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2007年12月22日土曜日

GUIRO:『Album』 (8(eight)/EIT-001)

 

GUIRO(ギロ)は97年に結成され、現在は4人で活動するユニークなポップ・バンドである。
2003年から2005年に掛けて4枚のシングルをリリース、2枚のコンピレーション・アルバムに曲を提供するなどマイペースながら作品を発表し続けてきた。そして本作が初のフルアルバムとなるのだが、これが一筋縄ではいかない拘りが詰まった素晴らしさなのだ。

 

プロモーション資料のキャッチコピーでは「シュガーベイブを初めて聴いた時の衝撃!」とあるのだが、嘗ての彼等ほどポップスというフォーマットに固執している訳ではなく、飄々とジャンルのボーダーを飛び越える身軽さが現代の新鋭アーティストを象徴していて実に興味深い。

1曲目の「あれかしの歌」 はハーモニーにハービー・ハンコック的センス(Third Wave経由か?)が感じられ、アレンジ上異質なはずであるシーケンス音(YMO「Pure Jam」的)も妙にリズム・セクションに溶け込んでいる。また手練なキーボーディストによるインプロ風ソロもいいアクセントになっていて、曲全体が絶妙なバランスの上で構築されている。
続く「墜落という名のジャム」ではアッパーなジャズ・ファンクをベースにしながら、思春期の妄想を紡いだような歌詞の世界観を起伏に富んだメロディ(BLOOD, SWEAT &TEARSの「Spinning Wheel」みたいだ)で歌い上げる。一聴してリリカルな「風邪をひいたら」でもトッド・ラングレンの「The Night The Carousel Burnt Down」を思わせる独特な雰囲気の曲で、妙に耳に残るコード進行とメロディを持っていて、彼等の美学が生きているのだ。
アルバム中最も惹かれた曲は「ハッシャバイ」である。細野晴臣の「薔薇と野獣」からトロピカル3部作と連なる世界観を経由したニューオリンズ・ミュージックや沖縄音楽のエッセンスが、絶え間なく打ち寄せる波のように耳に迫ってきて、嘗て多くのアーティストが挑戦した孤高の峰(細野の世界観)の頂上に唯一近付いたとさえ感じさせる希有な曲といえるのだ。
個人的にも2007年のベストソング候補であり、音源入手後から耳にしない日の方が少ない程もう手放せない1曲なのである。
(ウチタカヒデ)

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