これで4回目の紹介となるBrian Wilson:『That Lucky Old Sun』。先にレビューで予測していたとおり、アルバム全体がスタジオ・ライブとしてDVD化された。
今まで多くのブライアンのライブをDVDで見ることができるが、このブライアン・バンドの実力は折り紙つきで、ハーモニー、演奏ともに完璧である。このキャピトルのスタジオAには、バンド以外にオーケストラも配置され、アルバムが寸分の狂いもなくライブで再現された。36分の映像でこれだけでも満足なのに、今回のDVDにはなんとその4倍もの特典映像が収録された。実に全部で175分、実はこのDVDの見どころはその特典映像なのである。まず68分に及ぶブライアンとサザン・カリフォリニアの音楽の歴史を、ブライアン・バンドのミュージシャン達の証言で綴った『Going Home』と題されたドキュメンタリーが見ものだ。ミッキー・ドレンツ、トニー・アッシャーなどのコメントもあり、興味深い。この映像とセットともいえるのが「Making Of That Lucky Old Sun」である。この2つの映像の中で実際のレコーディングの模様が手をとるように分かるが、ブライアンは事細かにひとつひとつ指示を出していて、その命令調の口調、自信に溢れた姿を見て、このアルバムが成功した理由が伝わってきた。60年代のブライアンの姿とダブって見える。しかしよく見るとミュージシャンの提案を受け入れている時も多く、柔軟な部分も見える。ブライアンのバンドのメンバーはみなテクニシャンであり、ハーモニーがとれるし、音楽的な素養も深い。ただし全ての決定権はブライアンにあり、メンバーはみなブライアンを尊敬しているので、どこか嬉しそうに決定を受け入れている。ブライアンのレコーディングにはみなメンバーが揃っているので同録が多く、ハーモニーはみな向き合ってその場で録音するという古典的な手法を取っているのだが、ブライアンの考えがその場その場で決まっていくので、かえって効率的だった。アトホームでもあり、メンバーの絆はこんなことろからも生まれているのだろう。このアルバムのパートナーとなったスコット・ベネットにブライアンは信頼を置いていて、1曲1曲紹介していくコーナーもあるほど。実際スコットはキーボード、グロッケン、ギターなど全て弾きこなすマルチ・ミュージシャンで、ブライアンの意図をすばやく実現してみせる才人でもあった。面白いのは「The Black Cab Sessions」と題されたリムジンの中での即興のライブで、ダリアンのおもちゃのようなキーボードをバックに「That Lucky Old Sun」と「California Girls」をア・カペラで歌うが、さすがのハーモニーに、心を奪われてしまった。あとは日産主催のYahooのライブが収められ、これも5曲ながらファンのブライアンへの質問コーナーなどもあって30分程度と内容は十分。これだけ盛りだくさんで定価で3800円、これは日本盤を買うしかないでしょう。洋盤はよほどの英語力がないとこの長尺にはついていけないからね。(佐野)
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