韓国のソフトロック・グループ、SMILES(スマイルズ)が2007年にBeatball recordsより発表していたファースト・アルバムが、この度日本のTKOレーベルから6曲のレアなボーナス・トラックを加えた新装盤としてリリースしたので紹介したい。
彼らスマイルズは2004年、メイン・ソングライターであるヴォーカル兼ギターのジンマとベースのチョン・ジュンヨプを中心に、本作のタイトルでもあるStrawberry TV Show名義で結成された。
本作のレコーディング時には4人の女性コーラス隊(1人はキーボード兼任)を含む8人編成となっている。現在グループは活動休止中で一部のメンバーは脱退しており、中心メンバーのジンマは元メンバーを含む女性3人組のインディーズ・アイドルユニット"プレイガール"を手掛けているらしいので、元々プロデューサー指向が強かったのだろう。
では『EIGHTH DAY』(ロン・ダンテが手掛けた68年作)を彷彿とさせるジャケットが印象的な、本作の内容について触れていこう。
シンセ・ブラスのフレーズからはじまるサンシャイン・ポップの「South Pole Sunset」は、男女のコーラスの掛け合いがSalt Water Taffyに通じるパーティー・チューンだ。
ラグタイム・ピアノが印象的な「Strawberry Rag」は、愛らしいノベルティーなインストの小曲で演奏時間が短いのが惜しい。続く「The Minx Who Loved Me」は、様々な音楽的エッセンスが3分少々につまった名曲で、山下毅雄風サントラ・サウンドにライブラリー音楽系コーラスやファズ・ギターが絡む、構成的に非常に面白く筆者が真っ先に夢中になった曲でもある。
アストラッド・ジルベルト&ワルター・ワンダレー風オルガン・ボッサの「Long Long Beach」は、爽やかな女性コーラスに絡むオカズの多いドラミング・パターンが面白い。
「Theme from Strawberry TV Show」と「PBA 2000」は、「Strawberry Rag」同様にノベルティーな小曲で、こういったジングルを書くセンスもジンマのカラーなのだろうか。シェイクするリズムにイージーな女性コーラスがリードをとる70年代風TV番組テーマ曲の前者と、ジョー・ミーク風のアナログシンセ・サウンドにエッダ風のコーラスが絡む後者と非常に興味深い。
14分近い組曲の「Monglong Beach」は、バロック風コーラスのパートからボッサ・ギターのソロ・パート、前出の「Long Long Beach」がモチーフとして登場するなどカットアップ感覚が面白い。曲が持つムードはブラジリアン・ソフトロックのANTONIO ADOLFO & A BRAZUCAのセカンド・アルバム(71年)にも通じる。
本アルバム中最も完成度が高いのは「Love So Fine」だろう。ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの同タイトル曲とは同名異曲であるが、そのソングライティング・センスは明らかにニコルズやキャロル・キングに通じるのだ。ザ・ロネッツ「Be My Baby」(63年)風のドラム・リフからはじまる60年代ポップのセンスを持つパートに、スウィングル・シンガーズ・スタイルの男女コーラスが美しいブリッジを持つなど構成も素晴らしい。
この曲今回の新装盤では、ボビーズロッキンチェアーの森本和樹君らによるリミックス・ヴァージョンがボーナス・トラックで収録されているのが嬉しい。
その他のボーナス・トラックには未発表曲を含む4曲のデモと、ブラックスプロイテーション系サントラ風のレーベル・テーマ曲「The Grooviest Sound In The World (Theme From Beatball)」が収められている。
蛇足ではあるが、ライヴでは本家ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの「Love So Fine」もカバーしているようなので動画でチェックして欲しい。
アルバム全体的な印象としては演奏面のテクニカルな弱さを差し引いても、ソフトロックの魅力を21世紀に継承する希有なグループといえる。
なお中心メンバーのジンマは活動が休止中の現在、スマイルズのニューアルバムのプリプロを続けているようなので今後も応援しながら注目していきたい。
(テキスト:ウチタカヒデ)
彼らスマイルズは2004年、メイン・ソングライターであるヴォーカル兼ギターのジンマとベースのチョン・ジュンヨプを中心に、本作のタイトルでもあるStrawberry TV Show名義で結成された。
本作のレコーディング時には4人の女性コーラス隊(1人はキーボード兼任)を含む8人編成となっている。現在グループは活動休止中で一部のメンバーは脱退しており、中心メンバーのジンマは元メンバーを含む女性3人組のインディーズ・アイドルユニット"プレイガール"を手掛けているらしいので、元々プロデューサー指向が強かったのだろう。
では『EIGHTH DAY』(ロン・ダンテが手掛けた68年作)を彷彿とさせるジャケットが印象的な、本作の内容について触れていこう。
シンセ・ブラスのフレーズからはじまるサンシャイン・ポップの「South Pole Sunset」は、男女のコーラスの掛け合いがSalt Water Taffyに通じるパーティー・チューンだ。
ラグタイム・ピアノが印象的な「Strawberry Rag」は、愛らしいノベルティーなインストの小曲で演奏時間が短いのが惜しい。続く「The Minx Who Loved Me」は、様々な音楽的エッセンスが3分少々につまった名曲で、山下毅雄風サントラ・サウンドにライブラリー音楽系コーラスやファズ・ギターが絡む、構成的に非常に面白く筆者が真っ先に夢中になった曲でもある。
アストラッド・ジルベルト&ワルター・ワンダレー風オルガン・ボッサの「Long Long Beach」は、爽やかな女性コーラスに絡むオカズの多いドラミング・パターンが面白い。
「Theme from Strawberry TV Show」と「PBA 2000」は、「Strawberry Rag」同様にノベルティーな小曲で、こういったジングルを書くセンスもジンマのカラーなのだろうか。シェイクするリズムにイージーな女性コーラスがリードをとる70年代風TV番組テーマ曲の前者と、ジョー・ミーク風のアナログシンセ・サウンドにエッダ風のコーラスが絡む後者と非常に興味深い。
14分近い組曲の「Monglong Beach」は、バロック風コーラスのパートからボッサ・ギターのソロ・パート、前出の「Long Long Beach」がモチーフとして登場するなどカットアップ感覚が面白い。曲が持つムードはブラジリアン・ソフトロックのANTONIO ADOLFO & A BRAZUCAのセカンド・アルバム(71年)にも通じる。
この曲今回の新装盤では、ボビーズロッキンチェアーの森本和樹君らによるリミックス・ヴァージョンがボーナス・トラックで収録されているのが嬉しい。
その他のボーナス・トラックには未発表曲を含む4曲のデモと、ブラックスプロイテーション系サントラ風のレーベル・テーマ曲「The Grooviest Sound In The World (Theme From Beatball)」が収められている。
蛇足ではあるが、ライヴでは本家ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの「Love So Fine」もカバーしているようなので動画でチェックして欲しい。
アルバム全体的な印象としては演奏面のテクニカルな弱さを差し引いても、ソフトロックの魅力を21世紀に継承する希有なグループといえる。
なお中心メンバーのジンマは活動が休止中の現在、スマイルズのニューアルバムのプリプロを続けているようなので今後も応援しながら注目していきたい。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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