ついに『Smile』がリリースされた。
私がビーチ・ボーイズに出会った1970年から34年間、何回か『Smile』がリリースされるというインフォメーションを見た。しかしガセネタばかりで、『Smile』の LP のブートがリリースされた時は、我々ファンの間では驚天動地の衝撃が走ったものだ。
ブートの『Smile』は、2枚組の LP になった時、 CD になった時などに、一気に多くの未発表トラックを発表し、その都度、ファンを気持ちを騒がせた。
しかし徐々にネタがなくなり、またインストのみやデモ状態のテイクの多さに辟易してきて、結局こんな程度しか出来ていなかったのかなと、色あせて見えてきたことも事実。
それまで『Smile,Smile』と騒いでいた著名人達が、もう『Smile』はいい、などと言い出し、『Smile』は澱の中に沈殿してしまったかのようだった。
しかし、長くライヴ活動を続けて、音楽にポジティブになったブライアンは、ついに『Smile』に決着を付けようと取り組んだ。
噂は流れ、イギリスで『Smile』のライブが行われたと情報が入り、ほどなくしてブートが手元に届いた。
その感想は…先日のこのコーナーでレビューしたとおりである。
そして『Smile』はスタジオ録音で正規に届けられた。
まず最初に言っておくと、このスタジオ録音は、ツアーの模様とほぼ同じである。
そして緻密に計算されて作られた大傑作である。当時、録音されていた多くの『Smile』の断片を組み合わせ、不足している部分は書き足し、時には『Smiley Smile』のヴァージョンのいい部分も取り入れて、パズルを完成させて新しく録音した。
しかし37年もの歳月が経つとサウンドが違ってしまうのが常だ。レコーディングの進歩が、逆にサウンドを変えてしまう。
しかしこの『Smile』には、違和感がまったくない。
当時のブライアンがイメージして作り上げていた独特のサウンドが、見事に再現されていたのだ。深いキーボードの音像を核にしたシンプルでいて深遠なサウンドだ。
このサウンドと、高度なハーモニーを再現できたのは、ブライアンのソロ・ライブを復活させた現在のサポート・チームの力が大きい。特にダリアンの力が大きいとも伝えられる。
しかし、曲を書けるのはブライアンしかいない訳で、ブライアンは忌み嫌っていた『Smile』に向き合い、遂に決着を付けた。
本物の『Smile』ではない、ツアーの営業向けだなどと言う連中もいるだろうが、そんな雑音も簡単に吹き飛ばしてしまう力がこのアルバムにはある。そしてこの『Smile』は、今聴いても、他に例のない、斬新なメロディ、ハーモニー、アイデアが満載されたユニークなアルバムで、古さをまったく感じることがない。
では内容を振り返ってみよう。
まず既に発表されたもの、もしくはブートでお馴染みの当時のテイクをほぼ忠実に再現した曲がある。
"Our Prayer" , "Cabin Essence" , "Wonderful (Smile Version)" , "Surf's Up" , "Good Vibrations" , "Old Master Painter/You Are My Sunshine" がそれだ。
"Heroes And Villains" もシングル・ヴァージョンを基本に『Smile』用のヴァージョンなどをうまく散りばめたものだった。かつてのようなファルセットが出ないブライアンを補うべくポイントではハーモニーを付け、またヴォーカルをオン気味にしてサウンドに重量感を持たせていた。
"Cabin Essence" や "Good Vibrations" は緊張感に満ち実に新鮮な仕上がりだ。
次にアレンジの違いで新鮮なイメージになった曲がある。
"Wind Chimes" は基本は『Smile』ヴァージョンなのだが、『Smiley Smile』のエンディングの美しいコーラスからスタートするという見事な展開で二重丸。
"Mrs.O'Leary's Cow" はホイッスルのヴァージョンからスタート、すぐに "Fire" ヴァージョンになるが、ハーモニーを加え実にヘヴィでダイナミックなインストに仕上がり、こんなカッコいい曲だったのかと、認識が変わってしまった。そして新たな歌が付けられた曲がある。
"Roll Plymouth Rock" (= "Do You Like Worms" ) は出だしのタムが鳴っているパートに新たなメロディの歌を付け、ウガウガのコーラスには "Bicycle Rider" の歌が被り、ハワイ語の歌の後もフェイドアウトせずに主題へ戻るなど、ぐっと完成された作りになっていた。
"Barnyard" には、 "Heroes And Villains(Demo)" 後半の歌が被り、これはこの曲のためだったのかとまたビックリ。
"On A Holiday" は木琴のお馴染みの曲だが、新たな歌が付けられ、 "Do You Like Worms" の歌まで被っていた。
ちょっと無理やりつなげた感があるのは、エフェクトと共に消える短い "I'm In Great Shape" からブライアンのジャジーな歌が入った "I Wanna Be Around" 、大工道具を叩く "Workshop "、『Smile』ヴァージョンの "Vege-Tables" のメドレー。ただ "Vege-Tabels" のエンディングは『Smiley Smile』ヴァージョンのハーモニーできれいにまとめている。
そしてアルバムのハイライトがこれから紹介する2曲だ。
"Song For Children" ~" ChildIs Father To The Man" は、雄大なインストパートから "Holiday" のメロディのパートに変わったかと思うと、その都度新たに作られた歌が登場し、その後も今までブートで聴いてきた断片がモザイクのように組合わさり、めまぐるしく変わる曲想はまさに圧巻。
こういう曲が聴きたかったと、嬉しさで背筋がゾクッとした。
そして "In Blue Hawaii" は出だしの "Water" のハーモニーに新たな歌が付けられ、 "I Love To Say Da Da" に移るとさらに新たな歌詞の歌が付く。
これが実に洒落た心地良い歌で、ハーモニーも巧みで、もう最高の気分。
かつてCapitolで作られたバックジャケットに書かれていた "The Elements" は結局作られず、これが2004年の『Smile』だが、スピーカーから流れる音に時の刻みは存在していない。
ブライアン、ありがとう。こんな素敵なアルバムを届けてくれたなんて。聴き終えて私は感謝の気持ちで一杯になった。
なお日本盤は "Heroes And Villains" と "Cabin Essence" のインストがボーナス・トラックで付くので、そちらを待とう。
また、 LP もリリースされ、こちらには4曲のインストのボーナス・トラックが付くそうだ。こちらも必要だね。(佐野)
私がビーチ・ボーイズに出会った1970年から34年間、何回か『Smile』がリリースされるというインフォメーションを見た。しかしガセネタばかりで、『Smile』の LP のブートがリリースされた時は、我々ファンの間では驚天動地の衝撃が走ったものだ。
ブートの『Smile』は、2枚組の LP になった時、 CD になった時などに、一気に多くの未発表トラックを発表し、その都度、ファンを気持ちを騒がせた。
しかし徐々にネタがなくなり、またインストのみやデモ状態のテイクの多さに辟易してきて、結局こんな程度しか出来ていなかったのかなと、色あせて見えてきたことも事実。
それまで『Smile,Smile』と騒いでいた著名人達が、もう『Smile』はいい、などと言い出し、『Smile』は澱の中に沈殿してしまったかのようだった。
しかし、長くライヴ活動を続けて、音楽にポジティブになったブライアンは、ついに『Smile』に決着を付けようと取り組んだ。
噂は流れ、イギリスで『Smile』のライブが行われたと情報が入り、ほどなくしてブートが手元に届いた。
その感想は…先日のこのコーナーでレビューしたとおりである。
そして『Smile』はスタジオ録音で正規に届けられた。
まず最初に言っておくと、このスタジオ録音は、ツアーの模様とほぼ同じである。
そして緻密に計算されて作られた大傑作である。当時、録音されていた多くの『Smile』の断片を組み合わせ、不足している部分は書き足し、時には『Smiley Smile』のヴァージョンのいい部分も取り入れて、パズルを完成させて新しく録音した。
しかし37年もの歳月が経つとサウンドが違ってしまうのが常だ。レコーディングの進歩が、逆にサウンドを変えてしまう。
しかしこの『Smile』には、違和感がまったくない。
当時のブライアンがイメージして作り上げていた独特のサウンドが、見事に再現されていたのだ。深いキーボードの音像を核にしたシンプルでいて深遠なサウンドだ。
このサウンドと、高度なハーモニーを再現できたのは、ブライアンのソロ・ライブを復活させた現在のサポート・チームの力が大きい。特にダリアンの力が大きいとも伝えられる。
しかし、曲を書けるのはブライアンしかいない訳で、ブライアンは忌み嫌っていた『Smile』に向き合い、遂に決着を付けた。
本物の『Smile』ではない、ツアーの営業向けだなどと言う連中もいるだろうが、そんな雑音も簡単に吹き飛ばしてしまう力がこのアルバムにはある。そしてこの『Smile』は、今聴いても、他に例のない、斬新なメロディ、ハーモニー、アイデアが満載されたユニークなアルバムで、古さをまったく感じることがない。
では内容を振り返ってみよう。
まず既に発表されたもの、もしくはブートでお馴染みの当時のテイクをほぼ忠実に再現した曲がある。
"Our Prayer" , "Cabin Essence" , "Wonderful (Smile Version)" , "Surf's Up" , "Good Vibrations" , "Old Master Painter/You Are My Sunshine" がそれだ。
"Heroes And Villains" もシングル・ヴァージョンを基本に『Smile』用のヴァージョンなどをうまく散りばめたものだった。かつてのようなファルセットが出ないブライアンを補うべくポイントではハーモニーを付け、またヴォーカルをオン気味にしてサウンドに重量感を持たせていた。
"Cabin Essence" や "Good Vibrations" は緊張感に満ち実に新鮮な仕上がりだ。
次にアレンジの違いで新鮮なイメージになった曲がある。
"Wind Chimes" は基本は『Smile』ヴァージョンなのだが、『Smiley Smile』のエンディングの美しいコーラスからスタートするという見事な展開で二重丸。
"Mrs.O'Leary's Cow" はホイッスルのヴァージョンからスタート、すぐに "Fire" ヴァージョンになるが、ハーモニーを加え実にヘヴィでダイナミックなインストに仕上がり、こんなカッコいい曲だったのかと、認識が変わってしまった。そして新たな歌が付けられた曲がある。
"Roll Plymouth Rock" (= "Do You Like Worms" ) は出だしのタムが鳴っているパートに新たなメロディの歌を付け、ウガウガのコーラスには "Bicycle Rider" の歌が被り、ハワイ語の歌の後もフェイドアウトせずに主題へ戻るなど、ぐっと完成された作りになっていた。
"Barnyard" には、 "Heroes And Villains(Demo)" 後半の歌が被り、これはこの曲のためだったのかとまたビックリ。
"On A Holiday" は木琴のお馴染みの曲だが、新たな歌が付けられ、 "Do You Like Worms" の歌まで被っていた。
ちょっと無理やりつなげた感があるのは、エフェクトと共に消える短い "I'm In Great Shape" からブライアンのジャジーな歌が入った "I Wanna Be Around" 、大工道具を叩く "Workshop "、『Smile』ヴァージョンの "Vege-Tables" のメドレー。ただ "Vege-Tabels" のエンディングは『Smiley Smile』ヴァージョンのハーモニーできれいにまとめている。
そしてアルバムのハイライトがこれから紹介する2曲だ。
"Song For Children" ~" ChildIs Father To The Man" は、雄大なインストパートから "Holiday" のメロディのパートに変わったかと思うと、その都度新たに作られた歌が登場し、その後も今までブートで聴いてきた断片がモザイクのように組合わさり、めまぐるしく変わる曲想はまさに圧巻。
こういう曲が聴きたかったと、嬉しさで背筋がゾクッとした。
そして "In Blue Hawaii" は出だしの "Water" のハーモニーに新たな歌が付けられ、 "I Love To Say Da Da" に移るとさらに新たな歌詞の歌が付く。
これが実に洒落た心地良い歌で、ハーモニーも巧みで、もう最高の気分。
かつてCapitolで作られたバックジャケットに書かれていた "The Elements" は結局作られず、これが2004年の『Smile』だが、スピーカーから流れる音に時の刻みは存在していない。
ブライアン、ありがとう。こんな素敵なアルバムを届けてくれたなんて。聴き終えて私は感謝の気持ちで一杯になった。
なお日本盤は "Heroes And Villains" と "Cabin Essence" のインストがボーナス・トラックで付くので、そちらを待とう。
また、 LP もリリースされ、こちらには4曲のインストのボーナス・トラックが付くそうだ。こちらも必要だね。(佐野)
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