2009年3月31日火曜日
ELEKIBASS:『Paint it white』(WAIKIKI records/WAKRD031)
自称バブルガムバンドのELEKIBASS(エレキベース)が、約3年半振りとなるサードアルバム『Paint it white』を4月3日にリリースする。
そのサウンドからはキンクスやNRBQを彷彿させるなど、洋楽マニアの間でも評判になっている彼らの新作だけに期待が大いに持てる。
一足先に音源を入手したので早速紹介したい。
ELEKIBASS(エレキベース)は、98年にヴォーカルのサカモトヨウイチを中心に結成。2000年にはサカモト自らインディーズ・レーベル"ワイキキレコード"を設立し、これまでにフルアルバムとミニアルバムを各2枚ずつリリースしている他、数多くのコンピレーションアルバムに楽曲を提供している。 現在の正式メンバーはヴォーカルのサカモトとギタリストのカメダJPの2人で、ライヴ時にはSAKEROCKやbonjurのメンバーがサポートしている。 また国内に留まらないライヴ活動を積極的に行い、of montrealとのアメリカ・ツアーを成功させたのを皮切りに、2007年にはアセンズ・フェスでダニエル・ジョンストンと共演し、現地で多くのアーティストとの交流により海外ジャーナリストからの評判も高く、他に類を見ないインターナショナル・インディーズバンドとしても知られる。本作でもof montrealのヴォーカリスト、ケビン・バーンズの弟デイビットがジャケットのサイケデリックなイラストレーションを手掛けるなど、その関係は極めて深いのだ。
アルバムはアコースティック・スウィングの「愛だろ」ではじまる。テクニック云々というより、味のあるリズム・セクションと軽快なホーン隊のプレイに、サカモトのチャーミングなヴォーカルが乗れば唯一無二の世界が広がり、これぞエレキベース・サウンドといえる名曲なのだ。 続く「パレード」はキース・リチャーズ風ギターリフと、XTCの「Life Begins At The Hop」を彷彿させる甘美なパワー・ポップ感覚が素晴らしく、リアルタイムNW世代の筆者は唸ってしまった。 大らかなニューオリンズ・リズムをバックに、陽気さと少々のペーソスが入り交じる歌詞の「オーストラリア」や、レイ・デイヴィスmeetポール・マッカートニーな「君がくれた恋の道」も聴き逃せない曲である。しかしその若さのわりに、このソングライティングやアレンジの引き出しの豊富さには脱帽するしかない。 一転してメロトロン(プリセットはフルート)のコード・リフが喪失感を漂わせる、イノセントなバラードの「君の瞳」もいい。ウーター・ヘメルが最新作「One More Time on the Merry-Go-Round」で誤った使い方をしていたが、メロトロンはこういう曲でこそ活かされるものだ。 アルバムを締めくくる「春色ガール」は、ピアノの刻みが印象的な(トッドの「Tic Tic Tic It Wears Off」だよね?)青春のラヴソング。何気にこういう曲で締めるのが、エレキベースの隠れた奥ゆかしさなのか。 とにかくアルバム全編が、肩の力を抜いて聴けるポップス満載なので、コアな洋楽マニアから一般リスナーにも強くお勧めできる。
(ウチタカヒデ)
2009年3月22日日曜日
Radio VANDA 第108回放送リスト(2009/4/2)
Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー)の STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。
日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 の1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。
佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー)の STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。
日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 の1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。
佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。
特集:Moody Blues Solo Years
1. Tightrope...Justine Hayward「Songwriter」
2. Lay It On Me...Justine Hayward「Songwriter」
3. This Morning...Justine Hayward
& John Lodge「Blue Jays」
4. You...Justine Hayward &
John Lodge「Blue Jays」
5. Summer Breeze...John Lodge「Natural Avenue」
6. From Mighty Oaks...Ray Thomas「From Mighty Oaks」
7. Didn't I...Ray Thomas「Hopes Wishes & Dreams」
8. I Only Want To Love
You...Michael Pinder「The Promise」
9. Have You Ever Woudered...The
Graeme Edge Band featuring Adrian Gurvitz「Kick Off Your Muddy Boots」
10. In The Night Of The Light...The
Graeme Edge Band「Paradise Ballroom」
11. Forever Autumn...Justine Hayward「The War Of The Worlds」
2009年3月17日火曜日
TVサウンドトラック・大野克夫:『祭ばやしが聞こえる』(富士キネマ/FJCM-004)
そんな彼が手掛けた作品の中で、長年未CDのままであった『祭ばやしが聞こえる』(主演:萩原健一/日本テレビ系 77~78年)が約30年の時を超え、デジタルマスタリング及び紙ジャケットでリイシューされたので紹介したい。
大野克夫はゲイリー石黒&サンズ・オブ・ザ・ウエストのスティールギター奏者としてそのキャリアをスタートさせ、62年に加入したスパイダースのキーボーディストとして一躍知られる存在となった。
71年のスパイダース解散後は盟友の井上堯之と共に、沢田研二、萩原健一のダブル・ヴォーカリストを看板としたロックバンド"PYG"を結成し、グループ・サウンド以降のシーンに布石を投じた。
PYG末期に俳優として活動をはじめた萩原の推薦で、大野が最初に手掛けた劇伴は『太陽にほえろ』である。因みに当初の演奏はPYG名義で、ファンキーなベース・プレイは後に俳優となる岸部修三(=岸部一徳,EXタイガース)によるものだ。
PYG解散後の大野は井上堯之と共に、ソロ・シンガーに転じた沢田研二の楽曲作曲とバック演奏を担う傍ら、TVドラマを中心に劇伴を手掛けていく。『太陽・・』以降は『傷だらけの天使』『寺内貫太郎一家』『悪魔のようなあいつ』と井上堯之バンド名義だが、編曲は主に大野によるものだ。
今回取り上げる『祭ばやしが聞こえる』では大野が単独で作編曲を手掛け、井上堯之バンドから発展したNadjaバンドと共に演奏を担当している。このNadjaバンドは当時、萩原がシンガーとしてのレコーディング時にもバッキングを務めていたと思われる。
本作で最も知られる曲は、タイトル・ソングとして劇中とエンディングで使用された「祭ばやしが聞こえる」だろう。元々はインストのテーマ曲「ドリームレーサー」から発展させたものだが、萩原の強い要請により東海林良作の歌詞を加え、ソロデビュー直後の柳ジョージ(後期ゴールデンカップスのメンバーだった)がヴォーカルを担当している。
そしてこの曲こそ、日本におけるブルーアイドソウルの一つの完成形と思わせる素晴らしさなのだ。かのバーナード・パーディのハイハット・ワークを彷彿させるドラミング(田中清司だろう)とレイドバックしたボリューム奏法のギタープレイ(恐らく速水清司)が印象的で、大野自身による隙間を活かしたフェンダーローズのフレージングとフェイザーをかましたソリーナのサウンドに、柳の一級のヴォーカルが乗れば何も言うことはない。
本曲は後に柳ジョージ&レイニーウッドの『TIME IN CHANGES』に再演版が収録されたが、こちらのサウンドトラック・オリジナルヴァージョンの方が完成度が高い。
劇伴タイプのインスト曲は、メインテーマの「ドリームレーサー」とメロウ・ソウル系の「ストレンジャー」を各シーンに合わせたアレンジの異なるヴァージョンを計11曲収録している。
「祭ばやしが聞こえる」とほぼ同じオケの「ドリームレーサー III」、カウベルとドラム・トラックのブレークビーツ風「ドリームレーサー IV」、アナログシンセサイザーの名器アープ2600を多用した「ストレンジャー III」、トランペットをフィーチャーしてバラードに仕上げた「ストレンジャー IV」等々。こちらのサウンドはジャズ系フュージョンというより、むしろザ・セクション(ジェームス・テイラーのバック・バンド)あたりに近い。生粋のバンドマンである大野ならではのサウンドといえるだろう。
ドラマとしては『傷だらけの天使』や『前略おふくろ様』など一連の萩原主演作品より印象が薄い感があるが、オールロケの35mmフィルム撮影による富士吉田の町を背景に、競輪選手の挫折と人間模様を描いた内容は格別の物であった。
筆者は再放送にてその素晴らしさを知ったのだが、今でも思い出したように昔録画した20話分程を観返すことがあることがある。
こちらも早期のDVD化を強く希望している。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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2009年3月2日月曜日
☆Brian Wilson:『That Lucky Old Sun』(EMIミュージックジャパン/TOBW3363)DVD
これで4回目の紹介となるBrian Wilson:『That Lucky Old Sun』。先にレビューで予測していたとおり、アルバム全体がスタジオ・ライブとしてDVD化された。
今まで多くのブライアンのライブをDVDで見ることができるが、このブライアン・バンドの実力は折り紙つきで、ハーモニー、演奏ともに完璧である。このキャピトルのスタジオAには、バンド以外にオーケストラも配置され、アルバムが寸分の狂いもなくライブで再現された。36分の映像でこれだけでも満足なのに、今回のDVDにはなんとその4倍もの特典映像が収録された。実に全部で175分、実はこのDVDの見どころはその特典映像なのである。まず68分に及ぶブライアンとサザン・カリフォリニアの音楽の歴史を、ブライアン・バンドのミュージシャン達の証言で綴った『Going Home』と題されたドキュメンタリーが見ものだ。ミッキー・ドレンツ、トニー・アッシャーなどのコメントもあり、興味深い。この映像とセットともいえるのが「Making Of That Lucky Old Sun」である。この2つの映像の中で実際のレコーディングの模様が手をとるように分かるが、ブライアンは事細かにひとつひとつ指示を出していて、その命令調の口調、自信に溢れた姿を見て、このアルバムが成功した理由が伝わってきた。60年代のブライアンの姿とダブって見える。しかしよく見るとミュージシャンの提案を受け入れている時も多く、柔軟な部分も見える。ブライアンのバンドのメンバーはみなテクニシャンであり、ハーモニーがとれるし、音楽的な素養も深い。ただし全ての決定権はブライアンにあり、メンバーはみなブライアンを尊敬しているので、どこか嬉しそうに決定を受け入れている。ブライアンのレコーディングにはみなメンバーが揃っているので同録が多く、ハーモニーはみな向き合ってその場で録音するという古典的な手法を取っているのだが、ブライアンの考えがその場その場で決まっていくので、かえって効率的だった。アトホームでもあり、メンバーの絆はこんなことろからも生まれているのだろう。このアルバムのパートナーとなったスコット・ベネットにブライアンは信頼を置いていて、1曲1曲紹介していくコーナーもあるほど。実際スコットはキーボード、グロッケン、ギターなど全て弾きこなすマルチ・ミュージシャンで、ブライアンの意図をすばやく実現してみせる才人でもあった。面白いのは「The Black Cab Sessions」と題されたリムジンの中での即興のライブで、ダリアンのおもちゃのようなキーボードをバックに「That Lucky Old Sun」と「California Girls」をア・カペラで歌うが、さすがのハーモニーに、心を奪われてしまった。あとは日産主催のYahooのライブが収められ、これも5曲ながらファンのブライアンへの質問コーナーなどもあって30分程度と内容は十分。これだけ盛りだくさんで定価で3800円、これは日本盤を買うしかないでしょう。洋盤はよほどの英語力がないとこの長尺にはついていけないからね。(佐野)
2009年3月1日日曜日
Minuano:『Love Logic』(MOTEL BLUE/MBRD-20)
このMinuanoは、Lampをはじめ数々のレコーディングでパーカッショニストとして活動している尾方伯郎のソロ・ユニットで、既にユニットMundo Novoとしてもアルバムをリリースしている彼の新たな世界観を結晶させたものである。全てのソングライティングとアレンジも彼自身によるものだ。
3月4日にリリースされる本アルバムの音源を一足先に入手して聴いてみたが、単に"アナザー・サイド・オブ・ランプ幻想"という訳ではなかった。
そもそもこのユニットのサウンドは、尾方がLampとの活動から触発されて制作したということで、多分にその影響を受けているのでは?という先入観を持って聴いてみたのだが、主に彼が追求している70年代ジャズ/クロスオーバー/ブラジリアン・フュージョンのエッセンスが所々にちりばめられ、ポップスとしても一曲一曲が丁重にプロデュースされている。
古今東西国内外を問わず、プレイヤー指向の強いミュージシャンがヴォーカリストをフューチャーさせたユニットのサウンドとは一線を画し、きちんと「歌モノ・アルバム」として機能していることに非常に感心させられたのだ。
また90年代からSpiritual Vibesのパーカッショニストとして活動してきた尾方であるが、本作ではキーボードやドラムス、エレキ・ベース、コーラスまでも担当しマルチプレイヤー振りを発揮しているのも特筆すべき点だろう。
洗練されたボッサ・フュージョン風の「レモン哀歌」、曲構成など和製ソフトロックとして完成度の高い「果てるともなく続く宙」、Lampの「夏に散らした小さな恋」に通じるヤング・ブルーアイドソウルの「恋人たちの雨」、スキャットではじまるアッパーなジプシー・ルンバ風の「裸足のシルエット」など聴きどころは多い。
榊原のヴォーカルも曲調とサウンドに合わせて、スタイルを絶妙にコントロールしており、曲によってフローラ・プリムからThird Wave辺りを彷彿させる瞬間がある。『ランプ幻想』で聴かれたアーティスティックな主張はないが、アルバム全体的にコンテンポラリーなサウンドで若いリスナーにも非常に聴き易いアルバムだと思う。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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