2011年6月18日土曜日

☆Paul McCartney:『McCartney(Deluxe Edition)』(MLP/HRM32799-001)『McCartneyⅡ(Deluxe Edition)』(MLP/HRM32800-001)

ポール・マッカートニーの①オリジナル・アルバム+②未発表トラック入ボーナスCD+③DVDという構成のデラックスエディションが『Band On The Run』に続き2作まとめてリリースされた。
名作『Band On The Run』は当然、『McCartney』もファンが多いし(私も大好き)これも当然、でも『McCartneyⅡ』?これがこの仕様?ポールのアルバムの中でも人気のないこのアルバムを出すってことは、全部出すぞっていう意思表示だな。日本盤だと定価が1万円してしまうモノをこれから20枚以上...と考えると頭がクラクラしてしまった。Hear Musicの商売、エゲツないなあ。値段もそうだが、この馬鹿でかいブックレット付きのアルバム、狭い自分の部屋のどこに置けばいいんだ?その事もまったく考えてくれていないな。買わなきゃいいんだけど、未発表入りだと買ってしまうのがファンというもの、素直に喜べないリリースでした。まずは『McCartney』。「Every Night」「Junk」「Man We Was Lonely」は私の3強。プラス「Maybe I'm Amazed」で、もうこのアルバムはポールの全アルバムの中で個人的に10本の指に入るお気に入りになった。ただこのアルバムは発売当時、リアルタイムで買ったのだが(中1の時だ)、ビートルズのアルバムとの差があまりに激しくてガッカリしたのも思い出す。世間の評も酷評だったと思う。ジョンは我が道を行っていたがジョンはジョンなのでOK。ジョージが名作『All Things Must Pass』を出してしまったから、ポールは何で?っていう感じになってしまった。ポールにはビートルズのような緻密なサウンドプロダクションを期待していたので、肩すかしを食ってしまったのだ。でも時代が変われば評価も変わる。いつしかこのアルバムは自分も含め多くのポールファンの愛聴盤になっていた。で、肝心なボーナスディスクについて。まずは「Glasses」の後に一瞬だけ出てきて亡霊のようだった「Suicide」は、ポールのピアノの弾き語りで全貌が聴ける。オールドタイミーなジャズナンバーで、ポールはデビュー当時からこういうジャズコードを知っていてロックンロールとは対局にあるようなこういう曲を書くし、歌えたから、ビートルズがすぐに幅広い音楽性を持ったグループに進化できたんだなと思う次第。DVDには『One Hand Clapping』での弾き語りが入っているが、このシーンは『Band On The Run』収録のオリジナル版には無かったように思う。DVDヴァージョンの方が整理されていて出来がいい。そして『One Hand Clapping』で披露されていた「Maybe I'm Amazed」がCDに収録される。ポールの曲作りのセンスの良さと歌の上手さが際立つ名作だ。そしてCDには1979年グラスゴーでの「Every Night」「Hot As Sun」「Maybe I'm Amazed」が、DVDには同年のカンボジア難民救済コンサート(そういえば未だCDにならないな。なぜ?)の「Every Night」「Hot As Sun」が収録されている。面白いのはアップテンポにアレンジされた「Hot As Sun」で、リードギターもポールが弾いいていた。「Don't Cry Baby」と題された未発表トラックは「Oo You」のインストヴァージョン。これはこれで悪くないな。「Women Kind」という完全な未発表のピアノ弾き語り曲は、この当時のデモカセットに入っていて紛失していたものだとか。ポールの記憶でこの当時の曲と認定された。ジャズタッチではないがオールドタイミーな曲だ。DVDには1991年のMTV Unpluggedでの「Junk」「That Would Be Something」が収録された。「Junk」はインストでアンプラグドだと一段と哀愁があり味わい深い。「That Would Be Something」はボトルネックを使って一気にブルース・ナンバーに変貌した。これはなかなか面白い。DVDでは他に『McCartney』当時のリンダとのプライベートフィルムが見られるがこれは貴重。では次に『McCartneyⅡ』。テクノ風のチープなサウンドが嫌で、今聴いてもやっぱり好きなアルバムではない。ただし以前のような拒否反応はなくなったが。ポールのポップな音楽性が混じり込んでいたから、まあまあ聴けるってとこ。ボーナスCDはピックアップしたもののみ紹介しよう。まず「Blue Sway」は『Cold Cuts』での未発表曲で、地味な曲だがリチャード・ナイルのオーケストラをバックでまあ聴ける。「Bogey Woddle」はチープなテクノ風のキーボードがあんまりで、情け無さを誘う。「Mr H Atom/You Know I'll Get You Baby」も同様だ。語りの「All You Horse Riders/Blue Sway」といい、メロディメーカーとしてのポールはこれらの未発表曲にはどこにもいない。このアルバムにはもうⅠ枚ボーナスCDがありそこには「Comimg Up」「Front Parlor」「Frozen Jap」(タイトルといい中華風のメロディといい、不愉快な曲)「Dark Room」「Check My Machine」等はFull Length Versionと題された完奏したテイクを集められた。1分半~3分程度長く楽しめるが、元の出来がたいしたことがないので、こんな風に終わっているんだと確認する程度。他では「Summer's Day Song」の歌なしヴァージョンが入っていた。DVDは、いい曲しかプロモを作っていないので、こちらは楽しめる。ポールが12人編成のコンボの中で11人を変装(残る一人はリンダ)している「Coming Up」、しっとりと歌いあげる「Waterfalls」では自宅で曲を書きとめているポールが外へ出て背景が次々変わっていく。そしてパーティー風の楽しげな「Wonderful Christmastime」の3曲がプロモ。他では「Coming Up」のカンボジア難民救済コンサートでのライブと、Lawer Gate Farmでのデモが収められている。(佐野)


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