2006年10月1日日曜日

☆Andy Williams:『Moon River And Me』(ワーナー/WPBR90547)DVD

最近はアンディ・ウィリアムスばかり聴いている。柔らかで暖かい歌声、ゴージャスで美しいストリングスによるバッキング、アンディのアルバムを聴いていると夢見ごこちになれる。私がアンディのレコードを買ったのは中11970年のことになる。小学校でまずベンチャーズ、スプートニクスのエレキ・インストにはまり、続いてビートルズに心を奪われた。中1になると、その当時最先端だったピンク・フロイドやレッド・ツェッペリン、CSN&Y、ニール・ヤング、イエス、EL&P、ムーディー・ブルース、キング・クリムゾンなどのLPをクラスの誰よりも早く入手して、洋楽のことなら誰よりも先に行っている自負があった。しかし、その傍ら、アンディ・ウィリアムスの「More」(今でも私のオール・タイム・フェイバリットで10本の指に入る永遠の名演)、「Danny Boy」、「Moon River」、「Ave Maria」などのレコードを買い、同じくターンテーブルに載っていた。特に「More」のように擦り切れるまで聴いたレコードは、ビートルズなら「Hello Goodbye」、ベンチャーズなら「Telstar」といった具合に、後にソフトロック発掘に明け暮れる音楽的趣向は、この中1の時から始まっていたのだ。そしてなぜアンディか?他のポップ・ヴォーカリストの声は、バリトン系が多く、アンディのようなテノールは少なかった。美しい曲を、美しいアレンジで、ハイトーンの美しい声で歌うというソフトロックの理想が、アンディにはあったのだ。だからあんなに心を捉えたのだと思う。断片的な記憶しかないが、NHKで放送していた『アンディ・ウィリアムス・ショー』は、子供がディズニーランドに感じたのと同じ夢の世界であり、アンディの優しい笑顔と素敵な音楽は、見知らぬ豊かな夢の国へと誘ってくれていた。現在、このサイトでリンクしたが、You Tubeで『アンディ・ウィリアムス・ショー』の映像を見た。デュエットでアントニア・カルロス・ジョビンとの夢見ごこちの「イパネマの娘」、ボビー・ダーリン、エディ・フィッシャーとの実に楽しい「ドレミ」、しかし最も心を奪われたのがジュリー・アンドリュースとの『Language Of Love』だった。男女で最も美声のこの二人が、ミュージカルのように、お互い見つめあいながら歌うこのシーンにすぐに虜になってしまったのである。これらはこのHPのフォーラムで見られるので、是非みて欲しい。言っておくが私は、アメリカン・ポップスのファンではないし、ましてやフランク・シナトラやビング・クロスビーにも興味がない。レコードを買ってはみても、心を奪われることはなかった。しかしアンディだけは違うのだ。ポップスの理想、ソフトロックの理想の形がアンディの曲にはある。もう数年行っていないが、かつてハイファイレコードに行った時、VANDAにも書いてくれた店員の関義彦さんが、「最近はアンディ・ウィリアムスをよく聴くんですよ」と言った時、やはり同じ人がいると嬉しくなったものだ。ソフトロックが好きな人ならアンディは絶対好きになるはず。間違いない。このYou Tubeがきっかけだった。前から気に入っていたCollectableから出ている2イン1のCDリイシューを一気に買った。シングルヒットを飛ばしたケイデンスレコード時代、そして映画の主題化を主に歌いアルバムが売れに売れたコロンビア時代のオリジナルアルバムが、簡単に揃えられてしまう。ケイデンス時代の10枚、コロンビア時代の19枚のオリジナルアルバムをまず揃え、聴きこんでいたときに、このDVDの存在を知った。今年の1月に発売されたものだそうだ。DVD174分にも及ぶ長いものだったが、こんなにあっという間に時間が経ってしまったDVDは記憶にないほど。第一部は「Biography」で、アメリカのど田舎のWall Lakeの聖歌隊で歌っていたウィリアムス4兄弟がThe Williams Brothersとしてショー・ビジネスの世界で大活躍するようになったものの、TVの普及でショウビジ界が斜陽になりウィリアムス・ブラザースは解散、一番歌の上手かった一番下のアンディだけがソロで活動するようになる。レコードがヒットし、初めて持った『アンディ・ウィリアムス・ショー』は低視聴率により数ヶ月で打ち切りになってしまったそうだ。しかししばらくして復活した『アンディ・ウィリアムス・ショー』は62年から67年まで続く大人気番組になり、70年に三度、シリーズ化されるアメリカを代表する音楽番組なった。いい時ばかりではない。激動の60年代、70年代を生き抜いて、ヒットがなくなりそのまま老兵はただ消えゆくのみ...と誰もが思う時に、自宅などみな売り払ってミズリー州ブランソンに豪華な「The Andy Williams Moon River Theatre」を作り、そこで毎日「The Andy Williams Show」を公演するという賭けに出てこれに成功する。もう齢、78歳になろうとするアンディだが、今年も日本公演をしたそうで、とにかく前向きなこの凄いエンターテナーのヒストりーをわくわくしながら見てしまった。アンディのヒストリーが心地いいのは、家族を大事にする点で、自分のショーではしばしば兄弟を呼んで、ウィリアムス・ブラザースを復活して歌を披露、さらにアメリカの風物詩となった恒例の「The Andy Williams Christmas Show」では、両親、妻(クロディーヌ・ロンジェ)、子供も一緒に呼んで出演し、みんなで仲良く、楽しく、過ごしているのが、見る我々にも伝わり、暖かい気持ちにさせてくれた。第2部はハイライトとも言える「My Favorite Duets」だ。先の3組はみな収録(ジュリー・アンドリュースとのデュオは「Where Is Love」に変わった)され、さらに全15組の『アンディ・ウィリアムス・ショー』でのデュオが、楽しめる。このデュエッツは本当に凄い。アンディの凄さを最も感じることができる至福の瞬間だ。例えばサミー・デービス・ジュニアとのデュオではアンディが歌い始めるとサミーはアドリブですぐドラム、ベースを口でやり、その後はタップダンスで踊りまくる。アンディは1分以上、まったく伴奏がなく歌い続けるのだが、伴奏が始まると音程は正確に一致、まさにプロだ。レイ・チャールズとは、はじめアンディがレイの横に座ってピアノで「What'd I Say」のリフを弾き始め、レイが「僕の曲だね」というとわざとリフを間違え、レイが代わりにピアノを弾き始める。アンディはレイのようにR&B調で歌い、大いに盛り上がって終わった。フィル・ハリスと黒人のゴスペル・カルテットとの共演では、乗り乗りのカルテットに圧倒されながらアンディはコミカルに歌いまくり、エンディングも見事に落ちをつけて終わらせていた。このDVDでもハイライトと言えるサイモン&ガーファンクルとの「Scarborough Fair」では、アンディはアートと変わらぬ美声で、二人のハーモニーに溶け込んで、極上のハーモニーを聴かせる。ハーモニーは上手いし、ある時はスポーツしながら、ある時は会話をしている交互に歌い、すべて生放送という中、に変幻自在にゲストに合わせて歌うアンディの才能には驚くばかりだ。ボーナスではクリスマス・ショーのシーンも入り、これ以上ない満足を得られたDVDだった。調べると以前『Best Of The Andy Williams Show』と題されたDVDが出ていて、このDVDとは大半の内容が一致しているが、ジュリー・アンドリュースとのデュオがYou Tubeと同じ『Language Of Love』だったのでこれは買わないといけないと値段を見たら、中古で最低価格が199ドル(新品はもう廃盤)というとんでもない金額。他の店はそれ以上だったので、やはりアメリカでのアンディの人気は今でも凄いようだ。同じアマゾンのUKを見たら、イギリス盤は今年発売で6ポンド台という安い金額で、今注文したばかり。PALなので通常の日本のプレイヤーでは見られないが、日本マランツのプレイヤーではすべて見ることができるので心配ない。イギリスで少し前に大ヒットした「Watch The Girls Go By」を題したDVDもイギリスでは出ていて、こちらでは違う『アンディ・ウィリアムス・ショー』のシーンを見られるので、これも注文、さらに日本のアマゾンでは輸入盤だがクリスマス・ショーを集めたものと、初期の白黒時代の『アンディ・ウィリアムス・ショー』を集めたDVDがあり、これも注文した。いやー、まだまだ楽しみが残っていて嬉しい。100%、楽しめることを保障する。(佐野)
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