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2006年8月1日火曜日
☆Beach Boys:『Pet Sounds 40th Anniversary』(東芝EMI/TOCP70077)CD&DVDデジパック ☆『〃』(東芝EMI/TOCP70078)CD&DVDレギュラー盤 ☆『〃』(東芝EMI/TOJP60117・18)LP
待望のペット・サウンズ40周年記念盤がリリースされる。CDは約50分のDVDがセットで、レギュラーの日本盤には字幕が入る。全世界で5万枚限定のデジパック仕様盤には対訳が付く。モノが黄色、ステレオが緑の2枚組LPは、全世界1万枚限定で、ナンバリング入り、ボーナストラックはなし。3種の国内盤のリリースは全て9月27日、以上がリリース情報だ。さて、実際の中身だが、まず『Pet
Sounds』本体について特記事項のみ、2つ書こう。ひとつはステレオの「Wouldn't
It Be Nice」は、サビがマイクに戻った2001年にアメリカ・ヨーロッパでリリースされたHDCD盤のヴァージョンだった。1997年の『The
Pet Sounds Sessions』のヴァージョンではサビがブライアンだったが、HDCD盤の日本盤は出なかったので、多くの方は「マイク・ヴァージョン」を聴くのは初めてでは?次にCDのみ収録の「Hang
On To Your Ego」は『The Pet Sounds Sessions』で登場した1コーラスの後「ブルブルブル」と唇を震わす音が入った方のテイクだった。こちらにはコーラスが入っているので、より完成度が高いと判断されたのかな。音質の向上については、耳のいい、詳しい方におまかせしたい。次に、肝心なDVDについて順に解説しよう。最初のチャプター「ペット・サウンズ・メイキング」は、メンバーとトニー・アッシャーによるアルバムの思い出だ。故人であるカールとデニスのコメントも巧みに使っていた。メンバーは口々にアルバムに対する賛辞を送るが、ヴォーカル・セッションはマイクが「地獄の責め苦」と言っていたようにブライアンが納得するまでエンドレスで繰り返されたようで、スタジオでのブライアンをブルースは「パットン将軍」、マイクは「スターリン」と刺激的な表現をしていた。ブライアンだけに聴こえる音がある、だから「Dog
Ear」と呼んだとマイクが語る。初めてオケを聴いた時の感想で、アルは「チャイコフスキー」かと思ったよと言っているが、クールなアルの言葉だから、その衝撃が伝わってくる。次の「ペット・ストーリーズ」はブライアンとトニー、そしてスタジオ・ミュージシャンによるスタジオ・ワークの思い出だ。スタジオ・ミュージシャンはハル・ブレイン、キャロル・ケイ、ドン・ランディ、フランキー・キャップ、トミー・モーガンが登場するが、これらの名うてのメンバーを使った事についてブライアンは自分がフィル・スペクターに憧れていたこと、そして自分の曲で「新ウォール・オブ・サウンド」を作りたかったと、正直に語っていた。スタジオ・ミュージシャンはこぞってブライアンの才能に驚き、レコーディングに参加できたことを喜んでいたが、キャロル・ケイの「(ブライアンの)不満は大歓迎。だって何が欲しいか分かるから。人当たりなんてどうでもいいの」というプロらしい言葉にはさすがと思ったし、ドン・ランディの「ヴォーカルを重ねるところを見たかった。やっぱり主役はヴォーカル、我々はBGMだった。お蔭様で楽しく仕事が出来た」という一音楽ファンとしての率直な表現にも好感が持てた。最も辛口のハル・ブレインが「ちっともセッションが完成しないと思っていたら、2、3週間前に録音した曲が突然ラジオから流れてきた。驚いたよ。素晴らしかった」と語る部分は、怖い先生からの褒め言葉のようでちょっと嬉しいもの。ブライアンとトニーによる「Caroline
No」のCarol,I Knowを聴き間違えたという下りや、マリーのアドバイスでテープ・スピードを上げたというエピソードは、知ってはいても、実際に本人が語っているのを見ると、重みが違ってくる。そして本DVDの目玉、「リズム・オブ・ライフ」だ。オープニングのジョージ・マーティン自らがハンドルを握ってLAの街を赤いオープンカーで走るシーンは、それだけで興奮してしまった。ジョージ・マーティンはブライアンの家へ行き、まずブライアンがピアノで「God
Only Knows」を弾く。その後、二人はスタジオのミキシング・コンソールの前に座り、ジョージが「God
Only Knows」の完成ヴァージョンのミキシングをいじりながらレコーディングの話を続けていくのだが、話自体はお互いを褒めあっていて発見はない。ただ、ロックの巨人のこの2ショットは、見るだけでも十分だろう。そしてもうひとつの目玉が「Good
Vibarations」のプロモーション・フィルムの完全版だ。消防士の格好をしたメンバーがブライアンに起こされ、消防車を追いかけて走り回るコミカルなものだが、このフィルムはかつて『An
American Band』の中で「Mrs.O'Leary's Cow」のバックで使われていた。その時は消防士のヘルメットをかぶってクルクルと回るブライアンを見て、「これはイッてしまっているな」と思ったものだが、それは演出の意図にすっかり乗せられていたのであり、映像は音楽で大きく作用されるものだと改めて思った次第。他は「Sloop
John B」と『Pet Sounds』の既出のプロモ・フィルム。ただし「Sloop John
B」に水音は入っていなかった。このDVDだけでも買う価値は十分、また同じものか...と思わないで、購入しましょう。(佐野)
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