コンセプチャルなテクノポップ・ユニットのアーバンギャルドの女性ヴォーカリスト、浜崎容子がファースト・ソロアルバム『フィルムノワール』を4月25日にリリースする。
ヴォーカルは元よりソングライティングやアレンジ、トラックのプログラミングまで浜崎一人でこなしたこの作品は、21世紀型のシャンソン、フレンチポップといえるのでこちらでも紹介したい。
本作は浜崎がアーバンギャルド加入以前より温めてきた曲を含む4曲と、今回新たに書き下ろした2曲を収録した短編集という趣のアルバムである。
彼女がクリエイトする楽曲のサウンドはアーバンドギャルドと比較すると空間が狭くデッド感が強い分、その美意識がクリスタライズされているようだ。
また6曲中5曲の作詞を手掛けたアーバンギャルドのリーダーである松永は、“詩のボクシング・第一回選抜式全国大会”で優勝するなど詩人としての評価が高く、本作でもルイス・キャロルやフレデリック・ノット、フランス印象派から新世紀エヴァンゲリオンなど、どのモチーフも知覚を刺激して本作の世界観を強く決定している。
このようにアルバムのトータル感は、実験性を内在しながらも非常に高いもので、浜崎のプロデューサーとしての力量も感じられる。
メイントラックの「暗くなるまで待って」は映画ファンならご存知の通り、フレデリック・ノット原作でテレンス・ヤング監督(007初期3作でも知られる)が手掛けた、オードリー・ヘプバーン主演の同名サスペンス映画(67年)がモチーフになっている。
松永の描く歌詞にもティファニーやピストルの弾(『シャレード』(63年)か?)から、フェリーニやゴダールの名前まで出てきて映画マニアの筆者はニヤリとしてしまった。サウンドとしては映画づいていた頃のムーンライダーズを彷彿させ、耽美な音像に前衛的なシーケンス音が効果的に絡んでいく。
浜崎容子 暗くなるまで待って
他の収録曲でポップスとして完成度が高いと思うのは、「印象派」と「思春の森」だろう。前者はアンニュイなフレンチ経由の80年代テクノ歌謡に通じ、後者は作詞も含め浜崎の単独作品で、バロック・テイストの60年代ユーロヴィジョンの現代的解釈というべきか。
興味を持った拘り派の音楽ファンは是非入手して聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)
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