2010年11月9日火曜日

☆Paul Williams:『Someday Man(Deluxe Expanded Edition)』(Now Sounds/CRNOW22)

ポール・ウィリアムスの、と言うより、ロジャー・ニコルス作品の中で最も重要なアルバムのひとつである『Someday Man』があのCherry Red傘下のNow Soundsよりリリースされた。もちろん、ボーナストラックが12曲という充実振り。それもモノ・シングル・ヴァージョンでお茶を濁す(このCDでは4曲のみ)のではなく、初めて聴く未発表トラックが8曲分あったので、これは買いなおす価値がある。
オリジナルの10曲についてはもう何度も書いているので改めて書かないが、オリジナル・マスターから音を録っているのでサウンドが非常にクリアであり、冒頭の「Someday Man」から、イントロのベースが目の前で鳴っているような感覚がしてあまりの臨場感に驚かされた。さて、ではその8トラックを紹介しよう。まずはInstrumental、カラオケだ。「Someday Man」「So Many People」「Morning I'll Be Movin' On」「To Put Up With You」は、ちゃんとバック・コーラスも入っていて最高。もちろん一緒に歌ってしまった。名曲はオケだけでも感動しながら聴ける。そしてSessionと名付けられた「Someday Man」と「The Drifter」だ。まず「Someday Man」から紹介したいが、イントロのスティックのカウントからスタート、またストリングス、ホーン、コーラスが入っていないバンド・アンサンブルが楽しめる。フェイド・アウトの曲なので適当な感じで終わったあと、再びスタートするが、今度はドラムのみ入っているが、ストリングスとホーンだけのセッションで、2度楽しめる。そして問題は「The Drifter」。そう、この曲は『Someday Man』には収録されていない曲なのだ。『Someday Man』の1週間後に録音され、このオケはロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのバックトラックになった。これだけで、もうこのCDは「買い」でしょ?ドラム・スティックのカウントからスタート、ストリングスがまだ入っていない、バンド・アンサンブルでまずこの超名曲のオケを味わうことができる。OKの声できれいにこのオケは終了、再びスタートすると、今度はストリングスが入った完成したテイクが登場する。オケなのに惚れ惚れしながら聴きこんでしまった。ちなみにコーラスは入っていない。この「The Drifter」はニコルスとウィリアムスの二人で売り込みようのデモ・アルバム『We've Only Just Begun』(CDはもちろん持っているでしょ?これは義務!)を作り、この中には収録されていたので、改めてウィリアムス・ヴァージョンを録音する予定だった可能性もあるが、やはりこれはこの当時、同時進行で色々なレコーディングが行われていたと考えるのが正しい気がする。『Someday Man』のマスターになぜ残されていたのか、誰も分からないそうだ。最後はDemoである。まずは「So Many People」だ。ヴォーカルにオーバーダブがなく、オケにストリングスもないので初期のデモだが、『We've Only Just Begun』収録のデモとはまったく違うもの。そして「I Know You」。ピアノの弾き語りだが、なんてニコルス=ウィリアムス作品は繊細で美しいのだろう。デモなのにうっとりと聴いてしまった。Webvandaの読者の方は、マストバイである。(佐野)
Someday Man

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