Orange Colored Skyはペンシルバニア州エリー出身のラリーとヴィニーのヤンガー兄弟が中心となって62年に結成された。その後ニューヨークの名門クラブであるペパーミント・ラウンジのハウス・バンドとして活動し、68年には移住先の南カリフォルニアでユニ・レコード(67~73)と契約に至っている。同年にシングル「Orange Colored Sky/The Shadow Of Summer」と本アルバム、69年には「Happiness Is/Another Sky」「Mr. Peacock/Knowing How I Love You」「Sweet Potato/The Sun And I」と3枚のシングルをリリースした後ユニを離れた。
今回のリイシューでは上記の全シングルの音源をボーナス・トラックとして収録しており、アルバム重複曲の「Knowing How I Love You」と「The Sun And I」はヴァージョン違いとなっている。
ユニのサイケデリック・ポップ(ロック)・バンドといえば、ストロベリー・アラーム・クロックが最も有名であるが、他にもゲイリー・ゼクリー・ワークスの一つであるファン&ゲームスなどソフトロックの文脈で語られるバンドが少なくない。このあたりは弊誌佐野編集長監修のディスクガイド書籍、『Soft rock A to Z』最終改訂版の『SOFT ROCK The Ultimate!』を読んで頂きたい。
プロデューサーのノーマン・グレッグ・H・ラトナーについても少し触れておこう。彼はマーク・エリックの『Midsummer's Day Dream』(69年)を手掛けたことでソフトロック・ファンにも認知されていると思う。74年にはソウル・ヴォーカル・グループのヒューズ・コーポレーションの「Rock The Boat」を手掛け全米1位にするなど活動のフィールドを広げ、後にABC/ダンヒル・ユニバーサル・レコードの副社長に登りつめることになる。
バンドとしてのOrange Colored Skyは、ほぼ全てのソングライティングとアレンジを手掛けるキーボーディストのワルター・シルヴィンスキーがサウンドのイニシアティヴを取っているのが大きな特徴になっているが、セルフ・コンテインド・バンドのウイークポイントというべき演奏能力の低さがアレンジに追いついてない瞬間も多々耳にする。とはいえ、シルヴィンスキーのソングライティング・センスはそれを補って余りあるほど魅力的な曲が多い。
冒頭からボナー&ゴードン作品に通じる高揚感溢れる「The Sun And I」で引き込まれる。もたりながら跳ねるドラミング(途中走ったりと突っ込み所が多いw)によって妙なシンコペーションを形成しているのが面白い。ヴァースでのピチカートとトレモロのコントラストが効いたストリングスに比べ、工夫が感じられないコーラス・アレンジはちょっと残念だ。続く「The Shadow Of Summer」はトニー・マコウレイを思わせるハートフルなソングライティングで、シルヴィンスキーのハモンド・オルガンはここでもアレンジの要になっている。
またレイジーなサイケ・ムード漂う「Just Like Humpty Dumpty」も悪くないが、個人的なアルバムのハイライト曲は「L.A.」だ。ジャケットの色彩を連想させる心情風景をよく現している。7月に来日公演するゾンビーズにも通じるポップスの徒花的ムードはシクスティーズ通にはたまらない。
なんでもOrange Colored Skyは現在も活動を続けているらしく、結成時のオリジナル・メンバーは残っていないが、南カリフォルニアのローカル・バンドとしてビーチ・ボーイズのカバーなどを演奏して観客を楽しませているらしい。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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