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2008年12月24日水曜日

☆Various:『三沢郷大全』(コロムビア/COCP35285-6)

濱田高志さんがプロデュースするTVAGEシリーズの新作は作曲家、三沢郷の作品集である。

この名前を聴けば私はすぐに「デビルマン」!と反応してしまう。TVシリーズの「デビルマン」を愛してやまない私にとって(マンガはもちろん名作だが、惚れた女のためだけに闘うアニメ版の不動明の姿勢が大好きだからだ。「人類のため」なんて崇高な目的はどうにも信用できないし、「国のため」なんてきな臭い理由も嫌。やはり惚れた女のため、大事な家族のため、これだけが真実だ)オープニングの歌を作った三沢郷の名前は、忘れるはずもない。あの緊張感のあるオープニングの歌は、哀調を帯びた都倉俊一のエンディングテーマと合わせて、TVアニメ主題歌のベスト10に必ず入る傑作である。その他は「ミクロイドS」。オープニングテーマの冒頭のあの不安なコード進行が実に印象に残る。そして「エースをねらえ!」。止め絵がメチャクチャ多かった初代「エースをねらえ!」だが、オープニングの歌はキャッチーかつ流麗で好きな曲のひとつだった。(蛇足だが同じ出崎統=杉野昭夫という同じ制作スタッフで後に作られた「劇場版エースをねらえ!」は日本アニメーション史上に残る永遠の名作なので、見たことがない人は必ず見て欲しい)しかし自分の中で三沢郷の知識はこれしかなかった。この濱田さんの制作した作品集の冒頭は「サインはV」、おお、これも三沢郷だったんだとビックリ。久しぶりに聴いてみると弾むリズムが心地よい快作である。そして「アテンションプリーズ」、キャッチーな曲で、これも傑作だ。パンキッシュなアニメの「ジャングル黒べえ」もそうだったんだ、エンディングの「ウラウラ・タムタムベッカンコ?」はよく聴いてみると「ミクロイドS」と繋がっていくな。あの勇壮な特撮の「流星人間ゾーン」も三沢郷だったのか。アニメ版「月光仮面」は、マイナー、メジャーの切り替えが実に巧みでこんなスマートな曲だったのかと実に楽しく聴くことが出来た。ディスクは2枚あり、2枚目は企画もののシングルやアルバムの曲が中心に構成されている。中には伊東ゆかりのアルバム収録曲もあるが、J.ガールズのアルバムなんて無名デュオに三沢流のジャパニーズ・ポップスを歌わせたものだ。CM用に録音された「カペラのテーマ」や、競合盤となった「エベレスト」などが聴きものだが、007シリーズをモチーフに書き下ろしたジャズタッチのインスト集や、あの子供心に緊張感で手に汗を握った傑作SF映画「アンドロメダ...」と同モチーフのアンドロメダストレインのテーマ」なんていうものもあった。後者は牧歌的なインストで映画のイメージとはまったく違うなと思ったら、まだ映画化される前に書いた曲だという。そしてこの曲とカップリングはエロい英語のナレーションを被せた「白い闇の彼方に」という曲で、このシングルはエロジャケ好きなら大喜びのキワモノだった。三沢郷本人は昨年他界してしまったが、濱田さんが往復書簡を交わしてしたため、謎のベールに覆われていた三沢郷という人物像が初めて明らかになった。もちろん本邦初公開の貴重な情報である。東京大学時代に音楽以外で食っていく道がないと悟った三沢は独学で音楽を勉強、その後、初見で歌えることを誇りにしていたフォー・コインズというヴォーカル・グループの一員として12年を過ごす。メンバー一人の事故死でグループを解散したあと作曲家に転向する。しかし日本での作曲家としての活動は7年だけで、その後はハワイに移住、その後はずっとアメリカでCMやライブ・ショー、ミュージカルの作曲家として活動していた。日本で作曲したのはたったの7年しかないため、これだけ曲が少ないのだ。しかしそれまで作曲をしたことがなかったというのに、いきなり書き始めてこれだけの曲が書けるのだから恐れ入る。これらのインタビューも面白いので、是非、入手して欲しい。

(佐野)
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