Pages

2004年10月7日木曜日

モダーン今夜:『青空とマント』 (MOTEL BLEU/MBR-007) 永山マキインタビュー


 昨年『赤い夜の足音』でデビューしたモダーン今夜から、約一年振りのセカンドアルバムが届いた。画家アンリ・ルソー作「眠れるジプシー女」の構図を思わせる印象的なジャケットからして期待が大いに持てるのだが、今回もメイン・ソングライターでヴォーカリストの永山マキの描く独特な詩世界に、複数のホーンプレイヤーとパーカッショニストにヴァイオリン奏者も含めた、濃厚なビッグバンド・アンサンブルが有機的に絡んでいく。
 ここでは前作を超え意欲溢れる作品に仕上がった本作について永山に聞いてみた。


 (永山マキ:以下括弧内同じ)「『赤い夜の足音』は、結成した当初につくった曲もあり、割といろんな要素がつまったアルバムだったんですが、今回の『青空とマント』は自分たちの方向性や世界観がより濃くなったと思います。相変わらずいろいろなリズムなんですが赤い夜~よりも、さらに一本筋が通ったというか。
とにかく歌いたいことが歌えたと思っています。
セカンドアルバムは「七つの歌」で構成されていますが、これは、ひとつひとつ、言葉を大切にしてつくりました。 楽曲の方はファーストの時よりも、タムと一緒につくったり、タムがアレンジしてくれたりと、タムの活躍がめまぐるしかったと思います。それがとてもいい形になってセカンドに表れたなぁと思っています。特に、「海の底」のアレンジはタムならではだと思います。 海にだんだん沈んでいく感じがうまく表れている。さすがです。 このような感じで、今回は一曲一曲、詩とともに情景が浮かぶような、紙芝居になっているのです」

  バンド内アレンジャーたるキーボーディストのタムは、前作以上に曲作りでも大きく貢献をしている。先行シングル「名犬ジョディー」やタイトル曲「青空とマント」ではマキとの共作となっているが、より完成度を高めるソングライティング・コラボレーションを生んでいるのだ。また各メンバーの演奏にも自信溢れる能動的プレイが多く、聴き所が増えたのもポイントだ。新しいレコーディング方法にその辺りの鍵があるのかも知れない。

 「今回のアルバムは、タムがいなかったらできなかったと思います。それと、リズム隊のみんなが、かなりいい感じでリズムを構築してくれたので、それも大きいです。
わたしが書いた詩をみんなでかたちにしたという感じです。もちろん、逆もありますけれど。ファーストのときよりライブ感が増したかもしれません。ファーストはリズム隊やホーンなど、全部わけて録音していったのですが、今回は一発録りのものが結構ありまして。
「もぐら」は完全一発録りです。 他の曲もグルーヴを活かし、ほとんどみんなで一緒に録音しました。」

  今回もマキの詩の世界に興味が尽きない。 彼女自身の心情を赤裸に綴ったとされる「青空とマント」と「名犬ジョディー」。特に「名犬ジョディー」は、その高揚感溢れるサンバ調の曲調とは裏腹に痛烈な歌のサインランゲージを感じずにいられない。 前回の「涙の雨」の続編というべき昭和ロマンを讃えた「あのフレーズ」では、絶妙なダブルミーイングを効果的に配置してストリーテラー振りを発揮している。因みにこの曲ではユニークなセッションもあったとの事だ。

 「「青空とマント」については、自分がね、飛べると信じていたのに飛べなくて、泣きたくても泣けない時期があったんです。そうやって、泣きたくても泣けない人って私だけじゃなくてたくさんいると思うんですよね。仕事場で、学校で、いろいろです。そうやって、つくり笑いしていると、こころがカチコチになってしまうでしょ。そういう固まってしまった心のねじを巻いてあげると青空とマントではうたっているのです。
「名犬ジョディー」は「カオナシ」の歌です。自分がなにがしたいんだか、例えば、歌を歌っている永山マキだって、本当のあたしなのかどうかわからない。自分が何者であるか、なんて、自分が死ぬまでわからない。でもね、ずっと止まり続けていられないんですよね。 進まなくちゃ。何があろうとも、時間は流れているわけですからね。 
そうそう、それと、「あのフレーズ」。これがとっても可愛らしい曲でして。 ストーリー中の「フレーズ」は、音のフレーズと言葉のフレーズでもあるんです。 主人公と男性の間でしかわからない、「あのフレーズ」を奏でる(もしくは囁く)のです。ニクイ人なんですね。 あのフレーズのギターソロを弾いているのは実は私の実の父親なんですよ。なので、私の弟のヤスとギターと私というソロ回しがつづき、ちょっとおもしろいことになっていますね。」

 聴く度にそれぞれの曲に深い世界観が潜んでいるのが理解出来ると思う。即ち本来ポップスが持ち得た高い創造性がここでは感じられるのだ。本作は歌詞カードを手にじっくり聴くべき作品といえるだろう。最後にマキも以下の様なコメントでその魅力を語ってくれた。

 「わたし、みんなに伝えたいことがあって。セカンドアルバム「青空とマント」はそれをぎゅっと詰め込みました。 伊藤ゴローさんから戴いたコメントのなかに「モダーン今夜はバロックの罠、七つの夢のなぞなぞを解こう」とあるのですが、 収録曲、7曲をじっくり聞いてみてください。
キメ細やかなアレンジと素敵なおはなしがかくれています。 ファーストから進化したモダンサウンドを、是非お楽しみください! 」

 (テキスト:ウチタカヒデ



0 件のコメント:

コメントを投稿