2004年9月30日木曜日

☆Paris Sisters:『Everything Under The Sun』 (Eric/11523-2)☆Paris Sisters:『Best Of The Paris Sisters』 (Curb/D2-78861)


 コアなポップス・ファンに人気の高いパリス・シスターズ。彼女達のアルバムは3枚しか残されていないのだが、その内の2枚が期せずして今年リイシューされたので、ここで紹介しよう。
美人3姉妹というルックスの良さに加え、リード・ヴォーカルを取るプリシラ・パリスのはかなげなウィスパー系ヴォイスのなんともいえない魅力、さらにプリシラは作曲も出来る才能も持ち合わせていて、他のガール・グループとは一線を画する存在だった。
前者は67年にRepriseレコードからリリースされた同名のアルバムのリイシューでジャケットも同じ。
中のブックレットには見たことのない彼女達の写真がカラーで多く収められ (近影もあり。プリシラは60歳でまだ縦ロールなのは凄い…)、 LP を持っている人も購入する必要がある。
プロデュースがジャック・ニッチェとマイク・ボーエンなので、フィル・スペクターのようなエコーがかかり、心地よい仕上がりになった好盤である。
特にプリシラが作曲した "My Good Friends" は転調が決まり、解放感のある見事な傑作となった。
バリー・マンの "See That Boy" もプリシラのロリータ・ヴォイスと、ウォール・オブ・サウンドが合体した不思議な魅力がある。
後者はサイドウォークから66年にリリースされた『Golden Hits of The Paris Sisters』なのだが、ジャケットを含め写真がひとつもなく、イラストと文字だけというあまりに味気無いものだった。
この LP のジャケットは彼女らの水着姿なので、ジャケットだけでも売上は倍以上期待できたのに、残念無念。前者の CD のブックレットに小さいながらこの LP ジャケットが載っているので、見たことのない人はそれで我慢しよう。
プロデュースはヒット・メイカーのマイク・カーブだが、前者に比べてサウンドがチープで出来はイマイチ。
ここでもプリシラ作の流麗なメロディの "I Don't Give A Darn" が、爽快なアップ・テンポのサウンドと組合わさって、アルバムのベスト・ナンバーになった。
最後のボーナス・トラックの "Always Waitin'" は、65年のマーキュリーでのシングルである。(初 CD 化ではない)
なお、この CD 、アマゾンで696円と信じられないほど安い。(佐野)
  
シング・エヴリシング・アンダー・ザ・サン! ! !    Best of
                              

2004年9月25日土曜日

Radio VANDA 第 54 回選曲リスト(2004/10/07)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集Kinks

1. You Really Got Me ('64)
2. I Believed You ('63) ... Ravens
3. Revenge ('64) ... Long Version
4. Tired Of Waiting For You ('65)
5. David Watts ('67)
6. Waterloo Sunset ('67)
7. Autumn Almanac ('94) ... from 1st Version
To The Bone
8. Scrapheap City ('73) ... Single Version
9. Everybody's A Star ('76) ...
Celluloid HeroesVersion
10. Come Dancing ('82) ... 12 inch Long Version
11. Tokyo ('82) ... Live In Tokyo
12. Do It Again ('85)
13. When You Were A Child ('86)
14.
うな重 ('91) ... 真島昌利

 

 


☆Who:『Live In Boston』(ワーナー/WPBR90359) DVD 

初来日を果たした感動の日本公演から10カ月前、2002年の9月24日にボストンで行われたライブの DVD である。
この年の6月27日にジョン・エントウィッスルが亡くなっており、ピートとロジャーの2人に、ドラムにザック・スターキー、ベースにピノ・パラディーノ、キーボードにジョン・バンドリック、ギターにサイモン・タウンゼンドという日本公演とまったく同じスタッフによる、現在のフーそのままのライブとなった。
基本的にセット・リストは日本とほぼ同じで、全21曲143分披露しているが、日本はここから7曲カットし、その代わりに新曲の "Real Good Looking Boy" と "Old Red Wine" を入れた87分だった。
なんと56分も短かった訳で、単独公演が切望されるところだ。
フーのファンしかいないので、客の乗りが良く、そのためメンバーのテンションも高い。
いい相乗効果が楽しめる。日本公演には無く、この DVD でしか見られない7曲は "Another Tricky Day" 、 "Relay" 、 "Bargain" 、 "Sea And Sand" 、 "Eminence Front" 、 "You Better You Bet" 、 "The Kids Are Alright" 。その中で目立ったことは "The Kids Are Alright" が途中からアレンジが変わって7分もあり、時代に合わせていた工夫。
そしてピートのソロの "Eminence Front" では、ロジャーはずっとギターを弾いていたが、他の曲でもしばしばロジャーはギターを持っているので違和感はなかった。
日本公演に比べて、ピートのギターが大音量なので、ビートが効いていてカッコいい。
パワフルなギター・プレイ、得意の風車弾きも連発し、ピートには年齢を感じさせないパワーが満ちている。また、ロジャーのヴォーカルも良く出て、ロッカーとして面目躍如の感がある。
手数が多いザック・スターキーのドラム、ピノのベースと合わせて、まさにサウンドは「ザ・フー」。全体的には "I Can't Explain" 、 "Substitute" 、 "Baba 0'Riley" "、Love Reign O're Me" そして "Pinball Wizard" から "See Me Feel Me" までのメドレーが個人的なお気に入り。(佐野)
   

The Who - Live in Boston
                                 

2004年9月17日金曜日

☆Brian Wilson:『Smile』 (ワーナー/WPCR11916)

 ついに『Smile』がリリースされた。
私がビーチ・ボーイズに出会った1970年から34年間、何回か『Smile』がリリースされるというインフォメーションを見た。しかしガセネタばかりで、『Smile』の LP のブートがリリースされた時は、我々ファンの間では驚天動地の衝撃が走ったものだ。
ブートの『Smile』は、2枚組の LP になった時、 CD になった時などに、一気に多くの未発表トラックを発表し、その都度、ファンを気持ちを騒がせた。
しかし徐々にネタがなくなり、またインストのみやデモ状態のテイクの多さに辟易してきて、結局こんな程度しか出来ていなかったのかなと、色あせて見えてきたことも事実。
それまで『Smile,Smile』と騒いでいた著名人達が、もう『Smile』はいい、などと言い出し、『Smile』は澱の中に沈殿してしまったかのようだった。
しかし、長くライヴ活動を続けて、音楽にポジティブになったブライアンは、ついに『Smile』に決着を付けようと取り組んだ。
噂は流れ、イギリスで『Smile』のライブが行われたと情報が入り、ほどなくしてブートが手元に届いた。
その感想は先日のこのコーナーでレビューしたとおりである。
そして『Smile』はスタジオ録音で正規に届けられた。
まず最初に言っておくと、このスタジオ録音は、ツアーの模様とほぼ同じである。
そして緻密に計算されて作られた大傑作である。当時、録音されていた多くの『Smile』の断片を組み合わせ、不足している部分は書き足し、時には『Smiley Smile』のヴァージョンのいい部分も取り入れて、パズルを完成させて新しく録音した。
しかし37年もの歳月が経つとサウンドが違ってしまうのが常だ。レコーディングの進歩が、逆にサウンドを変えてしまう。
しかしこの『Smile』には、違和感がまったくない。
当時のブライアンがイメージして作り上げていた独特のサウンドが、見事に再現されていたのだ。深いキーボードの音像を核にしたシンプルでいて深遠なサウンドだ。
このサウンドと、高度なハーモニーを再現できたのは、ブライアンのソロ・ライブを復活させた現在のサポート・チームの力が大きい。特にダリアンの力が大きいとも伝えられる。
しかし、曲を書けるのはブライアンしかいない訳で、ブライアンは忌み嫌っていた『Smile』に向き合い、遂に決着を付けた。
本物の『Smile』ではない、ツアーの営業向けだなどと言う連中もいるだろうが、そんな雑音も簡単に吹き飛ばしてしまう力がこのアルバムにはある。そしてこの『Smile』は、今聴いても、他に例のない、斬新なメロディ、ハーモニー、アイデアが満載されたユニークなアルバムで、古さをまったく感じることがない。
では内容を振り返ってみよう。
まず既に発表されたもの、もしくはブートでお馴染みの当時のテイクをほぼ忠実に再現した曲がある。
"Our Prayer" , "Cabin Essence" , "Wonderful (Smile Version)" , "Surf's Up" , "Good Vibrations" , "Old Master Painter/You Are My Sunshine"
がそれだ。
"Heroes And Villains"
もシングル・ヴァージョンを基本に『Smile』用のヴァージョンなどをうまく散りばめたものだった。かつてのようなファルセットが出ないブライアンを補うべくポイントではハーモニーを付け、またヴォーカルをオン気味にしてサウンドに重量感を持たせていた。
"Cabin Essence"
"Good Vibrations" は緊張感に満ち実に新鮮な仕上がりだ。
次にアレンジの違いで新鮮なイメージになった曲がある。
"Wind Chimes"
は基本は『Smile』ヴァージョンなのだが、『Smiley Smile』のエンディングの美しいコーラスからスタートするという見事な展開で二重丸。
"Mrs.O'Leary's Cow"
はホイッスルのヴァージョンからスタート、すぐに "Fire" ヴァージョンになるが、ハーモニーを加え実にヘヴィでダイナミックなインストに仕上がり、こんなカッコいい曲だったのかと、認識が変わってしまった。そして新たな歌が付けられた曲がある。
"Roll Plymouth Rock" (
"Do You Like Worms" ) は出だしのタムが鳴っているパートに新たなメロディの歌を付け、ウガウガのコーラスには "Bicycle Rider" の歌が被り、ハワイ語の歌の後もフェイドアウトせずに主題へ戻るなど、ぐっと完成された作りになっていた。
"Barnyard"
には、 "Heroes And Villains(Demo)" 後半の歌が被り、これはこの曲のためだったのかとまたビックリ。
"On A Holiday"
は木琴のお馴染みの曲だが、新たな歌が付けられ、 "Do You Like Worms" の歌まで被っていた。
ちょっと無理やりつなげた感があるのは、エフェクトと共に消える短い "I'm In Great Shape" からブライアンのジャジーな歌が入った "I Wanna Be Around" 、大工道具を叩く "Workshop "、『Smile』ヴァージョンの "Vege-Tables" のメドレー。ただ "Vege-Tabels" のエンディングは『Smiley Smile』ヴァージョンのハーモニーできれいにまとめている。
そしてアルバムのハイライトがこれから紹介する2曲だ。
"Song For Children"
" ChildIs Father To The Man" は、雄大なインストパートから "Holiday" のメロディのパートに変わったかと思うと、その都度新たに作られた歌が登場し、その後も今までブートで聴いてきた断片がモザイクのように組合わさり、めまぐるしく変わる曲想はまさに圧巻。
こういう曲が聴きたかったと、嬉しさで背筋がゾクッとした。
そして "In Blue Hawaii" は出だしの "Water" のハーモニーに新たな歌が付けられ、 "I Love To Say Da Da" に移るとさらに新たな歌詞の歌が付く。
これが実に洒落た心地良い歌で、ハーモニーも巧みで、もう最高の気分。
かつてCapitolで作られたバックジャケットに書かれていた "The Elements" は結局作られず、これが2004年の『Smile』だが、スピーカーから流れる音に時の刻みは存在していない。
ブライアン、ありがとう。こんな素敵なアルバムを届けてくれたなんて。聴き終えて私は感謝の気持ちで一杯になった。
なお日本盤は "Heroes And Villains" "Cabin Essence" のインストがボーナス・トラックで付くので、そちらを待とう。
また、 LP もリリースされ、こちらには4曲のインストのボーナス・トラックが付くそうだ。こちらも必要だね。(佐野)


 
 



2004年9月14日火曜日

☆Who:『YOKOHAMA 24・07・04』 (themusic.com)

フーのライブを全て CD 化してファンに届けている www.themusic.com から、7月24日に待望の初来日を果たしたフーの横浜でのライブが届いたので紹介しよう。
フーは『ロック・オデッセイ2004』に参加するために来日、ピート・タウンゼンド、ロジャー・ダルトリーの他はザック・スターキー、ピノ・パラディーノ、サイモン・タウンゼンド他という最近のベスト・メンバーでライブを行った。
長年、夢を見ていたフーのライブは、こういったフェスティヴァルなので、持ち時間が短く、86分と短めで終わってしまったが、とにもかくにも生でピートとロジャーの姿が見えただけで満足してしまった。私の席からは遠すぎて、モニターでしかよく見えなかったけど、その場に居合わせただけでよかった。
音とは関係ないが、ピートは黒いTシャツにサングラスがよく似合い、実にカッコいい。スレンダーだし、精悍な体は、得意の風車弾きなどパワフルなステージ・アクションに不可欠だろう。
曲は "I Can't Explain" からスタート、 "Subsititute" から "Anyway Anyhow Anywhere" と初期のナンバーが続き、 "Baba O'Reiley" のイントロが登場すると大きな歓声が会場を覆う。
"Behind Blue Eyes" の後はピアノで "Can'tHelp Falling In Love" が弾かれすぐに "Real Good Looking Boy" へ変わっていった。
そしてピートの「日本は初めてだ。来ようとは思っていたんだけど。ファンタスティックだ」というコメントが入り、大いに盛り上がる。ただ、このコメント、マイクの状態が悪くて、ステージで聴くよりはるかに聴きにくいのが残念。
そして "Who Are You" , "5:15" と続き、このステージのハイライトのひとつ "Love Reign O've Me" が登場する。ロジャーの声がよく出ていて、感動的だった。
そしてピートがバックのメンバー紹介するが、一番人気はザック・スターキー。 "My Generation" はピノのベースが控えめで残念、さらにすぐにリズムが変わってしまってブルース調になってしまうのもいまひとつ。
新曲の "Old Red Wine" をはさみ、 "Won't Get Fooled Again" が登場し再び大歓声が会場を包むが、ちょっとザックのドラムの入り方がよくない。一瞬なのだががモタモタした印象が残ってしまう。
ここでメンバーはステージを引き上げ、アンコールへ移る。
最後は『Tommy』メドレーだ。 "Pinball Wizard" , "Amazing Journey" , "Sparks" , "See Me Feel Me" の4曲はまさに鳥肌もの。
特に "See Me Feel Me" は、ステージで聴くと霊的な力があるようで、思わず一緒に歌ってしまうパワーがあった。
最後はピートが2年ぶりにギター・スマッシュを行い (横浜のみ)、ギターはネックを残して木っ端みじん、その光景がスローモーションのように思い出された。
やはり実際に行ってよかったと、 CD を聴きながら思った次第。翌日の大阪のものも販売されている。(佐野)


2004年9月4日土曜日

☆Moody Blues:『The Lost Performance Live In Paris '70』 (SRO/D2959) DVD


ムーディーブルースの最高の時期はやはり1969年の『To Our Children's Children's Children』から1971年の『Every Good Boy Deserves Favour』だが、その真っ只中の1970年のライブという、奇跡のような DVD がリリースされた。
ただ、これはフランスの当時のテレビ番組の映像で口パク。だから曲はフェイドアウトしてしまうし、ハモンドオルガンからメロトロンの音が出て来てしまうなど、気になる点があるにはあるが、そんな事よりも黄金時代のムーディーブルースが、黄金時代の曲をリアルタイムで歌ってくれるのだから、もうそれだけで100点満点である。
 しかしフランスの客はムーディーブルースが目の前で歌ってくれているのに後ろを向いて話したり、目の前から荷物を持って途中退席したり、拍手が少なかったりと、態度が悪いことこの上ない。
タバコも吸いながら見ているし、テメエら叩き出すぞって叫びたいところだが、ここはジャティン・ヘイワードの美しい顔を見てガマンガマン。
曲はこの当時『A Question Of Balance』が最新盤だったので、 "Tortoise And Hare" や "Don't You Feel Small" という信じらない曲も登場する。
ライブでお馴染みの "Ride My See-Saw" や "Lovely To See You" 、もちろん "Nights In White Satin" "Tuesday Afternoon" など、お馴染みのナンバーが嬉しいが、ムーディーブルースファンなら感涙の "Candle Of Life" がハイライト。ライブでは演奏しない曲だったので、口パクならではだ。
また "Gypsy" もカッコいいなあ。
そしてもうひとつのハイライトがもちろん "Question" 。ただこのヴァージョン、レコードとは違うシンプルな別ヴァージョンでこれは必聴だ。
この曲以外でも、別ヴァージョンを使っていたり、マイクのヴォーカルがオンだったりと、曲によってオケが違っていた。私は74年のムーディーブルース初来日の時にコンサートへ行っているが、意外にもかなり音がでかく、そんなにレコードのような繊細なサウンドが楽しめなかった記憶があるので、この別テイクも交ざる口パクはけっこう気にいっている。
全13曲、黙って買いましょう。(佐野)