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2011年4月30日土曜日

秘宝感:『秘宝感』(ローヴィング・スピリッツ/ RKCJ-2047)



ジャズ系を中心にsaigenjiやorange pekoeなど、ボーダーレスなセッションで活躍するドラマーの斉藤良率いるフリージャズ・グループ、秘宝感(ひほうかん)がデビュー・アルバムをリリースしたので紹介しよう。

秘宝感は2010年に、東京のジャズ・ライブハウスの名門である新宿ピットイン昼の部での活動を皮切りにスタートし、若手ジャズ・ミュージシャンの中でも最も注目される存在となっている。
メンバーはリーダー兼ドラマーの斉藤良を中心に、ピアニストのスガダイロー、アルトサックス奏者の纐纈雅代、ベーシストの佐藤えりか、そしてヴォーカルとパフォーマンスで熱海宝子というテクニシャンで個性的なプレイヤーから構成される。

アルバムはセルジュ・ゲンズブールが手掛けたブリジット・バルドーの「コンタクト」のカバーから幕を開ける。原曲が持つサイケデリック且つミニマルな展開を見事に打ち砕くフリー・スタイルで非常に斬新的だ。導入部の台詞回しはマリーナ・ショウの「Street Walkin' Woman」のそれを彷彿させ、類い希な拘りも感じさせる。
続く「紫水晶アラベスク」から「サンドウ」まで強力なフリージャズが展開され、各プレイヤーが持つバックボーンと感覚のみで高度な演奏が無限に繰り広げられ、佐藤のアルコ奏法が響き渡る「紫水晶アラベスク」や纐纈のアルトがブロウしまくる「黄金虎と銀雨」、斉藤とスガのみで演奏される「男」の静と動のコントラストの見事さなど聴きどころは多い。
ラストはあがた森魚の「春の嵐の夜の手品師」のカバー。決して技巧的とはいえない熱海のヴォーカルも表現力でそれをカバーしており、グループの演奏もここで一気にピークをむかえ、実に感動的な大団円で清々しくもある。
(ウチタカヒデ)

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