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2006年10月1日日曜日

☆コレクターズ:『All Mod Gear』(Triad/COBA4564-9)DVD6枚+CD1枚

コレクターズ結成20周年を記念してリリースされたDVD6枚プラスボーナスCD1枚の、驚異的なボックスセットだ。あまりに凄い内容に、今もため息をつきながら見ているところ。まず驚きの連続だったのは、現在のコレクターズのメンバーに、プロデュースの小西康陽、吉田仁、伊藤銀次が、その当時の映像を交えながら、20年間を振り返るディスク1の『Happenings 20 Years Time Ago And Now(タイトルも洒落ているよね)だ。加藤ひさしがベースを弾きながら歌っていたBike時代の映像にも驚いたが、それよりも衝撃だったのが、本音で語るメンバーの証言だ。当時の東京モッズ・シーンでずばぬけた存在だったのは、甲本ヒロトのいるコーツと、マーシーがいるブレイカーズで、そのヒロトとマーシーが一緒になってブルーハーツを作ると知ったとき、内輪受けでぬるま湯にひたっていたコレクターズをメジャー・デビューさせないといけないという動機付けになったこと。そしてそんな思いにかられていた加藤ひさしは、ヒロトとマーシーに喫茶店に呼び出されて、ブルーハーツのベースをやってくれないかと頼まれたという衝撃の事実を語る。ブルーハーツは絶対に成功するって分かっていたので、正直、とても迷った、でも大好きなモッズのスーツを脱いで皮ジャンを着ることはできなかったと加藤は本音を語る。その後、ブルーハーツが大成功していくのを見て、羨ましかったとも。ブルーハーツに加藤ひさしが入っていたら、いったいどんなバンドになったのだろう。私の最も愛する2つのバンドが一緒になるなんて、ジョンとポールに、レイ・デービス(ピート・タウンゼンドと迷ったが、やはり加藤ひさしはレイだね)が組むようなものだ。合うわけなどない。でもきっと3人はアルバムを3等分して曲を書いただろうし、どんな方向性の曲ができたのか、あー妄想は尽きない。そんなコレクターズもテイチクから、コロムビアに移る際に、レコード会社からリズム隊が弱いからリズム隊を変えないと契約しないと告げられ、加藤は泣いて馬謖を斬る(規律を守るためではないけど)ことになる。自信を喪失して欠席が続いていたベースはともかく、ドラムのリンゴ田巻は加藤の中学校時代からの友人だ。そしてそのアフタービートのドラミングが加藤は大好きなのだ。そのつらい宣告をしなければいけない時に、一緒に待ち合わせていた古市コータローは現れず、加藤が電話をすると、「俺にはできない、加藤君頼むよ」と加藤ひとりで喫茶店で話をすることになる。「実は...」「次のレコーディングの話?」絶句する加藤の辛さが手を取るように分かる。でもその時田巻が「お前の歌でドラムが叩けるのは俺だけだよ」って言っていれば、ベースだけ代えるからドラムはそのままで、と言うつもりだったが、辞めるという返答だったので、リズム隊がそっくり入れ替わることになったのだそうだ。なかなか代わりのメンバーが決まらない時に、レコード会社から、「(加藤と古市で)第二のB'zになってよ」とも言われた。半ズボンでギター弾きたくないって断ったという古市の言葉には笑える。そして後にコロムビアの契約を切られ、所属事務所が閉鎖という、バンド存続の危機に、加藤は心労で自律神経失調症になって、日銭を稼ぐライブが精一杯という状況に陥ってしまう。その時に、今まで傍観者のようなスタンスだった古市が中心となって、経理面から出演交渉までこなしていったという証言は、そういう裏方を見せようとしなかったコレクターズだけに、衝撃だった。しかしこのピンチが、加藤と古市の絆を今までになく深めたという。人生万事塞翁が馬だ。私の人生の至言。さて、映像だが、ディスク2の『New Clips』にはなんと「僕はコレクター」から「Thank U」まで25曲ものPVプラスボーナストラックを一気に見ることができる。私はテイチク時代からのファンなので、テイチク時代の映像が見られるのが特に嬉しい。ファーストアルバムと同じコスチュームに身を包んだコレクターズのライブ・クリップで、加藤のかわいらしさが印象的だ。「太陽はひとりぼっち」は明らかなPVで、60年代風のサイケな演出に、コレクターズのこだわりを感じる。「ぼくはプリズナー345号」(「プリズナーN0.6」はもちろん知っているよね?あんなシュールでカッコいいSFTVシリーズは他にないよね)も当時のライブ映像で作られたクリップ。この頃のコレクターズって本当にお洒落。そして大好きな「ぼくのプロペラ」。リッケンバッカーの12弦ギターが決まった最高にカッコいい曲で、PVもアニメーション入りでとっても可愛いけど、歌詞は実はとてもエロい。ダブルミーニングというか、すぐこの曲の歌詞の意味が分かるだろう。加藤の突き上げるポーズに当時の女の子のファンは気づいていたのかな。小西プロデュースの「See-Saw」も実はとってもエロい歌詞の曲だけど、このお洒落でポップな映像を見ると、「ぼくのプロペラ」も含め、全然隠微な感じがしない。これはコレクターズだけの芸当だろうな。エキストラトラックの「BoKuWa COLLECTOR(Mint Sound Version)」は新しく作られたデビュー前のライブ映像で作られたクリップで、人の頭の間からコレクターズの姿が見られるというライブハウス独特の光景に、とても懐かしい思いにかられた。これは新宿のJAMか?よく行ったなー。ライブハウスの熱気が伝わってくるようで、いいクリップだ。ディスク3まで紹介しようと思うが、この『The Collectors In Live TV』はコレクターズのTV出演映像を集めた、先の1,2と並ぶ本ボックスの目玉のDVDだ。許諾を取るのに奔走しただろう、スタッフの努力に頭が下がる、87年、フジテレビでの「僕はコレクター」は、正真正銘のファーストアルバムのジャケットそのもののコスチュームでの演奏で、まさに涙もの。88年のテレビ熊本での「1234567Days A Week」と「太陽はひとりぼっち」は、セカンドアルバムのコスチュームで加藤が歌っているスタジオ・ライブでこれも素晴らしい。後者では加藤の頭が汗のためかマッシュルームカットではなくなっているため、とても若々しく見える。90年チバテレビの「気狂いアップル」はテイチク時代のメンバーの、本当に最後の時期のライブだ。このライブはどこかの会場で、さすがにデビューから3年経っているため、ステージが堂々としている。加藤のモノローグと廃材置き場のメンバーでPVをつないでいく91年のAC-TVでの5曲は、5枚目のアルバムの時期なので、「1991」は『Collector No.5』のジャケのコスチュームで歌っていて楽しい。新メンバーでのテイチク時代の「スーパーソニックマン」と「僕はコレクター」のライブは、パワー溢れる演奏で、その力量の高さが感じられる。面白いのは93年のテレビ埼玉でのアコースティックライブの3曲で、加藤も生ギターを弾きながら、御馴染みの曲を別アレンジで披露してくれる。その後は日比谷の野音でのライブステージの中継など、計26曲が楽しめる。ひとつひとつ書いているときりがないので、DVD3枚目まで紹介したが、もうこれで買う気になったでしょう?でもこれだけじゃあないんだ。このボックスのもうひとつの目玉はメジャー・デビュ-前の87年にミントサウンドから10インチ盤(25cm盤)で、フルアルバムとしてリリースされた『ようこそお花畑とマッシュルーム王国へ』が初めてCD化され、ボーナスとして付けられたからだ。3000枚限定のインディー盤で、今は現物を手に入れるだけでこのボックスセットの金額は払わないといけないコレクターズ・アイテムである。何しろ、小西康陽がプロデュースした時に加藤に対して、コレクターズの最高傑作は『ようこそお花畑とマッシュルーム王国へ』だねと思わず言ってしまったほどの傑作なのである。曲はここから5曲がファースト・アルバム、3曲がセカンド、1曲がサード、残る「Nick!Nick!Nick!」がミニアルバムの「愛ある世界」と、全てがメジャーになってから使われた傑作ばかり。基本的にアレンジもそのままで使われていて、いかにデビュー前からコレクターズが完成されたバンドだったか痛感するだろう。デビュー前からコレクターズだけがA級だったというのはファントム・ギフトの言葉だ。私もこんなにインディー時代の曲の完成度が高いバンドを他に知らないが、レコーディングは予算がないので大変で、このCDの加藤の解説にはないが、「Nick!Nick!Nick!」のTaro's Studioの持ち主?篠原太郎さんからこのレコーディングのエピソードを聞いたことがある。篠原さんの自宅は木造の古い家で、自室にレコーディング機材が置いてあったそうだ。その狭い自室に体の大きい加藤らが来て部屋はすし詰め状態、そして加藤があの声量で歌うものだから、外へ筒抜けで困ったよと、言っていたことを思い出した。私はVANDA91年にコレクターズにインタビューをしたことがある。コレクターズの曲の事を聞いたときは、硬い表情だったのに、後半、ビートルズと60年代の好きなバンドの話題になったら、みんな笑顔になり、弾けたよう話が盛り上がった。みんな本当にブリティッシュロックが好きで、その熱い想いを持ち続けているから、それから15年経っても現役で、変わらない「コレクターズ・サウンド」を作り出してくれるんだろう。自分の好きな音楽をやり、今でもロック・ミュージックに夢を持ち続ける誠実なバンドがコレクターズだ。だから大好きだ。(佐野)
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