今回はそんなライヴ・パフォーマンスを収めた、バンド初のライヴ・アルバム『GROOVIN'at SETAGAYA』が10月10日にリリースされたので紹介したい。
彼らフルスイングはこれまでに、『SWINGIN'?SWINGIN!』(02年)、『TWO-BASE HIT!』(03年)、『OUR SONG』(09年)と3枚のオリジナル・アルバムをリリースしている他、『Mosh Pit On Disney』(04年)など話題のコンピレーション・アルバムにも参加している。現在のメンバーはメイン・ソングライターでハモンドオルガンのヤマグチの他、ギターのコウノハイジ、ドラムのスガタノリユキからなり、サポート・ベーシストとしてタカミヤヒロシが参加している。
また今作ではほぼ全編でLa Turboのタナカユウジ(各種サックス、ホーン・アレンジ)をはじめ、YOUR SONG IS GOODのハットリヤスヒコ(トロンボーン)やBonjourのナカモトコウイチロウ(テナーサックス)など複数のホーン奏者の参加により、厚みのあるサウンドでライヴを盛り上げている。
冒頭を飾るのは最新オリジナル・アルバム『OUR SONG』から「EXPRESS TRAIN」。16ビートのファンキー・サウンドとキャッチーなハモンドのメロディが渾然一体となって迫ってくる。
しっとりとしたバラードの「A RAINY SONG」では、カサイリョウのヴィブラフォンとゲストの名手エマーソン北村(exじゃがたら、ミュート・ビートetc)のハモンド・ソロの好演が光り、ヤマグチとのハモンド共演も聴きものだ。
ディズニー映画『白雪姫』の挿入歌として、またマイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスなどに取り上げられたジャズ・スタンダードの「SOMEDAY MY PRINCE WILL COME」のカバーも興味深い。ここではジャクソン5の「I Want You Back」(69年)よろしく鮮やかなカッティングのイントロから始まるポップなファンク・ナンバーに変貌している。
「OUR SONG」にも触れるべきだろう、メロウで普遍的なメロディをジャック・マクダフも顔負けのグリッサンドやコーラスなどのテクニックを駆使して奏でるヤマグチのプレイが実に素晴らしい。筆者的には今作のベスト・トラックに挙げたいほど感動的なパフォーマンスだと思う。
アルバム全体を聴いて感じたのは、ワックワックリズムバンドの様なクールなモッズ感覚より、古くはブッカーT&MG'sの『Soul Limbo』(68年)あたりを70年代ブラックミュージック経由で解釈した様な、親しみ易いブルージーさというか人間臭さが彼らの最大の魅力なのかも知れない。
またプレイヤーとしてだけではなく、メロディーメイカーとしてのヤマグチにも注目すべきだろう。
なお彼らに興味を持った方は、下記のオフィシャルサイトにてライヴ・スケジュールも是非チェックして欲しい。
FULL SWING OFFICIAL WEB SITE
(ウチタカヒデ)
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