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2006年8月1日火曜日

☆ガロ:『GARO』(ソニー/MHCL841~851)CD10枚+DVD1枚

待望の、本当に待望のボックス・セットがリリースされた。これはガロのオリジナル・アルバム8枚にアルバム未収録曲に未発表曲をプラスした「ディスク9」、74年と76年の解散コンサートを収録したライブ盤「ディスク10」、それにTVKに出演した時のスタジオライブの5曲が入ったDVDという、これ以上ない究極のボックス・セットである。ガロを初めて聴いたのは1972年、中3の時だった。バリバリの洋楽人間だった私だが、ガロをラジオで聴いた時にそのCSN&Yを彷彿とさせるハーモニーに「日本にもこんなセンスのいい連中がいたんだ!」と驚き、ガロのファーストとセカンド・アルバムを相次いで購入した事を思い出す。初めて買った邦楽のアルバムがガロだった。中学生のこづかいでは月にアルバム1枚を買うのも難しいのに、大好きな洋楽のアルバムを買わずに、ガロのアルバムを買ったのだから、ガロへの思い入れは深い。後に初めてガロの全アルバムがCD化された時に、4枚のライナーと1枚の選曲をさせてもらったが、特にソフトロック系の曲をセレクトした選曲の仕事は楽しくて、今でもそのCDは自分の車の中の愛聴盤のひとつになっている。(担当者のミスで「美しすぎて」がアルバム・ヴァージョンだったことだけが心残り)さて、余談はこのくらいにして、ディスク9から紹介しよう。まず未発表の「時の魔法」だ。ベース、ドラム、フルート、オルガン、ホーン・セクションが加わって、パワフルな仕上がりになっている。非常に新鮮で、こんなものが録音されていたなんて驚かされるばかり。そしてCSN&Y関係の貴重な録音は、デビュー前にライブ「Love The One You're With」と「Helpless」、73年の「Helplessly Hoping」、74年の「Ohio」はラジオでの収録だ。これらのCSN&Y関係の曲の感想は、DVDの紹介のところで後述させてもらおう。さらに嬉しい、嬉しいNHKで収録した5曲が続く。番組の性格上、オリジナルの曲はない。「あなたのメロディー」用の曲は3曲で、「エプロンドレスの女の子」はアコースティック・ギターのバックだけで得意の3声のハーモニーが心地いい佳曲。「銀色の世界に二人」はストリングスをバックに、堀内のヴォーカル中心にハーモニーをつけたドリーミーなナンバーで、これは出来がいい。「そば屋」はアコースティック・ギターをバックに大野のヴォーカルを中心にしたフォーク・ナンバー。ついで「みんなのうた」の2曲が続く。「そして君は」は日高のヴォーカル中心にハーモニーが加わる佳曲で、そのままガロのアルバムに収録してもいいくらいにサウンドが完成されていた。ラストはマスターがないので音が悪いが、個人的に最も楽しみしていた富田勲作曲の「いつまでも駆けてゆきたい」だ。富田にしては驚くような展開はなく、オーソドックスな作りといえよう。シンプルだが、バックのストリングスの付け方に浮遊感がある。堀内のヴォーカルを中心にハーモニーをつけたスタイルだった。続いて「ディスク10」のライブである。17曲中10曲が74年のツアーでのライブ、7曲が76320日の解散コンサートからのものだ。74年の音源はアコースティック・セットとエレクトリック・セットが並ぶが、やはり個人的にはアコースティック・セットの方に引かれてしまう。特に堀内の「ピクニック」が軽快でポップで素晴らしい。アコギとハーモニーだけで、こんなにポップなのは、ガロならではだ。解散コンサートでは、数あるガロのナンバーの中でも最も好きな「地球はメリー・ゴーランド」のライブが聴けたのが嬉しい。解散コンサートはアコースティック・セットだけなので、当然この曲もアコースティック・ギターのバックのみ。ストリングスがない分、主メロにもハーモニーを付け工夫していた。しかしやはりこの曲は東海林修のストリングスが入ってこないといまひとつグッとこない。「遠い春」のハーモニーなんて聴いていると、こんにきれいに3声でハモれるグループなんて他にいないなとあらためて実感。最後は「Teach Your Children」と「Find The Cost Of Freedom」という、ガロの原点とも言えるCSN&Yナンバーで締めくくったのはなんとも印象的だ。なお、このディスク9とディスク10はボックス内で2枚組CDとして紙ジャケで作られたが、デザインはまさにCSN&Yの「4 Way Street」、思わずニヤリとしてしまった。最後に紹介するのは本ボックスの目玉であるDVDだ。ここにはTVKで録画されたスタジオ・ライブ5曲が入っており、選曲がまた泣ける。まずは暗いスタジオで3人にスポットライトを当て浮かび上がらせた「暗い部屋」だ。アコギのリフ、スティルスとクロスビーを合わせたようなメロディ、絶妙なハーモニー、ガロだけがいかにずば抜けた存在だったか分かる。そして次が「個人的メッセージ」だよ。若き山下達郎がコーラス・アレンジを担当したあの名曲のライブが見られるなんて!堀内の優しさ溢れるヴォーカル(ご本人にお会いしたことがあるが、もの静かで控えめで本当に優しい方)に、極上のハーモニーがからみ至福の一瞬を味わえる。ちなみにあごひげを剃り口ひげだけになった大野は野球帽のような帽子を被り、シャツにオーバーオールとまさにマリオなので、ここにも注目?さらに「吟遊詩人」だ。もうまいった。この曲は阿久悠の詩をもらった堀内と日高がどちらも曲を作ってきたため、ミッキー・カーティスの提案で2つの曲をつなぎ合わせというガロ唯一の堀内・日高の共作である。日高のヘヴィなエレクトリック・ギターをフィーチャーし、重量感溢れる演奏を聴かせてくれる。圧巻だ。そして最後は「Guinnevere」と「青い眼のジュディ(Suite:Judy Blue Eyes)」の2曲。言うまでもないCS&Nの名曲だが、よりによってこの2曲のライブが見られるなんて。興奮。感激。ため息。凄すぎる!オープンチューニングのアコギ、繊細なハーモニー、完璧な、まさに完璧なCS&Nの再現だ。前述したが、このボックスではDVDを含め8曲のCSN&Yナンバーが収録されている。デビュー前から解散までずっと歌い続けているのだ。さらに完コピである。いかに彼らの音楽を愛していたか、リスペクトしていたか、このDVDでも細かい部分まで再現していて、その愛情が伝わってくる。「学生街の喫茶店」以降、プロ作曲歌の曲でヒットを稼いでスターダムにのしあがった彼らだが、こういう「音楽が好き」という根っこの部分がまったくぶれないので、こうして今でもリスナーの魂を揺さぶるのだろう。今年最大の収穫のボックス・セットだ。
(佐野)
商品の詳細 本ボックスは発売日に回収の指示が出て、発売日はさらに3ヵ月後の1127日に延期となりました。ソニーのホームページには「制作上の理由」とだけ書かれていて、それまで載っていた選曲リストは見られなくなっています。結局CSN&Yのカバーがダメで、「Suite:Judy Blue Eyes」と「Guinnevere」が外され、「姫鏡台」「ビートルズはもう聞かない」に差し替えられ、価値が大きく落ちてしまった。(佐野)
 

 
 



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