サノトモミはnoanoaや流線形といったシティポップ・グループでゲスト・ヴォーカリストとして活動していたシンガーだ。
本作は彼女の初ソロ・アルバムで、元流線形のキーボーディストである林有三(アレンジャーや角松敏生のバッキング・メンバーとしても活躍している)が作曲、アレンジも含め全面的にプロデュースしている。
所謂AOR的方法論を活かしたサウンドは時としてBGMと流される一面も内在している訳だが、ここでは曲作りの根幹たるクオリティーの高いソングライティングにより、それをクリアしている様に思う。またサノのフラット気味なヴォーカルもサウンドに上手く溶け込んでおり高度にプロデュースされた賜物といえるだろう。
正にメロウ&スイートなタイトル曲をはじめ、フィリーソウル的ドラミング(アール・ヤング風)が冴える「追憶の鏡」等聴きどころは少なくない。林が弾くフェンダー・ローズやアナログ・シンセの音色は元より、スラップ・ベースのアクセントやギターのエフェクター処理からエンジニアリング・センスに至るまで相当70年代後半を意識しているのが全然古さを感じさせない。
それもジャンルが細分化された現代東京の音楽シーンの在り方だと納得するも、あの時代への憧憬を捨て去る事が出来ない世代にも大いにお薦め出来る作品である。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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