出てくるのがクリームなのだから余計悲しい...。でも曲自体はなかなかいい曲で、我々の世代は「走れ!歌謡曲」のテーマソングとして知らない人はいない。ただしこの番組、演歌ばっかりだったので、この曲が聴こえてくると眠ることにしていた。そしてフラワー・ポット・メン。ジョン・カーター&ケン・ルイス作の大ヒットした「Let's Go To San Francisco」と「A Walk In The Sky」を歌うが、リード・ヴォーカルがトニー・バロウズだ!これは嬉しい。口パクだが見事なハーモニー。
その他でボックス1の目玉はビリー・ニコルスの「Would You Believe」だ。この隠れた名曲の動く映像があったなんてこれも信じられない。スティーブ・マリオットのシャウトもしっかり聴こえるし二重丸。そしてスティーブ・マリオット&ロニー・レーンのコンビが書いたP.P. アーノルドの「Groovy」も要チェック。マリオットが自分に合わせて書いたんじゃないかと思うこの曲、彼女のソウルフルな声との相性は抜群だ。そしてキンクスのレイ先生が書いた名曲「I Go To Sleep」を歌ったのがマリオン。ドレス姿で色っぽくこれもいい映像だ。驚いたのはシャロン・タンディ。2曲収録されたいたうち、彼女の本来の声は「The Fool On The Hill」での素直な声のはず。しかし、「Hold On」ではバックのメチャクチャカッコいい演奏に乗せてロックナンバーに挑戦していた。ちなみにこのバックは知る人ぞ知る幻のグループ、Fleur De Lys(フルー・ド・リス)で、当時はアルバムすら出せなかった。今はCDで聴けるが、このグループの「Circles」はフーよりもカッコいいので、是非聴いて。そしてこれも日本語の方が分かりデイブ・ディー・グループの「キサナドウの伝説」。今、聴くとアメリアッチ風でとてもいい出来だ。しかしこの曲の英題は「The Legend Of Xanadu」で、「ザナドウ」なのだ。しかし「in Xabadu」で続けられると「キサナドウ」と聴こえてしまう。一度そう聞こえたらもう「キサナドウ」としか聴こえない。当時の日本の洋楽ディレクターは上手いね。話はそれるが当時のディレクターは自分の耳でヒットしそうな曲を選んでシングルカットし大ヒットさせていた。このDVDでも見ることができるウォーカーブラザースの「ダンス天国」や、ショッキング・ブルーの「悲しき鉄道員」がそうだし、ジェリー・ウォレスの「男の世界」もあった。みんな日本のみのヒットだが、クオリティが高い曲ばかりで、シングルカットやプロモーションをしなかった本国の方が間違いで、当時のディレクターのセンスの良さは、今の数段上を行っていた。
その他ではレモ・フォーのトニー・アシュトンのオルガンがカッコいい。ボックス2、3ではアシュトン、ガードナー&ダイクとしてまたみられる。そしてナイス。ボックス1と2で登場するがキース・エマーソンの実力は飛びぬけている。
ではボックス2。その他では大好きなニルソンの「Everybody's Talkin'」だ。映画『真夜中のカーボーイ』で印象的に使われ、大好きになった。この『真夜中のカーボーイ』は私の歴代好きな映画のベスト3に入る超名作、切なすぎるが、見返りのない真のやさしさを感じることができる映画だ。ダスティン・ホフマンの演じるリコは、この名優の数ある作品の中でも最高の演技だろう。見たことがない人がいたら是非。ラブ・アフェアーの「A Day Without Love」もいい。シングルだとソフトロック系になるラブ・アフェアー、スティーブ・エリスの声がいいのでわくわくしてしまう。ブルーチアーの「Summertime Blues」も聴きもの。しかしこのアレンジを聴いてベンチャーズ(子供の頃シングルを買って聴いた)と思ってしまうのは私だけ?LDでも登場していたバッドフィンガーは「Come And Get It」「Rock Of All Ages」の2曲。ポールの書いた「Come And Get It」はキャッチーないい曲で、ポールの絶好調ぶりがうかがえる。その他ではサンダークラップ・ニューマンの「Something In The Air」がなかなかいい。そしてラヴ・スカルプチャーの「Sabre Dance」が寺内タケシばりのエレキ・インストで聴きいってしまった。レッド・ツェッペリンは大好きなので「Whole Lotta Love」にはドキドキするほど期待したが、ほとんど画面はエフェクトばかりでこの曲を演奏しているのかすら分からず、間奏に至ってはあの弓で弾くところを全面カットしてギターソロがいきなり現れるというとんでもない編集で怒りすら覚えた。失礼すぎるだろ。ディープ・パープルもいろいろ出てきたが、特に好きな「Highway Star」のリッチー・ブラックモアのギターソロがレコードとはまったく違うソロで超ガッカリ。あれを待っていたのに...。あと。1910フルーツガム・カンパニーやオハイオ・エクスプレスはスタジオ・グループだと思っていたので、ヴァニティ・フェアも含め動く映像にちょっとビックリ。
ボックス3は、貴重映像のオンパレードだが、個人的にはEL&Pの「Take A Pebble」「Knife Edge」、イエスの「All Good People」「Your Is No Disgrace」、キング・クリムゾンの「Lark's Tongues In Aspic」に目が釘付けになった。LD時代に3曲は見られたが、その神業的な演奏に、驚嘆するばかり。私は中学時代、プログレ人間だったので、最高だった。他ではスティヴン・スティルス&マナサスの「It Doesn't Matter」、Tレックスの「Jeepster」がよかった。
そしてこのボックス全てを通して楽しめるのが、司会を務めるウッシ・ネルケ嬢のファッションだ。これを見ているだけでも、この時代を感じることができるので注目。ボックス2の途中からカラーになる。またボックス1と2では、番組の途中で当時のベスト10が披露され、これも楽しい。さらにカーナビーストリートなど最新の流行も紹介され、音楽以外でも見どころ満載だ。(佐野)
この『Beat Club』がソフト化されたのは1988年、今から23年も前の事だ。フォーマットはレーザーディスク。何しろその頃は60年代、70年代のアーティストの動く映像など夢のまた夢の時代だったときに、パイオニアLDCからこのシリーズが出た時には本当に狂喜乱舞したものだ。今から思えば一部なのだが、おいしい部分はしっかり入っていた。日本のみのリリースで、この画期的な企画を実現させたのはVANDAでもおなじみ、当時パイオニアLDCにいて、現在はワーナーのプロデューサーの宮治淳一さんだった。さすが!でもその宮治さんも、その全部がリリースされるなんて夢にも思わなかっただろう。
前置きが長くなったところでさっそく本題に入ろう。Web VANDAなので、VANDAで特集したアーティストを中心に紹介していきたい。
ではフーから紹介しよう。ボックス1に入ったのはリアル・ライブの超カッコいい「Happy Jack」「So Sad About Us」「My Generation」。同じディスクに口パクの「I'm A Boy」「Heat Wave」「Happy Jack」も入っていた。『Who's Better Who's Best』などでもお馴染みの「Substitute」「Pictures Of Lily」のプロモもこのボックス1で、口パクの「Happy Jack」だけLDに入らず、初かもしれない。ボックス2ではなんといっても「Overture」「Pinball Wizard」「Tommy Can You Hear Me」「Smash The Mirror」「Sally Simpson」「I'm Free」「Tommy's Holyday Camp」「We're Not Gonna Take It」をまとめて披露するミニ『Tommy』が目玉。全て口パク、スタジオで編集されているが、LD版でも少ししか入らず、これは素晴らしい。ただエフェクトと固定カメラの引きのカットを最後まで続けるのはいただけない。「Magic Bus」は他でもよく見ることができるプロモ。ただカラーになった「The Seeker」は、メンバー4人のアップの切り替えが続き、画面に歌詞が被る見づらいプロモだが初めて見るもので貴重。
キンクスはボックス1に「Mr.Pleasant」「Waterloo Sunset」が入っているが、LDの『Beat Club』と同じもの。ボックス2の「Plastic Man」もLDでお馴染み。そして若い頃はレイよりハンサムだったのでソロ・シングルも出していたデイブ・デーヴィスの「Death Of A Clown」「Susaanna's Still Alive」も含め、今は『Kinks Kollected』(Universal Music)で見られる。ボックス3の「Muswell Hillbilly」のみ上記のDVDに収録されず、LD『Beat Cub』以来の登場だ。ただリアル・ライブはひとつもないし、『Beat Club』ではキンクスは軽い扱いだった。
スモール・フェイセスはボックス1に「I Can't Make It」「Here Comes The Nice」「Green Circles」「Itchycoo Park」「Tin Soldier」「Lazy Sunday」の6曲が入った。スティーブ・マリオットが帽子をかぶって歌う「I Can't Make It」とペイズリーのジャケットでまだおかっぱ頭ではない「Itchycoo Park」、フリルのシャツを着た「Tin Soldier」は、どれも『All Or Nothing』のDVDとは別のフィルムで内容もこちらの方がいい。ほどなく解散するので、スモール・フェイセスはこのボックス1にしか入っていない。
ホリーズはボックス1でリアル・ライブの「Look Through Any Window」「A Very Last Day」「I Can't Let Go」の3曲を連続で披露してくれるが、ビートはあるしハーモニー完璧だしさすがの出来だ。この時のグラハム・ナッシュはジョージ・ハリスンそっくりだし、トニー・ヒックスはポール・マッカートニーによく似ているし、ホリーズはルックスがいい。アラン・クラークもいいのだろうがどうしても峰岸徹に見えてしまうのは私だけ?他では演奏シーンがない「Carrie Ann」、口パクの演奏で「Jennifer Eccles」、5人の生首?だけが浮かぶやりすぎのプロモ「Do The Best You Can」も入っていた。ボックス2ではお揃いの白いスーツに蝶ネクタイで「Listen To Me」を口パクで歌うが、お揃いの白いスーツなんてまるでビーチ・ボーイズ...。時流から外れてきてしまっている。その次の「Sorry Suzanne」も同じ白いスーツだが、グラハム・ナッシュは脱退してしまっていた。代わりに入ったのはテリー・シルベスター。ちなみにテリーはホリーズではその才能は発揮できなかったが、ソロでは自作のメロディアスな曲をたっぷり披露し、その隠された才能を十二分に発揮していた。LDで聴けるのは「A Very Last Day」「I Can't Let Go」と「Sorry suzanne」の3曲。
ローリング・ストーンズは何と言ってもボックス3の「Shake Your Hips」「Tumbling Dice」「Jam Session」「Loving Cup」の4トラックを披露、あの名盤『Exile On Main Street』の曲を、ミック・テイラー時代の映像で、リアル・ライブで聴けるなんて夢のようだ。やはりストーズはほれぼれするほどカッコいい。全て初登場だ。あとクレジットはないがボックス2で超名曲「Jumpin' Jack Flash」のリアル・ライブが見られる。顔にメイクをして歌うフィルムで見たことがある人も多いだろう。
なぜビーチ・ボーイズがこんなに後ろなのか。ボックス2では「Bluebirds Over The Mountain」「Break Away」「Do It Again」「California Girls」「Surfin' USA」が登場するがみな1968年から1969年のフィルムなのにお揃いの白いスーツ。マイクだけはキリストのような服になるが、どちらにしても時代遅れで恥ずかしい。ビーチ・ボーイズ・フリークだけに見たくない、恥ずかしい、そんな感じがするので後回しになった。「Bluebirds...」だけ初のディスク化。
ボックス1のムーディーブルースの「The Night In While Satin」はお馴染みのフィルムでインパクトがないが、アソシエイションの「Time For Livin'」は初登場で、口パクながらこの頃に多いエフェクト処理がないのがいい。ハワイ出身のラリー・ラモスの顔がいかにもアジア人で印象に残る。なんといっても超名盤『Birthday』の曲なので曲が最高だ。
ボックス2ではまずメリー・ホプキンの「Goodbye」を挙げたい。このプロモは曲を作ったポール・マッカートニーと一緒に撮影されていて素晴らしい。そしてこのメロディ!ポールの天才ぶりがいかんなく発揮された名曲だ。こういう曲や「Martha My Dear」のような曲をかけるポールがいたからビートルズは偉大なのだ。ロック評論家は圧倒的にジョン派が多いが、自分が選べば6割はポールの曲になる。ビートルズ時代のヒット曲を書いた比率もポールの方が同じ程度多い。ポールを軽く見る奴は音楽ファンの資格なしというのが私の持論だ。話を戻そう。同じくディスク2の目玉はハーモニー・グラス。口パクだが曲が「Move In A Little Closer Baby」なので申し分ない。ハーモニー・グラスの動く映像が見らえるなんて信じられない。ラスカルズの「Heaven」はLDで披露されていたフィルム。フェリックス・キャバリエが髭だるまで見苦しいが、今となっては珍しい。CCRは「Proud Mary」、ボックス3で「Sweet Hitch Hiker」のプロモが放送されるが、まともに演奏が見らえるものはなく、フィルムとしてはガッカリもの。
さらにVANDAらしいチョイスをしよう。ボックス1でのトニー・マコウレイの曲はロング・ジョン・ボードレーの「Let The Heartaches Begin」だけ。ボックス2ではまずファウンデーションズの「Build Me Up Buttercup」が出てくるがオープニングのナレーションが半分くらい被っているし、ダンサー2人が合成で写っていたりとひどい扱い。しかしその半年後の「In The Bad Bad Old Days」はトリを飾り完奏で、ヒットを連発したためか扱いが格段によくなっていた。この曲は高揚感があって素晴らしい。そしてマーマレードの「Baby Make It Soon」がいい。フライング・マシーンよりリード・ヴォーカルがしっかりしている。逆にロジャー・グリーナウェイ&ロジャー・クックは自らでデュオとしてデビューしたデビット&ジョナサンで「Lovers Of The World Unite」「Ten Storeys High」を歌う。ヒットした前者は高揚感がある名曲だ。もう一曲、この二人のナンバーが出てくるが、分かりやすいので日本語で。それは口笛ジャックの「口笛天国」で、実際にジャックさんらしい人が出てきて一人で口笛を吹く悲しい映像だ。このあとに出てくるのがクリームなのだから余計悲しい...。でも曲自体はなかなかいい曲で、我々の世代は「走れ!歌謡曲」のテーマソングとして知らない人はいない。ただしこの番組、演歌ばっかりだったので、この曲が聴こえてくると眠ることにしていた。そしてフラワー・ポット・メン。ジョン・カーター&ケン・ルイス作の大ヒットした「Let's Go To San Francisco」と「A Walk In The Sky」を歌うが、リード・ヴォーカルがトニー・バロウズだ!これは嬉しい。口パクだが見事なハーモニー。
その他でボックス1の目玉はビリー・ニコルスの「Would You Believe」だ。この隠れた名曲の動く映像があったなんてこれも信じられない。スティーブ・マリオットのシャウトもしっかり聴こえるし二重丸。そしてスティーブ・マリオット&ロニー・レーンのコンビが書いたP.P. アーノルドの「Groovy」も要チェック。マリオットが自分に合わせて書いたんじゃないかと思うこの曲、彼女のソウルフルな声との相性は抜群だ。そしてキンクスのレイ先生が書いた名曲「I Go To Sleep」を歌ったのがマリオン。ドレス姿で色っぽくこれもいい映像だ。驚いたのはシャロン・タンディ。2曲収録されたいたうち、彼女の本来の声は「The Fool On The Hill」での素直な声のはず。しかし、「Hold On」ではバックのメチャクチャカッコいい演奏に乗せてロックナンバーに挑戦していた。ちなみにこのバックは知る人ぞ知る幻のグループ、Fleur De Lys(フルー・ド・リス)で、当時はアルバムすら出せなかった。今はCDで聴けるが、このグループの「Circles」はフーよりもカッコいいので、是非聴いて。そしてこれも日本語の方が分かりデイブ・ディー・グループの「キサナドウの伝説」。今、聴くとアメリアッチ風でとてもいい出来だ。しかしこの曲の英題は「The Legend Of Xanadu」で、「ザナドウ」なのだ。しかし「in Xabadu」で続けられると「キサナドウ」と聴こえてしまう。一度そう聞こえたらもう「キサナドウ」としか聴こえない。当時の日本の洋楽ディレクターは上手いね。話はそれるが当時のディレクターは自分の耳でヒットしそうな曲を選んでシングルカットし大ヒットさせていた。このDVDでも見ることができるウォーカーブラザースの「ダンス天国」や、ショッキング・ブルーの「悲しき鉄道員」がそうだし、ジェリー・ウォレスの「男の世界」もあった。みんな日本のみのヒットだが、クオリティが高い曲ばかりで、シングルカットやプロモーションをしなかった本国の方が間違いで、当時のディレクターのセンスの良さは、今の数段上を行っていた。
その他ではレモ・フォーのトニー・アシュトンのオルガンがカッコいい。ボックス2、3ではアシュトン、ガードナー&ダイクとしてまたみられる。そしてナイス。ボックス1と2で登場するがキース・エマーソンの実力は飛びぬけている。
ではボックス2。その他では大好きなニルソンの「Everybody's Talkin'」だ。映画『真夜中のカーボーイ』で印象的に使われ、大好きになった。この『真夜中のカーボーイ』は私の歴代好きな映画のベスト3に入る超名作、切なすぎるが、見返りのない真のやさしさを感じることができる映画だ。ダスティン・ホフマンの演じるリコは、この名優の数ある作品の中でも最高の演技だろう。見たことがない人がいたら是非。ラブ・アフェアーの「A Day Without Love」もいい。シングルだとソフトロック系になるラブ・アフェアー、スティーブ・エリスの声がいいのでわくわくしてしまう。ブルーチアーの「Summertime Blues」も聴きもの。しかしこのアレンジを聴いてベンチャーズ(子供の頃シングルを買って聴いた)と思ってしまうのは私だけ?LDでも登場していたバッドフィンガーは「Come And Get It」「Rock Of All Ages」の2曲。ポールの書いた「Come And Get It」はキャッチーないい曲で、ポールの絶好調ぶりがうかがえる。その他ではサンダークラップ・ニューマンの「Something In The Air」がなかなかいい。そしてラヴ・スカルプチャーの「Sabre Dance」が寺内タケシばりのエレキ・インストで聴きいってしまった。レッド・ツェッペリンは大好きなので「Whole Lotta Love」にはドキドキするほど期待したが、ほとんど画面はエフェクトばかりでこの曲を演奏しているのかすら分からず、間奏に至ってはあの弓で弾くところを全面カットしてギターソロがいきなり現れるというとんでもない編集で怒りすら覚えた。失礼すぎるだろ。ディープ・パープルもいろいろ出てきたが、特に好きな「Highway Star」のリッチー・ブラックモアのギターソロがレコードとはまったく違うソロで超ガッカリ。あれを待っていたのに...。あと。1910フルーツガム・カンパニーやオハイオ・エクスプレスはスタジオ・グループだと思っていたので、ヴァニティ・フェアも含め動く映像にちょっとビックリ。
ボックス3は、貴重映像のオンパレードだが、個人的にはEL&Pの「Take A Pebble」「Knife Edge」、イエスの「All Good People」「Your Is No Disgrace」、キング・クリムゾンの「Lark's Tongues In Aspic」に目が釘付けになった。LD時代に3曲は見られたが、その神業的な演奏に、驚嘆するばかり。私は中学時代、プログレ人間だったので、最高だった。他ではスティヴン・スティルス&マナサスの「It Doesn't Matter」、Tレックスの「Jeepster」がよかった。
そしてこのボックス全てを通して楽しめるのが、司会を務めるウッシ・ネルケ嬢のファッションだ。これを見ているだけでも、この時代を感じることができるので注目。ボックス2の途中からカラーになる。またボックス1と2では、番組の途中で当時のベスト10が披露され、これも楽しい。さらにカーナビーストリートなど最新の流行も紹介され、音楽以外でも見どころ満載だ。(佐野)
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