フーの初単独コンサートにタイアップしたかのように、フーの充実した2枚のDVDが同時にリリースされた。
まずは前者の紹介から。これは1977年、キース・ムーンのほぼ最後のライブを収録したものである。ピートとロジャーの服装を見て分かるが、『The Kids Are Alright』の名演であるシェパートン・フィルム・スタジオの時「Baba O'Riley」「Won't Get Fooled Again」の時とまったく同じであり、あの緊張感溢れる高いテンションはここでも見事に保たれている。「Won't Get Fooled Again」の最後のロジャーのシャウト、ピートの大ジャンプは迫力満点、ピートはその後、マイクスタンドにハイキックをかましていて、ロック本来の魅力である暴力的なまでのエネルギーに圧倒されてしまう。カッコいい!演奏では「My Wife」がメンバーの演奏テクニック全開で存分に楽しめる。「Smoke On The Water」風になった「I'm Free」のギターも面白い。完成したばかりの「Who Are You」が聴きごたえ十分。曲は全15曲、約1時間の収録でちょっと短い。しかしボーナス・ディスク、こいつが凄い。こちらは1969年、ロンドン・コロシアムでのライブが71分収録されていて、『Tommy』を出したばかりの乗りに乗った最盛期のフーのライブが楽しめる。ピートとロジャーの服はウッドストックと時と同じ、音のバランスはこちらの方がずっといい。少々ヴォーカルにエコーがかかり過ぎの感はあるが、音がスカスカだったり、ピートのギターの音が小さすぎたりする60年代のライブの中ではいい出来だ。全体的な内容的もキルバーンに比べこちらの方が演奏、歌ともにソリッドで、個人的にも好きなのだが、いかんせんカメラが悪すぎる。冒頭の「Heaven & Hell」なんて名演なのにカメラはピンボケのまま。2曲目からピントが合うのだが、カメラワークがあまりに工夫がないため、それでボーナス・ディスク扱いになってしまったようだ。しかし内容はいい。「Tattoo」「I'm A Boy」「Happy Jack」なんて実にうれしい選曲だ。このライブは『Tommy』のライブでの初演になるのだが、特に嬉しいのは数あるフーのナンバーの中でも私が最も好きな「Go To The Mirror」のライブが見られたことだ。1970年のワイト島のライブより出来がいい。「See Me Feel Me」のハーモニーもきれいだし、本当に堪能させてもらった。この輸入盤、2枚組でたった2500円、おまけにリージョン・フリー、これは即、買いである。日本盤もいずれ出るだろうが、まったく必要ない。
後者はフーのヒストリーである。演奏は貴重なシーンが挟まるのだが、それも一部だけで不満が残る。マーキーのライブなんて1曲まるごと見たかった。ストーリーはピートとロジャーの話を中心に当時のスタッフ、家族(ジョンの最初の奥さんが出てきたが、太ったすごいおばさんで母親かと思った...)、そしてスティングなどのミュージシャンのインタビューで綴っていく。嬉しいのは、クリス・スタンプ、シェル・タルミー、グリン・ジョーンズといった伝説の人物の証言が聞けたことだ。まだみな健在でよかった。ただし英語力がないので内容はよく分からず、こちらは日本盤を待とう。嬉しいのはボーナス・ディスクで、本編では断片で入っていたハイ・ナンバース時代のライブが2曲、丸ごと楽しめた。「Ooh Poo Pah Doo」「I Gotta Dance To Keep From Crying」の2曲で、まだ本当に初々しい4人のメンバーに釘付けになってしまう。画質もいいし、音質も十分だ。あと、メンバー4人のミニ特集?があるのだが、その中で、他のミュージシャンがまず普通にギターのコードを弾き、そして「I Can't Explain」に合わせてドラムを叩いたあと、それぞれピート風のコード・カッティングはこれ、キース風にドラムを叩けばこれ、と披露してくれる部分が面白かった。ジョンのベースの比較は出てこなかったが、フーのメンバーがいかに独創的だったのか、よく分かる。なおこちらの輸入盤はリージョン1である。
ところで私はフーのコンサートは初日の横浜アリーナに行ったのだが、冒頭のピートの「Hello New York!」のギャグには、みんなブーイングで答えて欲しかった。あれじゃあピートはすべった感じ...。でも年をとるほどピートは渋さがましてカッコよくなるな。会場の外で、ピートがよく来ていたユニオンジャックのジャケットで歩いている人がいたので、おっと思ったが、近づくと頭は見事なてっぺんハゲ。昔から好きだったんだろなー好きでハゲたわけじゃないもんな、と同じ中高年のロックファンの悲哀をちょっと感じてしまった。みんながんばろうぜ。Rock bands will come,Rock bands will go,but Rock'n'Roll is gonna go on forever!
(佐野)
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2008年11月28日金曜日
2008年11月20日木曜日
Radio VANDA 第 104 回放送リスト(2008/12/04)
Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー)の STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。
日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 の1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。
佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー)の STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。
日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 の1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。
佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。
特集:The Harmony Grass
1.
I Remember
2.
Move In A
Little Closer Baby
3.
Happiness Is
Toy Shaped
4.
What A Groovy
Day
5.
Summer
Dreaming
6.
My Little
Girl
7.
I've Seen To
Dream
8.
Good Thing
9.
I Think Of
You
10. Teach Me How
11. (It Ain't Necessarily)Byrd Avenue
12. Chatanooga Choo Choo
13. It Takes A Lot Of Loving(from Take A Girl Like You。Original
Version。未CD化)
14. I Can Guarantee You Love...Tony Rivers The Castaways
15. The Grass Will Thing For You...Tony Rivers The Castaways
16. Summer Dreaming(Early Version) ...Tony Rivers The
Castaways
17. Move In A Little Closer Baby(Radio Live Recording)
2008年11月13日木曜日
Lamp:『ランプ幻想』(IN THE GARDEN/XNHL-16001)
純粋なオリジナルアルバムとしては、2005年の三作目『木洩陽通りにて』から3年半振りとなるのだが、実質的なレコーディング期間が十数ヶ月に渡った成果が、こうして聴けると思うと感慨深いものである。
僕が音源をもらったのは9月半ば頃だったが、今でも手放せなく聴き続けており、聴き込む毎に新しいLampの世界に引き込まれている。とにかく良質なポップスを求めている音楽ファンは、この前文を読んだだけで直ぐに予約すべきだ。
まず本作『ランプ幻想』の大きな特徴は、アルバム一枚を通したトータル性を強く感じさせることだろう。青春の幻想と喪失感を描いた11曲の物語の1コマ1コマが、一つの大きなストーリーへと紡がれているようである。
アルバムの幕開けとなる染谷作の「儚き春の一幕」から、永井作の「密やかに」と「夕暮れ」への流れはストリングス・アレンジの施し方を含め、コリン・ブランストーン『One Year』を思わせるトータル感が美しく心地よい。特に「儚き春の一幕」は、コーラスのリフレインがない複数のパートから構成されたクラシックのソナタ風で、作者の染谷によるとこの曲の構成は、ブラジルのミナス系音楽の影響が強いとのことだが、印象的なカウンターラインを奏でるアコーディオンの音色も相まって、画も知れぬサウダージ感を与えている。
アルバム中最も洗練されたシティポップの「雨降る夜の向こう」は、イントロから高い完成度を誇っており、ヴァースへ掛けての不思議なムードは、スティーリー・ダンの「The Fez(トルコ帽もないのに)」もかくやと思わせるほど格別である。
まず本作『ランプ幻想』の大きな特徴は、アルバム一枚を通したトータル性を強く感じさせることだろう。青春の幻想と喪失感を描いた11曲の物語の1コマ1コマが、一つの大きなストーリーへと紡がれているようである。
アルバムの幕開けとなる染谷作の「儚き春の一幕」から、永井作の「密やかに」と「夕暮れ」への流れはストリングス・アレンジの施し方を含め、コリン・ブランストーン『One Year』を思わせるトータル感が美しく心地よい。特に「儚き春の一幕」は、コーラスのリフレインがない複数のパートから構成されたクラシックのソナタ風で、作者の染谷によるとこの曲の構成は、ブラジルのミナス系音楽の影響が強いとのことだが、印象的なカウンターラインを奏でるアコーディオンの音色も相まって、画も知れぬサウダージ感を与えている。
アルバム中最も洗練されたシティポップの「雨降る夜の向こう」は、イントロから高い完成度を誇っており、ヴァースへ掛けての不思議なムードは、スティーリー・ダンの「The Fez(トルコ帽もないのに)」もかくやと思わせるほど格別である。
またこの曲同様にリズミックで円熟した演奏が聴けるのが、後期ビートルズやポール・サイモン風の「白昼夢」だ。染谷による独特な歌詞の世界や、永井と榊原のダブル・ヴォーカルの感触は『風街ろまん』(はっぴいえんど)あたりにも近い。
Lampのカラーの一つである、女性ヴォーカリスト榊原のナイーヴな魅力は、「ゆめうつつ」や「日本少年の夏」(作詞も榊原)で聴けるだろう。オリエンタルな「二十歳の恋」も含め、このような世界観は彼女のヴォーカルなしではありえない。
めずらしくストレートなバラードで、永井がリードを取る「冬の影は哀しみ」(染谷作)は、ジョージ・ハリスンの「Isn't It A Pity」あたりがモチーフになっていそうだが、かつての「ひろがるなみだ」(『恋人へ』収録、永井作)を思い起こさせる青春の喪失感に泣けてくる。
アルバム全体を通して感じたのは、染谷と永井のソングライティングから醸し出される60~70年代洋楽ポップス(そういえば、ジャケットはトッドの『Something/Anything?』を和風にした感じだ)の gene(遺伝子)から得られるカタルシスと、日本語の美しさを秘めた繊細な歌詞の世界感だ。 また綿密に練られたアレンジと、レコーディング(アナログ録音らしい)やミキシングのレベルの高さもさることながら、永井と榊原による美しいコーラス・ワークが、Lampサウンドの核となっているのも聴き逃せないポイントである。
さて本作を聴くまで、本年度の個人的ジャパニーズ・ポップス・ベスト1は、以前紹介したマイクロスターの『microstar album』だと確信していたが、ここにきて順位が変わりそうだ・・・。
アルバム全体を通して感じたのは、染谷と永井のソングライティングから醸し出される60~70年代洋楽ポップス(そういえば、ジャケットはトッドの『Something/Anything?』を和風にした感じだ)の gene(遺伝子)から得られるカタルシスと、日本語の美しさを秘めた繊細な歌詞の世界感だ。 また綿密に練られたアレンジと、レコーディング(アナログ録音らしい)やミキシングのレベルの高さもさることながら、永井と榊原による美しいコーラス・ワークが、Lampサウンドの核となっているのも聴き逃せないポイントである。
さて本作を聴くまで、本年度の個人的ジャパニーズ・ポップス・ベスト1は、以前紹介したマイクロスターの『microstar album』だと確信していたが、ここにきて順位が変わりそうだ・・・。
2008年11月4日火曜日
☆Hollies:『beat beat beat』(ABC/ABCVP106DVD)
先にスモール・フェイセス、キンクスで紹介したドイツのTV番組、『beat beat beat』のホリーズの登場DVDを紹介しよう。1967年1月の収録で、当然リアル・ライブ。4曲しか収録されていないがそのクオリティは十分過ぎてお釣りがくる。
まず「Stop
Stop Stop」だが、トニー・ヒックスの12弦のエレキ・ギターに乗ってきれいにハーモニーが重なり、スタジオ・バージョンよりビートがあって楽しめる。次の「On
A Carousel」の冒頭はグラハム・ナッシュのソロ、画面にナッシュが大写しになるとファンとして嬉しくなってしまう。歌いながら巧みにリフを入れるヒックスのギターにも注目。いいライブだ。そして大好きな「Bus
Stop」。メロディも歌詞もいいし、名曲中の名曲だ。ライブでもクオリティは落ちず、間奏はヒックスとナッシュのツイン・リードで決めていた。それにしてもこの曲の歌詞はとても分かりやすい英語なので、このロマンチックな曲を聴かせて英語の勉強をすればきっと英語の歌を楽しく聴けるようになるんじゃないかとずっと思っていた。でも肝心な自分の子供には忘れちゃった...。最後は「Instrumental」とその名の通りのロックンロールのインスト。ヒックスのギター・ソロがカッコいい。ホリーズはテクニシャン揃いという訳ではないが、ライブでもアンサンブルがとれたバンドだなと、その実力を再認識できた。(佐野)