この手のC級(失礼)の発掘音源は、過去にも”幻の名盤解放同盟”の監修によってP-Vineでリイシューされていたシリーズや、TV朝日『タモリ倶楽部』の放送を中心に多く紹介され、好事家の間で大いに話題になったものだ。もうこれ以上レアな音源には巡り会わないと思っていた昨今だったが、今回取り上げる本作で唖然とする未発掘お宝に巡り会えた。
特に問題作といえるのは、近代ロシアのマエストロ、アラム・ハチャトゥリアン作曲
「剣の舞」に無理矢理な歌詞(なかにし礼先生による)をつけたカバー。ミーコ風でもありミュージカル仕立ての大風呂敷なアレンジと、尾藤イサオの緩急凄まじいヴォーカ
ルに苦笑しながらも圧倒される。
またVANDA的に最もお薦めなのは、草刈正雄による「アローン・アゲイン」(ギルバート
・オサリヴァン作)だろう。音質に全く構わない企画モノ(失礼)楽曲が多い中、このソフト・サウンディン・ミュージックはどうだ。そのもその筈で、はっぴいえんどの第一号ミキサーである島雄一氏(ワイルドワンズ島英二の兄)がミキシングを担当している。何とも爽やかナイス・ガイなソフトロックは、マーク・リンゼイの「愛のプレリュード」(ニコルズ&ウィリアムス)を思わせる素敵な仕上がりなのだ。
実は筆者は、このコンピレーション企画の基となった、TBSラジオ「伊集院光・日曜日の秘密基地」”おバ・カバー・TOP40カウントダウン”(03年6月15日放送分)もしっかり聴いていたのだが、最も記憶に残ったのが、内山田洋とクールファイブによる「イエスタディ・ワンス
・モア」のカバーだった。
今回その収録が見送られたのが極めて残念でならないのだが、巻き舌になりつつも木訥な小林正樹のリード・ヴォーカルは、正に”おとぼけ親爺
のソフトロック”というべき希有で忘れがたいスタイルであった事を記しておく。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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