ブライアンのソロとして初めてのクリスマス・アルバムが10月18日に発売される。どうなのかなと期待とちょっと不安が交ざったこのアルバム、何回か聴いてみたが、正直な感想はまあまあってところ。気に入ったのはオリジナルで新曲のクリスマス・ソングだ。ブライアンがジョージ・ガーシュインやコール・ポーターなどから連綿と続くアメリカン・メロディ・メイカーの実力を発揮してくれる「What I Really Wnt For Christmas」は流麗なメロディがあふれ出している。作詞はバニー・トービン。そしてジム・ウェッブが作詞をした「Christasey」は、ブライアン得意のメロディ・ラインによる美しいナンバーで、バッキングのパーカッションが軽く『Pet Sounds』風で微笑ましい。2001年にウォルマートの店内だけで販売したCD『20 Christmas Stars』に収録されていた「On Christmas Day」は、エコーを増やしてリミックスされた。この曲も心引かれるメロディがあり、もったいないと思っていたので嬉しい収録だ。オリジナルでも1964年の『The Beach Boys' Christmas Album』からのセルフ・カバーは微妙な仕上がり。「Little Saint Nick」と「The Man With All The Toys」は、かねてからロックンロール・アルバムを作りたいと言っていたブライアンの意向かビートが効いていて、後者は間奏以降サックスが入ってロックンロールっぽくなる展開を見せる。オリジナルではないが「Auld Long Syne」は当時と同じくア・カペラ。ただ転調するタイミングが遅いのでちょっと間延びした印象があるだろう。ロックンロールっぽいと言えば「We Wish You A Merry Christmas」はワルツのリズムでクリスマス風に歌われるが、間奏以降、テンポアップしてロックンロールになってしまう。その他の8曲は聖歌やクリスマス・スタンダードで、それぞれブライアンお得意のコーラスをフィーチャーしながら、基本的にクリスマスらしいアレンジで歌われる。その中の「Joy To The World」は1997年のクリスマス・コンピ『Christmas Spirit』に収録されていたテイクの再録だ。全体的にいいんだが、アレンジ的にはフィル・スペクターの『A Christmas Gift For You』には及ばず、楽しさもベンチャーズのクリスマス・アルバムにはかなわない。もちろんビーチ・ボーイズのクリスマス・アルバムの若々しさは得ることができないので、「まあまあ」という評価になってしまう。クリスマスものというのは難しく、往々にしてクリスマスらしく作ろうとして、自分自身の色が出せずに、自己満足に終わってしまう場合が多い。その点、このアルバムには「Deck The Halls」のように大きくアレンジを変え成功したものもあるし、そういった自己満足アルバムよりははるかに良い。オリジナルが良かったので、もっとオリジナルを多くすればというのが個人的な思いである。最後に、消化不良な感じが残るのは、ブライアンのサイトで配信していた「Silent Night」が、そのまま最後に収録されていたからかな。このア・カペラのアレンジははっきり言って出来がよくない。(佐野)
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