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2007年12月23日日曜日

☆Glen Campbell:『Good Times Again』(TimeLife/M19526)DVD

久々に素晴らしい音楽DVDに出会った。このDVDはグレン・キャンベルが1969年から1972年にCBSテレビで担当した『Good Times Hour』のハイライトを集めたもので、現在のグレンの回想をはさみながら、ソロで5曲、デュエットで11曲、全て完奏し、その間はナレーションもスーパーも被せないという音楽ファンにとって最良の編集がなされている。時代といい構成といい、『Andy Williams Show』を見ているかのようで、何だかとても嬉しい。もっとも女性とのデュオでは、恋人どうしかのように振舞うアンディのようにはいかないが。「Let It Be Me」を歌うときにボビー・ジェントリーにしっかり抱きつかれるが、なんだかグレンは慣れない様子だった。でもリンダ・ロンシュタットとの「Caroline In My Mind」、シェールとの「All I Really Want To Do」、アン・マレーとの「Don't Think Twice,It's All Right」はグレン・キャンベルのギターの腕が冴え渡り、アコギ一本だけで雰囲気を明るく楽しいものに変え、見事に女性シンガーとのデュオをこなしている。ソロでは名曲連発で、「Wichita Lineman」、「For Once In My Life」、「Galveston」、「By The Time I Get To Phoenix」、「True Grit」はその曲の良さ、グレンの歌の上手さ、そしてそのギター・テクニックの見事さに、耳も目も釘付けになってしまった。さすが元スタジオ・ミュージシャン、元ビーチ・ボーイズだ。男性陣はレイ・チャールズ、リッキー・ネルソン、ロジャー・ミラー、B.J.トーマス、ジョニー・キャッシュ、ウィリー・ネルソン、ジョン・ハートフィールドという面々で、大物が多いせいか、グレンはメインより少し引いた立ち居地でデュオを担当していた。ボーナスマテリアルでは、ジミー・ウェッブとの名曲の数々に対するエピソードや、ビーチ・ボーイズ参加の時のエピソードなど披露され、これも興味深い。全てが最高のDVDだ。Web VANDAでのYou Tubeアクセス・ランキングはアンディ・ウィリアムス、ビーチ・ボーイズ、フォー・シーズンズに次いで堂々4位にグレン・キャンベルがつけており、グレン・キャンベルのファンは多いはず。絶対購入しよう。
(佐野)
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2007年12月22日土曜日

GUIRO:『Album』 (8(eight)/EIT-001)

 

GUIRO(ギロ)は97年に結成され、現在は4人で活動するユニークなポップ・バンドである。
2003年から2005年に掛けて4枚のシングルをリリース、2枚のコンピレーション・アルバムに曲を提供するなどマイペースながら作品を発表し続けてきた。そして本作が初のフルアルバムとなるのだが、これが一筋縄ではいかない拘りが詰まった素晴らしさなのだ。

 

プロモーション資料のキャッチコピーでは「シュガーベイブを初めて聴いた時の衝撃!」とあるのだが、嘗ての彼等ほどポップスというフォーマットに固執している訳ではなく、飄々とジャンルのボーダーを飛び越える身軽さが現代の新鋭アーティストを象徴していて実に興味深い。

1曲目の「あれかしの歌」 はハーモニーにハービー・ハンコック的センス(Third Wave経由か?)が感じられ、アレンジ上異質なはずであるシーケンス音(YMO「Pure Jam」的)も妙にリズム・セクションに溶け込んでいる。また手練なキーボーディストによるインプロ風ソロもいいアクセントになっていて、曲全体が絶妙なバランスの上で構築されている。
続く「墜落という名のジャム」ではアッパーなジャズ・ファンクをベースにしながら、思春期の妄想を紡いだような歌詞の世界観を起伏に富んだメロディ(BLOOD, SWEAT &TEARSの「Spinning Wheel」みたいだ)で歌い上げる。一聴してリリカルな「風邪をひいたら」でもトッド・ラングレンの「The Night The Carousel Burnt Down」を思わせる独特な雰囲気の曲で、妙に耳に残るコード進行とメロディを持っていて、彼等の美学が生きているのだ。
アルバム中最も惹かれた曲は「ハッシャバイ」である。細野晴臣の「薔薇と野獣」からトロピカル3部作と連なる世界観を経由したニューオリンズ・ミュージックや沖縄音楽のエッセンスが、絶え間なく打ち寄せる波のように耳に迫ってきて、嘗て多くのアーティストが挑戦した孤高の峰(細野の世界観)の頂上に唯一近付いたとさえ感じさせる希有な曲といえるのだ。
個人的にも2007年のベストソング候補であり、音源入手後から耳にしない日の方が少ない程もう手放せない1曲なのである。
(ウチタカヒデ)

2007年12月20日木曜日

Radio VANDA増刊 MUSIC FILE新春放談2008(2008/1/1)

MUSIC FILE新春放談2008(2008/1/1

 

(担当:ゲイリー芦屋)

. Minamahal,Sinasamba...The Ambivalent Crowd

2.I'm Waiting For A Bus...Birgit Lystager

(担当:佐野邦彦)

3.I'm Gonna Change...Montanas

4.Sunny...Neil Sedaka

(担当:濱田高志)

. Talk It Over In The Morning...Roger Nichols & The Small Circle Of Friends

6. Love Is A Gamble...Jackie Lee

(担当:宮治淳一)

7. When I Was 15...Mary Sneed

8. A House Is Not A Home...Frank Cunimond Trio

2007年12月15日土曜日

Radio VANDA 第 93 回選曲リスト(2008/1/3)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集:Best Of Groovy Music Part1(洋楽編)


1.Pleasant Valley Sunday...Monkees

2.Telstar...Tornadoes

3.Dawn...Four Seasons

4.Darlin'(Live In London)...Beach Boys

5.Summer In The City...Lovin' Spoonful

6.Little Billy...Who

7.Music To Watch Girls By...Andy Williams

8.Mrs.Robinson...Simon & Garfunkel

9.Jumpin' Jack Flash...Rolling Stones

10Get Back(Let It Be Naked)...Beatles

11Temptation Eyes...Grass Roots

12PrologueTwilight...ELO

13Volare...Gipsy Kings

14Danza Pitual Del Fuegi(火祭りの踊り)...Arthur Rubinstein

 

 


2007年12月8日土曜日

roly poly rag bear :『hana』(abcdefg*record/a-g042) 五十嵐誠インタビュー

 
 WEB VANDAでは新作毎に紹介してきた男女二人のソフトロック・ユニット、roly poly rag bear。筆者は2003年に彼等の「the melody goes on」を聴いて以来、その素晴らしさを各所で語ってきたのだが、アップトゥデイトな音作りには目も繰れず、ひたすらポップスのコアな部分を追求しているスタンスは、音楽家として本来あるべき姿ではないだろうか。
 そんな彼等が3年振りのオリジナルアルバム『hana』をリリースした。今回は14曲を収録した初のフルアルバムということで、その意気込みはこれまで以上に感じられる。

 これぞroly polyサウンドというべき、ハートフルなシャッフルナンバーの「brand new day」から、牧歌的なオーケストレーションがしみじみと心に響き渡る「marmalade」まで、無垢なメロディラインとコーラス、ソフティなサウンドが織りなす詩情溢れる世界観は、現代における正統派ソフトロックの申し子といえるのではないだろうか。
 当の本人達はいつもながらマイペースで飄々としているようだが、実際の心境はどうなのか、リーダーの五十嵐誠君に聞いてみた。


●オリジナルは3年振りで初のフルアルバムのリリースとなりますが、その間に台湾最大の野外フェスティバルへの出演や別ユニットでのリリースがありました。そういった活動を通じて、作品作りにフィードバック出来たことはありましたか? 

五十嵐:別ユニットのpasteboardの活動に関して言うと、cubase(注:シーケンスソフト)に慣れたというか(笑)。編集の仕方やミックスとかがちょっとずつ分かってきたので若干自信がついた気がします。
台湾ではサポートメンバーに参加してもらって、バンドで演奏するためにバンド用のアレンジを考えたこともあり、そのアレンジが反映されている曲もあります。あとバンドは楽しいなあって、改めて思いました。


●その台湾での"formoz festival"でのエピソードなどはありますか? 

五十嵐:夏フェスは出るのはもちろん見るのも初めてだったのでとても楽しかったです。ステージが高台のところにあって風がいい感じに涼しくて、音響も抜群で、演奏していてとても気持ち良かったです。
それと台湾のお客さんの反応を見て、本当に「音楽は国境を越えるんだ」ってことが実感できたのは凄く大きかったと思います。



●今回の『hana』の曲作りやレコーディングで一番心掛けた点はなんでしょうか?

五十嵐:曲作りに関しては、原点回帰というか。一枚目の「john's running」の曲を録り直すというのがもともとあって。それプラスrprbらしいものというか、バンドを始めた当時にやりたかった感じの音、よりソフトロックで歌謡曲なものでアルバムを作りたいと思っていました。
録音に関しては丁寧に録るように心掛けました。というのも一枚目の録音が雑だったので(笑)。リベンジです。


●自分の中でroly poly rag bearとして最も大事なことは?

五十嵐:うーん(笑)。あまり考えたことがないのですが、「普通」でしょうか。奇をてらわず。普通に良い曲をシンプルに。シンプルにしか出来ないんですけど(笑)。
やはりシンプルでメロディのきれいなものが好きなので。あとは「楽しむ」とかですね。


●今後の活動やライヴの予定を。

五十嵐:12月16日に春日部市の内牧公民館でレコ発ライヴがあります。そして同月19日にアルバムが発売されます。
今後もマイペースで活動していきますので、よろしくお願いします。


 (設問作成及びテキスト:ウチタカヒデ

2007年12月1日土曜日

☆ザ・コレクターズ:『東京虫BUGS』(コロムビア/COCP51057)

コレクターズの1年半ぶりの最新作。マーシーや奥田民生など豪華ゲストが集まった前作『ロック教室』が実に楽しいアルバムだったので、今度のオリジナルアルバムはどうかなと一抹の不安はあった。アルバムタイトルもなんやら変だし。さて結果は...大傑作!!。サウンドも歌詞もコレクターズ色全開で、大好きな僕らのコレクターズが帰ってきた!と思わず快哉を叫んでしまった。冒頭の「たよれる男」からいきなり打ちのめされる。ソリッドなギターリフに引っ張られたコレクターズ得意の解放感溢れるロックナンバーで、「ほんの少し前にはこんな男が確かにいたんだ」と、クラーク・ケント、ジェームス・ボンド、ジョージ・ベスト、そして甲本ヒロト(!)が順番に出てくる。加藤ひさしが、ヒロトを「魂ゆさぶるシャウト」と歌ってくれるなんて、あまりに嬉しいじゃないか。加藤ひさしとヒロト&マーシー、ロックがずっと大好きで、流行なんかに左右されず、自分達のロックンロールを作り続けたこの両者は、日本のロックの至宝だ。私にとって彼ら以上のヒーローはいない。だから加藤ひさしのこの歌詞はことのほか嬉しかった。「いくつ年を重ねてもこんな男に憧れているんだ いつかなれると 信じていたなら 叶うだろう なれるだろう」という歌詞はもう中高年になった私の心に深く突き刺さる。なりたい人間はいないけど、熱い思いはたぎるほどあるから。続く「東京虫バグス」もヘヴィなギターリフに導かれるロックナンバーだが、歌詞にある19の時にたどり着いた東京は「19のボクとキミだよ 広げた地図を見て笑ってた」だったのに、東京は冬のどまん中になり「今もボクとキミだけ 広げた地図の上 走ってる」と変わってしまった。しかし「サナギのままじゃ死ねない」と決意する「私」は加藤ひさし自身だ。そんな加藤の思いがストレートに表現されるのが「ロックロールバンド人生」。トップギアで入ってこない所が、酸いも甘いも噛み分けた加藤らしくて逆にカッコいい。「ハメをはずしてバカをやるには年をとりすぎた でも死ぬにはちょっと若すぎるんだ」「声が枯れても歌うのさ」なんて歌われるともうたまらない。そしてラストの「ツイスター」で「誰もかれもウソつきでデタラメばかり」の世界を「新しい 頼もしい風になって 吹いてやれ 明日の青空 不自由で不愉快な この世界 吹き飛ばす風になろう ツイスター」と、加藤は力強く歌い、未来への扉を開けていってくれた。この「ツイスター」は『ロック教室』でマーシーが書いた「スタールースター」を彷彿とさせる疾走感溢れるビートナンバーで、歌詞の一部に「どうにもならない事など どうでもいい事さ」と、ヒロトの「少年の詩」の歌詞が織り込まれていて、ファン心をくすぐってくれた。そしてもうひとつの加藤ひさしの魅力がそのシニカルな社会に対する視点だ。まず「ザ モールズ オン ザ ヒル」で「ヒルズ」の最上階に住む「シャレた部屋の無慈悲なモグラ」を、「ヒルズは空に届き 太陽隠し 一面暗闇 宝石の輝き 吸い寄せられた あわれなモグラ」と歌い、心を失った金の亡者達を切って捨てた。こういう「ヒルズ族」なる虚業の世界の連中を、「セレブはゴージャスでアーバン リッチでクリスタル」とわざと意味不明に表現しているのが楽しい。そしてネットカフェ難民を歌った「ミッドナイト ボートピープル」だ。「いつの間にか負け組」にされ、「見知らぬ場所に集められて 小銭渡され 汗まみれ」になり、「眠るには狭すぎるイスの上」で眠るしかない若者達。「犬が服着て歩く街で 人が凍え震えてる 何の夢見て眠ればいい?」「人の数だけ夢があるなら 独り占めしてる奴は誰」と、格差社会を作った連中を厳しく批判する。日本の社会基盤を破壊した小泉=竹中という悪党どもに聴かせてやりたいものだ。最後に壮大なコレクターズ・ワールドも「スペース・パイロット」で復活したことを紹介しておきたい。銀河の果てを越え、妻や子供に声がもう届かないスペース・パイロット。歌詞は比喩なのだろうが、「ボクはたぶん戻れない」「25世紀 30世紀 そのずっと先 キミはいない」なんていう歌詞を聴くと、言葉だけで胸が一杯になってしまう。子供の頃、宇宙が大好きだった。小学校で宇宙の本を読み、その広大で深遠な世界を知ると、宇宙旅行が怖くなった。ウラシマ効果で帰ってきた時に家族がもういなくなっていたら、いや人類自体滅んでいて、宇宙に残ったのは自分だけだったらなど、怖くて眠れなくなった。目を閉じた時に見える、暗闇を流れていく光の粒が、星に見えた。宇宙旅行に出たように思えた。加藤ひさしの書く歌には、かつてこういった少年の時の思いが込められたような壮大な世界観を持つ曲がいくつかあったのだが、このアルバムでようやく出会えることができた。今書いただけでも聴きどころがいくつもあるこの『東京虫BUGS』。2007年の邦楽アルバムで、文句無しの最高傑作だ。(佐野)