当時のCMもそのまま入っていて楽しい。キャス・エリオットの人徳もあってゲストも豪華だ。まずは彼女の「Dream A Little Dream Of Me」「The River Of Life」。アルト・ヴォイスの彼女はこういうジャズ・タッチ&ソウル・ミュージック風のポップ・ナンバーがよく似合う。その後に寸劇などがあり、ゲストのジョニ・ミッチェルが「Both Sides Now」を歌う。弾き語りのギターは変則チューニング、スティーブ・スティルスに習ったのかな。そしてPPMのマリー・トラヴァースが「When I Die」を歌う。その後は3人で交互にリード・ヴォーカルを取りながらの「I Shall Be Released」。ブリッジのハーモニーも素晴らしく、実に豪華な組み合わせだ。その後はキャス・エリオットと過去、マグワンプスというグループで一緒のメンバーだったジョン・セバスチャンがソロになってからの「She's A Lady」を披露する。続いてキャス・エリオットは、ジョンがラヴィン・スプーンフル時代にしばしばプレイしていたオートハープを弾きながら、ジョンと一緒にスプーンフルの「Darlin' Companion」を歌う。このシーンが個人的には一番気に入っている。その後は、冒頭でも登場したミニスカートの黒人シンガー3人をバックに従えて「California Dreamin'」「Monday Monday」のママス&パパス時代のナンバーだ。ちょっとソウルフルでなかなかいい出来だ。そして「I Can Dream Can't I」と「Dancing In The Street」。やはり「I Can Dream Can't I」のようなジャズ・タッチのナンバーはいい。クレジットはないがクロージングも「Dream A Little Dream Of Me」でしっとりと終わった。ボーナス・トラックはサミー・デービスJr.と共演した「I Dig Rock & Roll Music」。歌はパワフル、でもやり取りはコミカル、サミーは本当にエンターテナーだなあ。歌も雰囲気もいいこのDVD、おススメである。(佐野)
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2010年10月26日火曜日
☆Cass Elliot:『The Mama Cass Television Program』(Infinity/IGE2150)
1969年にABCテレビで放送されたママ・キャスことキャス・エリオットの同タイトルのスペシャル番組がそのままDVD化された。
2010年10月20日水曜日
FULL SWING:『GROOVIN'at SETAGAYA』(FULL SWING/ FSYY-002)
今回はそんなライヴ・パフォーマンスを収めた、バンド初のライヴ・アルバム『GROOVIN'at SETAGAYA』が10月10日にリリースされたので紹介したい。
彼らフルスイングはこれまでに、『SWINGIN'?SWINGIN!』(02年)、『TWO-BASE HIT!』(03年)、『OUR SONG』(09年)と3枚のオリジナル・アルバムをリリースしている他、『Mosh Pit On Disney』(04年)など話題のコンピレーション・アルバムにも参加している。現在のメンバーはメイン・ソングライターでハモンドオルガンのヤマグチの他、ギターのコウノハイジ、ドラムのスガタノリユキからなり、サポート・ベーシストとしてタカミヤヒロシが参加している。
また今作ではほぼ全編でLa Turboのタナカユウジ(各種サックス、ホーン・アレンジ)をはじめ、YOUR SONG IS GOODのハットリヤスヒコ(トロンボーン)やBonjourのナカモトコウイチロウ(テナーサックス)など複数のホーン奏者の参加により、厚みのあるサウンドでライヴを盛り上げている。
冒頭を飾るのは最新オリジナル・アルバム『OUR SONG』から「EXPRESS TRAIN」。16ビートのファンキー・サウンドとキャッチーなハモンドのメロディが渾然一体となって迫ってくる。
しっとりとしたバラードの「A RAINY SONG」では、カサイリョウのヴィブラフォンとゲストの名手エマーソン北村(exじゃがたら、ミュート・ビートetc)のハモンド・ソロの好演が光り、ヤマグチとのハモンド共演も聴きものだ。
ディズニー映画『白雪姫』の挿入歌として、またマイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスなどに取り上げられたジャズ・スタンダードの「SOMEDAY MY PRINCE WILL COME」のカバーも興味深い。ここではジャクソン5の「I Want You Back」(69年)よろしく鮮やかなカッティングのイントロから始まるポップなファンク・ナンバーに変貌している。
「OUR SONG」にも触れるべきだろう、メロウで普遍的なメロディをジャック・マクダフも顔負けのグリッサンドやコーラスなどのテクニックを駆使して奏でるヤマグチのプレイが実に素晴らしい。筆者的には今作のベスト・トラックに挙げたいほど感動的なパフォーマンスだと思う。
アルバム全体を聴いて感じたのは、ワックワックリズムバンドの様なクールなモッズ感覚より、古くはブッカーT&MG'sの『Soul Limbo』(68年)あたりを70年代ブラックミュージック経由で解釈した様な、親しみ易いブルージーさというか人間臭さが彼らの最大の魅力なのかも知れない。
またプレイヤーとしてだけではなく、メロディーメイカーとしてのヤマグチにも注目すべきだろう。
なお彼らに興味を持った方は、下記のオフィシャルサイトにてライヴ・スケジュールも是非チェックして欲しい。
FULL SWING OFFICIAL WEB SITE
(ウチタカヒデ)
2010年10月19日火曜日
ジャンクフジヤマ:『ジャンクスパイス』(Mil Music/MICL-70002)
今年4月に初のフルアルバムで実況録音盤の『JUNKTIME』をリリースしたジャンクフジヤマが、早くも次作の『ジャンクスパイス』をリリースする。 巨匠ドラマーの村上"ポンタ"秀一氏のバックアップなどもあり、国内AOR、シティポップ・シーンでは既に大注目のアーティストである彼のスペシャル・アルバムを早速紹介しよう。
前作『JUNKTIME』での熱気溢れるライヴ・パフォーマンスで、彼の虜になった音楽ファンも多いと思う。本作はその余韻となるライヴ音源3曲とスタジオ録音の新曲5曲、またボーナス・トラックとして先行配信でリリースされた2曲のインスト・ヴァージョンを収録している。
まず7月に発表された「Morning Kiss」はライヴ・レパートリーとしても人気が高く、全盛期のアース・ウインド&ファイアーなどに通じるイントロのコード進行から、左右2トラックのリズムギターのグルーヴが鮮烈に迫る(ナイトフライトの「If You Want It」~山下達郎の「SPARKLE」的)、本アルバムのリード・トラック的ナンバーだ。キャッチーなフックへと展開していく曲構成とコンテンポラリーにまとめられたアレンジングも素晴らしい。
8月に発表された「SUMMER BREEZE」はジャンク自身によるコーラス・ワークが印象的なライトメロウなラヴ・ソングで、収録曲の過半数のアレンジを手掛けている知野芳彦によるクリエイティヴなギターソロや、キーボード類の配置などポップスとしても完成度が高い。
8月に発表された「SUMMER BREEZE」はジャンク自身によるコーラス・ワークが印象的なライトメロウなラヴ・ソングで、収録曲の過半数のアレンジを手掛けている知野芳彦によるクリエイティヴなギターソロや、キーボード類の配置などポップスとしても完成度が高い。
ライヴ音源で特筆すべきは、アラン・オデイの全米でダブルミリオンのNo.1ヒットとなった「Undercover Angel」(77年)のカバーだろう。
耳の肥えたVANDA読者にはソングライターとして、ドーン(トニー・オーランドの女性コーラス隊)やキャプテン&テニールなどで知られる「Easy Evil」、シェールの「Train of Thought」(74年)やライチャス・ブラザーズ(再結成後)の「Rock And Roll Heaven」(74年)の作者として認知されていると思う。日本でも山下達郎の「Your Eyes」(『FOR YOU』収録 82年)から英語詞を手掛け、『BIG WAVE』(84年)のA面や「Love Can Go The Distance」(『ON THE STREET CORNER 3』収録 99年)などの傑作を残している。
シンガーソングライターとしてのオデイは熱心なブルーアイドソウル~AORファンやジャーナリストの尽力により、近年の再評価でリイシュー化が進んでいるようだ。そちらの作品群も入手して聴いて欲しい。
話を戻そう、ここでのライヴ・カバー・ヴァージョンではジャンクのヴォーカリストとしての力量を存分に発揮したパフォーマンスと、村上"ポンタ"秀一や天野清継など一流プレイヤーの一期一会的なプレイにより絶品というべき仕上がりになっている。
書き下ろしの「雨上がりの向こうに」はアコースティックギターを中心にした小編成の演奏で、ライト&ムーディな曲調は、どことなくビージーズの「How Deep Is Your Love(愛はきらめきの中に)」(77年)に通じる青春の煌めきを感じてしまう。ライヴでも定評のあるバラードの「曖昧な二人」はフェンダー・ローズとアコースティックギターの最小限のバッキングに、ジャンクの振り絞るようなヴォーカルが実に感動的だ。
残るライヴ音源では新曲の「Night Walker」と「Morning Kiss」が収録されており、前者はダニー・ハサウェイなどニューソウルやシカゴソウルに通じるテイストが新境地で、ここでもやはり村上"ポンタ"秀一以下名手達の極上プレイに耳がいくが、丁々発止の駆け引きを展開するジャンクのヴォーカル・パフォーマンスも負けてはいない。
「ノスタルジア」はギタリスト天野清継の演奏のみをバックに、静かに熱く歌い上げる良質なバラードでこのスペシャル・アルバムの本編ラストにふさわしい一曲だ。
アルバム全体的にはスタジオ・レコーディング音源とライヴ音源と異なった質感のサウンドが混在している訳だが、最終的にはジャンクのヴォーカルの素晴らしさにより、その違和感を与えないトータリティーを放っている。成る程それこそが彼の最大の魅力なのかも知れない。
なお本作は今月20日にタワーレコードから先行発売され、その他のネット・ショップでは11月24日からの扱いとなるので、興味を持った音楽ファンは是非チェックして欲しい。
(ウチタカヒデ)
(ウチタカヒデ)
2010年10月18日月曜日
☆John Lennon:『John Lennon』(EMIミュージックジャパン/TOCP70911~9)
ジョン・レノンのボックス・セットはもうこれで3セットだ。2番目のボックス『ジョン・レノン・アンソロジー』はリンゴに提供した「I'm The Greatest」や「Goodnight Vienna」のデモや、ジョンの未発表デモの中の超名曲「Grow
Old With Me」にジョージ・マーティンがストリングス・アレンジをオーバーダブしたテイクなど入ってほとんどが未発表トラックという「払う価値のある」ボックスだったが、今回はコレクター以外、不要の代物と言えるだろう。
というのも基本は『ジョンの魂』から『ミルク・アンド・ハニー』までが一切のボーナストラックものなく、そのまま入っているだけ。オリジナルのラインナップではない『メンローブ・アベニュー』と『ライブ・イン・ニューヨーク・シティ』は入らず、プラスチック・オノ・バンドとしての『平和の祈りをこめて~ライヴ・ピース・イン・トロント1969』も漏れるという、何とも片手落ちなものになってしまった。ここまでオリジナルの仕様にこだわるなら、せめてこの3枚くらいは入れるべきだった。そうしたら以前買ったもの処分できたのに。じゃあ、なんで買ったの?ということだが、2枚セットでプラスされたボーナスCDのためだ。ただし『シングルス』の方は「Give Peace A Chance」などの耳タコのアルバム未収録曲6曲が入っただけのどうでもいい代物。「2010年最新デジタルリマスター」とあるが、「Give Peace A Chance」や「Instant Karma」は『アメリカVSジョン・レノン』に入っていたリマスターの方がはるかに良かったなあ...。まあ、当時のシングルミックスに戻して収録したということなのだが。よって必要だったのはカップリングの『ホーム・テープス』というジョンのデモが13曲収められたCDだ。ただ、先の『アンソロジー』や『ラヴ~アコースティック・ジョン・レノン』に入っていたデモと少し違うテイクとか、初登場でもブートではお馴染みのものばかりで、新鮮味はない。未発表曲といっても「India India」程度のデモで\19800也はキツすぎる。『アンソロジー』に比べて見劣りが激しい。
というのも基本は『ジョンの魂』から『ミルク・アンド・ハニー』までが一切のボーナストラックものなく、そのまま入っているだけ。オリジナルのラインナップではない『メンローブ・アベニュー』と『ライブ・イン・ニューヨーク・シティ』は入らず、プラスチック・オノ・バンドとしての『平和の祈りをこめて~ライヴ・ピース・イン・トロント1969』も漏れるという、何とも片手落ちなものになってしまった。ここまでオリジナルの仕様にこだわるなら、せめてこの3枚くらいは入れるべきだった。そうしたら以前買ったもの処分できたのに。じゃあ、なんで買ったの?ということだが、2枚セットでプラスされたボーナスCDのためだ。ただし『シングルス』の方は「Give Peace A Chance」などの耳タコのアルバム未収録曲6曲が入っただけのどうでもいい代物。「2010年最新デジタルリマスター」とあるが、「Give Peace A Chance」や「Instant Karma」は『アメリカVSジョン・レノン』に入っていたリマスターの方がはるかに良かったなあ...。まあ、当時のシングルミックスに戻して収録したということなのだが。よって必要だったのはカップリングの『ホーム・テープス』というジョンのデモが13曲収められたCDだ。ただ、先の『アンソロジー』や『ラヴ~アコースティック・ジョン・レノン』に入っていたデモと少し違うテイクとか、初登場でもブートではお馴染みのものばかりで、新鮮味はない。未発表曲といっても「India India」程度のデモで\19800也はキツすぎる。『アンソロジー』に比べて見劣りが激しい。
CDの売り上げはピーク時の4割という有様になったレコード会社は、原価との差額でうまみが美味しいCDを買うのは小金を持っている50代近辺のオヤジ(自分のことだ!)ということで、この手の汚い商売が横行するようになった。若い連中はCDなんていうモノへのこだわりがまったくなく、データさえあればいいのだが、オヤジはモノになっていないと安心できないのだ。そこが狙い目だ。普段はamazonを使う私だが、ボックス・セットは安くない場合があるので15%を引いてくれる近くのCDショップで買う場合が多い。その店の壁にはポール・マッカートニーの『バンド・オン・ザ・ラン・スーパー・デラックス・エディション』\12000也と、フーの『ライブ・アト・リーズ40周年記念スーパー・デラックス・コレクターズ・エディション』\16000円也がユニヴァーサル・ミュージックから11月に出ると予告されていた。例によってほとんど持っているのに前者には『ワン・ハンド・クラッピング』という1974年のTV番組などが入ったDVDが付いているし、後者にはリーズ大学での収録の翌日にハルで行われたライブ『Live At Hull』が入っているから買わざると得ない。これ、その部分だけ単独で出せばそれで十分なのに、以前出した25周年記念デラックス等などに入っていたものが全てダブリになり、無駄なことこのうえない。(ほぼ同時にリリースされたローリング・ストーンズの最盛期、1972年の伝説のライブDVD『Lady & Gentleman』(WHDエンターテインメント/IEBP10052)みたいなものなら喜んで払うのに)小金を持っている奴から巻き上げようという魂胆が見え見えで最悪である。世も末だ...。でも節約してやっぱ、買っちゃうからなあ。あと、この一週間前にリリースされた『Double Fantasy Stripped Down』(TOCP70907)では『ダブル・ファンタジー』でミキシングされる前の「生声」のジョンのヴォーカルが楽しめる。これもコレクターは買うだろう。(佐野)
☆Holy Mackerel:『The Holy Mackerel』(Now Sounds/CRNOW 21)
ポール・ウィリアムスがソロ・デビュー前にグループのメンバーの一員として在籍していたホーリー・マッケレルの唯一のアルバムが初CD化された。
このアルバムでは全12曲中9曲をポールが作詞・作曲に名を連ねており、リード・ヴォーカルも取っていることから、ポール・ウィリアムスの初期作品としての位置づけが正しい。ただ、我々VANDAの人間にとっては、ロジャー・ニコルス書き下ろしの「Bitter Honey」が入っているアルバム-そういう位置づけだ。この曲は作詞にポールも入っているのだが、作曲がロジャーなのでロジャーの曲という認識になってしまう。何しろロジャーの書いた作品の中でも上位に位置する高いクオリティが「Bitter Honey」にある。牧歌的な歌いだしから見事な転調、そしてメロディの輪郭がくっきりしていてとても聴きやすい。ポールのくせのあるヴォーカルも気にならない。そしてこのアルバムには我々ロジャー・ニコルス・ファンにはたまらない贈り物が入っている。10曲のボーナストラックの内、まず5曲がシングルオンリー及びシングル用モノヴァージョン。特にシングルでしか聴くことができない「To Put Up With You」は嬉しい。この曲はポールのソロでもお馴染みなのだが、ホーリー・マッケレルのヴァージョンは貴重だ。ただしイメージは似ている。ベースパターンなんて同じに聴こえる。そして残りの5曲は未発表トラックだ。その中の「Bitter Honey」のデモが入っていて、ゆったりとしたまだストリングスやホーンの入っていないこのデモテイクはまさに同時期にロジャー・ニコルスとポール・ウィリアムスの二人で作ったデモ・アルバムそのものであり、シンプル故にさらにメロディの良さが際立っていた。そうそう、「Bitter Honey」のデモの次に入っていた「On My Way」というポール作の未発表のデモもいい曲だった。未収録なのがもったいない。なお、mackerelとはサバのことで、直訳すると「祝福されたサバ」になるが、これは「Oh My God!」などと表現。おやまあ!といったところだ。(佐野)