フィル・スペクターがメンバーとして参加し、全てのスタートとなったのがこのテディ・ベアーズだった。Doreよりリリースした「To Know Him Is To Love Him」がジリジリとチャートを上げ全米1位を獲得、その実績で大手のインペリアルと契約して1959年にリリースしたのが唯一のアルバムとなった本作である。アネット・クレインバードの素直で哀調のあるヴォーカルを生かしたアルバムは、メロウな曲がいっぱいで、アメリカン・ポップスが好きな人にはたまらない内容だ。まだ一発でスペクターと分かるようなサウンドは開花していないが、十分楽しめる。スペクターの後の大活躍は書くまでもないが、アネット・クレインバードはキャロル・コナーズと名前を変えて作詞家として活躍を続け、マーシャル・リーブはプロデューサーとなって自らのレーベルを作ってスマッシュヒットを放ったこともあった。このアルバムはかつてLPでリイシューされたが、CD化は初めてで、アルバム未収録の「If You Only Knew」を入れ、モノとステレオを同時に収録したため、価値ある仕様となった。惜しむらくはシングル・ヴァージョンの「You Said Goodbye」を入れなかったことだ。アルバムはABAの構成だが、このシングルヴァージョンはAABAの構成で2番のパートがあるため26秒も長く、テイクがまったく違うため、コンプリートにならなかったのは残念。なお、この3社共同の「ジャケ買い」シリーズで、ブライアン・ハイランドの『Stay And Love Me All Summer』もリリースされていたが、ボーナストラックが無い上に、同時期にリリースされた『Tragedy』がリリースされなかったのはどうにも片手落ちで購入しなかった。この手の「ちょっといいアルバム」は名盤ではないだけに、流れを押さえないといけない。少し前にリリースされたラブ・ジェネレーションも3枚目の『Montage』だけが突然リイシューされ、あまりに唐突で購入しなかったが、アナログを持っていないのならともかく、ボーナス・トラックもないストレート・リイシューなら、ポツンとリリースされただけでは購入意欲はそそられない。(佐野)
0 件のコメント:
コメントを投稿