frenesi(フレネシ)はシンガーソングライター、熊崎ふさ子のソロユニット。これまでにミニアルバムとシングルを各1枚リリースし、複数のコンピレーションアルバムに楽曲を提供しており、今作『キュプラ』が初のフルアルバムとなるので紹介したい。
嘗てリンダ・ロンシュタットもカバーした、メキシコの作曲家アルベルト・ドミンゲスによるボレロの名曲、「フレネシー」からインスパイアされたというユニット名。
その「熱狂」という意味とは逆に、編み出されるサウンドは、クールな佇まいを見せたかと思うと、一転無邪気に音と戯れる少女のように変貌する。その上ウィスパー・ヴォーカルで歌われるのだから興味は尽きない。
また彼女の才能はソングライティングやアレンジに留まらず、ジャケット・アートやPV(アニメーション)の絵コンテや作画にまで及び、トータル・コンセプトをクリエイト出来る希有なアーティストとしても大いに評価したい。
では筆者が気になった収録曲を紹介しよう。
「nero」は筆者が監修した2006年のコンピレーションアルバム『Easy Living Vol.1』に提供したテイクとは別ヴァージョンで、エレピとアコーステック・ギターを中心としたデッドなサウンド。グローヴァー・ワシントンJr.風のコード進行を持つ東京感覚のボサノヴァだ。ヴィブラフォン・ソロもいいアクセントになっている。
またこの曲、全体的なコード転回や2コーラス・パートからアッパーで鳴っているテンションコード、更に音像の定位などトータル的に抜群のセンスで、見掛けのキューティーさとは裏腹に、玄人受けしそうな気配がする。彼女自身が手掛けたPVのアニメーションも必見である。
「スプロウル」や「サバラン」で聴かれるトルコやスパニッシュ感覚、ダン・ヒックス風アコースティック・スウィングの「マージナル」などアレンジング・アイディアの引き出しが多いのも彼女の強みであり、様々な音楽に耳を向けている真摯なスタンスには脱帽するばかりだ。
アルバム全体的にLess is moreな精神で音数を厳選しており、タイトル通り、高級裏地のように滑らかで肌触りがいいサウンドが堪能できる。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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