2004年2月22日日曜日

Radio VANDA 第 47 回選曲リスト(2004/03/04)



Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集Dennis Wilson

1. Little Bird ('68)
2. Do You Wanna Dance
 ('65)
3. In The Back Of My Mind
 ('66)
4. Slip On Through
 ('70)
5. It's About Time
 ('70)
6. Forever
 ('70)
7. San Miguel
 ('70/'81)
8. Sound Of Free
 ('70)...Dennis Wilson And Rambo
9. Lady
 ('70)...Dennis Wilson And Rambo
10. Barbara
 ('71/'98)
11. Cuddle Up
 ('72)
12. Only With You
 ('73)
13. My Diana
 ('77)
14. You And I
 ('77)
15. School Girl
 (-)from"Bamboo"
16. You Are So Beaufiful
 ('80/'02)

 



2004年2月18日水曜日

☆ビギン:『いつまでも/ユガフ島』(テイチク/TECN15957)



八重山や宮古へ訪れたことがある人にとって、ビギンの音楽は特別なものになる。コーラル・ブルーの美しすぎる海、碧い空に涌き立つ雲、サンゴの白い浜にはアダンやモンパの木の命溢れる緑が輝く。
そのとっておきの場所が、自分達以外に誰もいない。
みんなに知って欲しくて、でも決してついででは来て欲しくない、そんな特別な場所が八重山・宮古にはいくつもあるのだが、ビギンの島唄を聴くと、目の前にそのとっておきの場所がふと現れるのだ。
ウチナーの旋律が織り込まれながらヤマトの私達の心の琴線にも触れる懐かしさは、それが日本人の現風景につながっているからだろう。
比嘉の優しさ溢れる歌声にも、いつも心が動かされる。
さらに今回の CD が素晴らしいのは、初回盤にこの2曲の DVD が付いている点だ。
3人が島をずっと歩き続ける「いつまでも」もとてもいいが、特に気に入ったのが竹富島を写し続けた「ユガフ島」だ。
ああ、これはコンドイ浜だ、この木陰から見える海は星砂の浜だ、私のとっておきの場所が、実際の映像となって現れる。八重山の言葉を多く織り込んだ「ユガフ島」を聴いて、今年も早く「帰りたく」なった。
もう6年連続で、この八重山・宮古へ行く決意だったのだが、1日も早く行きたい、「郷愁」は映像を見るたびに募るばかりである。是非、みんなも行って欲しいな。(佐野)
商品の詳細

☆George Harrison:『The Dark Horse Years 1976-1992』(Capitol/GHBOX1)

長い間廃盤状態だったジョージ・ハリスンのダーク・ホース時代のアルバムが全て再度 CD 化されたが、日本盤は CCCD なので、買うのは輸入盤以外あり得ない。
それもスペシャル DVD が付いたこのボックス・セットしかないだろう。
おまけに DVD はオール・リージョンだ。
『Thirty Three 1/3』、『George Harrison』、『Somewhere In England』、『Gone Troppo』、『Cloud 9』、『Live In Japan』の6枚に、 DVD が付いてamazon.co.jpで13000円ちょっと、選択肢はひとつだけだね。
アルバムについては、もうお馴染みのものばかりなので、ここでは触れず、スペシャル DVD の内容のみを紹介しよう。
基本的に、ジョージのモノローグに沿って進んでいくのだが、貴重な映像が多く収録されている。
まず嬉しいのは91年のライブ・イン・ジャパンの映像で、完全収録は "Cheer Down" , "Devil's Radio" , "Cloud Nine" , "Taxman" の4曲。(一部だけなら"Give Me Love"などもある)
ジョージの巧みなスライド・ギターと、"Taxman"でのエリック・クラプトンのプレイも楽しめる。
願わくば "While My Guitar Gently Weeps" が見たかったが…。当時の記者会見の模様もある。
結局、このツアーは日本のみで終わったので、当時行っておいてよかったな。
そしてビデオ・クリップ集もとても嬉しい。
収録されたのは"This Song" , "Crackerbox Palace" ,"Faster" , "Got My Mind Set On You" (2ヴァージョン), "When We Was Fab" , "This Is Love"の7トラックだが、男の子が女の子にバレリーナのフィギュアを取ってあげようと奮闘する "Got My Mind Set On You"のビデオ・クリップが可愛くていい。映像的なセンスもベスト。
さらに「上海パラダイス」の映像と、その時のジョージのレコーディングの模様が織り込まれていた。
既に CD を持っていた人も、この DVD のためだけにもこのボックスを入手する必要があるだろう。(佐野)


2004年2月15日日曜日

☆Beach Boys:『Good Vibrations Tour』(Eagle Vision/EREDV336) DVD



 このDVDは、1976年にNBCのTVスペシャルとして放送された「It's OK」を収録したものだ。
あの「An American Band」にもここからのシーンが多く使われていた。
ベッドの中から話すブライアンや、警官に無理やりに海に連れていかれてサーフィンをさせられるシーンなどは、みなさんもよくご存じだろう。
基本的には76年のアナハイムでのライブステージが中心で、脱退中のブルースを除く5人のメンバーによる、実に安定したライブが楽しめる。
ただし見所は、別撮影のシーン。ブライアンがリード・ヴォーカルを取り、メンバー全員と、ゴスペルのコーラス隊による、ピアノだけの伴奏の "That Same Song" が素晴らしい。
また、ブライアンがピアノを弾きながらリード・ヴォーカルを取り、その横で、時に笑いながらデニスとカールがコーラスを付ける "I'm Bugged At My O'l Man" の二つが最大の見所。
さらに美人コンテストの審査員として、美女たちを見つめるデニスが、なんとも様になる。
やはり、彼はカッコいいね。
(佐野)

グッド・ヴァイブレーションズ・ツアー [DVD]

2004年2月11日水曜日

the Sweet Onions:『pictures』(philia records/PHA-10)


the Sweet Onionsは98年に結成された、男性3人からなるギター・ポップ系バンドで、本作がファースト・アルバムとなる。
このバンドの魅力はその親しみやすい甘いメロディと、リーダーでヴォーカル&ギターを担当する近藤健太郎のソフティーなヴォーカルであろう。では早速本作を紹介しよう。

80年代初頭のネオ・アコースティック・ムーブメントを一つの起源としたこのシーンは、元を辿れば嘗てのバーズやバッファロー・スプリングフィールド等のサウンドに行き着くのだが、その善し悪しを左右するのはやはりソングライティングのレベルに尽きる訳だ。
その点、この『pictures』で聴かれるソフトサウンディング・ミュージックは、数多存在するギター・ポップ・バンドとの器の違いを強く感じさせる。
 中でも「Dirty weekend」や「long journey」における、ロディ・フレイム的なソングライティング・センスと近藤の存在感溢れるヴォーカルは、筆者に十数年振りにその魅力を教えてくれた、JETLAGに近い世界観を持っている。

今後の課題としては、上記で挙げた英詞曲もアルバムの半数を占める日本語歌詞で自然に表現出来る様になれば、さらにエヴァーグリーンなポップスとして昇華させる事が可能であろう。 とにかく今後の展開が楽しみなバンドといえるだろう。
(ウチタカヒデ)

2004年2月1日日曜日

Lamp:『恋人へ』 (MOTEL BLEU/MBRD-005) ミサワマサノリ対談レビュー

 
 昨年の春に『そよ風アパートメント201』でデビューしたLampのセカンド・アルバム、『恋人へ』が早くも届いた。
 本作ではさらに音楽性の幅を広げた新路線の曲も収録し、日本語の歌詞によるポップスの可能性を追求した意欲作に仕上がっている。
 ここでは実際に今回のレコーディングにサポート・キーボーディスト兼ホーン・アレンジャーとして参加した、本枠でもお馴染みのbonjourのメンバーでLike This Paradeことミサワマサノリ氏に話を聞いてみた。

ウチタカヒデ(以降U):今回の『恋人へ』を聴いて先ず感じたのは、前作よりリラックスした音作りになっているんだけど、それが各々の音楽的資産をより多く引き出したのかなという感じです。
永井君の「ひろがるなみだ」や染谷君の「雨のメッセージ」等は『そよ風』の音からは全然イメージ出来なかった。ハーモニーに対しての飽くなきアプローチは相変わらずだけど、嬉しい裏切りっていうか、バンドが成長していく過程が聴いていて理解出来たね。
ミサワ君は実際にレコーディングに参加して、どんな印象を持ちましたか?

ミサワマサノリ(以降M):アルバム全体の仕上がりは、コトバの世界がもつ淡い文学とその文脈を支える繊細なアレンジ。そういうところが随所に光る、といか。そんな印象ですよね。
「水」かなー。日本のポップスの文脈で云えば例えば、荒井由実の「海を見ていた午後」とか、あるいは松任谷正隆の「香港Night Sight」とか。個々の楽曲が持つ語感や和声、音響、随所に感じる印象はそんな感じです。
全体の構成は、例えばS&GのBOOKENDSのような諦観というか、ちょっと乾いた空気がありますよね。この妙なネジれ感覚、非常に文学的なネジれだと思うんですけどLampの面白味ですよね。

U:成る程。「水」っぽさとは情緒的なもので、そのネジれ感覚というのも他の同世代のアーティストとの決定的な違いだと断言できるのね。このサウンドだけ取っても75年頃に聴いても恐らく違和感無いでしょう。古いって事じゃなくて普遍的というのかな。実に自然なんですよ。言うのは簡単なんだけどね。
手塩に掛けて育てられたけど、箱入りじゃなくて天真爛漫に成長したって感じかな。理想の嫁さんみたいな(笑)。
アレンジにも大きく関わったミサワ君が、手前味噌にならない為に先に挙げるけど、染谷君の「日曜日のお別れ」の完成度はやけに高いよね。
この複雑な転調を自然に聴かせるというのは職人級です。このデモを最初に聴いて、ホーン・スコアを書く時は結構大変だったでしょう?

M:情緒、そうですね。文学的叙情から発展した情緒というか。
「日曜日のお別れ」はデモを受け取って、最初にボクが作ったアレンジはもっとこう、ニュー・ソウルっていうか、コンガがスネアと一緒に鳴っいて、ウーリッツァがコードを刻んで、ハンドクラップが入る、、みたいな。。全くのドニー・ハサウェイ・スタイルですよね。
それで染谷君をためしたんです。ホーンに裏拍があって揺れるグルーヴ、そういうの大丈夫?って(笑)。でそれからやりとりして、じわじわと言葉の情緒が音に染み渡ってきた。
曲中、「曖昧な、」からウォーキング・ベースに変わる、あれはリハーサルで偶然生まれたものです。何の気なしにJAZZスタイルでコードを弾いてたら、それに永井くんが喰いついてきた(笑)。
「遠ざかる」からの変拍子部分のホーンはとにかくトップの音階に気をつけました。Lampの和声と転調の繊細さを活かす為には、スムーズなフレーズって絶対条件だし。でとにかく譜割りはグルービィに行こう、と。例え変拍子でもグルービィだ、と。 すごく気に入っているアレンジです

U:このエレピはドニーもだけど、ゲットバック・セッション時のビリー・プレストンのテイストもあるよ、フレーズとか(笑)。永井君のベースでは2コーラス目の「ふと見上げた」の後一瞬ペダルになる箇所なんか、まるでポール・マッカートニーだ。コード進行的にはスティーヴィー・ワンダーの匂いがするパートもあったり、ミサワ君が書いたブラス・スコアでは、やはり「遠ざかる」の裏拍から黒っぽくて凄く気持ち良いのね。ビートルズの「Martha My Dear」的な感じもして。
こういう瞬間にポップス好き且つソウル好きで良かったと思えるんだな。
後このストーリーの瑞々しさは、榊原さんによる歌詞の世界観がよく効いてますよ。二人称における受動態の効果的配置とか、非常に王道だけど表現がなかなか難しいです。時間の経過が途中でフラッシュ・バックして未来形になるラインも。

M:あ、「Martha My Dear」は本当にボクも大好きで。あれは芸術的に素晴らしいなー。っと、逸れましたね。


 

U:次は永井君の新路線的な「ひろがるなみだ」。甘酸っぱいコーラスと詩情溢れる歌詞がたまらないね。
「季節の終わり そして ひろがるなみだ」というフレーズは純文学の世界。にわか雨という季語から、夏の終わりから初秋なのかな。そんな季節の境目と青春の喪失感がオーバーラップしていく。
サウンド的にはプリファブ・スプラウトの『Andromeda Heights』なんかにもBB5の匂いを感じられる人に特にお薦め出来ます。ミサワ君は左チャンネルのオルガンで、アコピは永井君自身ですね。この曲についての印象はどうですか?

M:「ひろがるなみだ」はですね、デモの段階でほぼ今のカタチが出来ていましたドラムの入り具合やオルガンの味付け、ピアノの微妙なタッチ、サビで使うディミニッシュコード。永井君の楽曲のカラーですよね。
そういえばLampはディミニッシュの使い方が大胆だなあと感じます。ポップスでディミニッシュっていうと、転調処理か、経過音処理か、っていうのが多いと思うんですけど、Lampは堂々と使う。
それからこの曲の歌詞。ウチさんの指摘の通り、これはもう純文学ですよね。ボクはこの曲の歌詞の立体感に文学的な力量を感じます。
冒頭は「遠い街」や「どこか」というような主人公からも遠い何かであり、次に「橋の向こう」や「ガラス越し」のような「僕」は近くだけど、気持ちは遠い状態、最後にやっと「僕の部屋」が出てくる。
そういう動的な距離の作り方の一方で喪失感。アドレッセンスの喪失は終始一貫変わらない。この二重構造っていうか、立体感覚ってもう完全に文学ですよね。
で、そういう不安定な立体感をディミニッシュで支える。
うーん、ウマいなー、と。見事ですよね。

U:永井君ってルックスもそうだけど、デミニッシュを大胆に使うってジョージ・ハリスンっぽいんだな。ミサワ君指摘するところの距離感を効果的に感じさせる歌詞と相まって、心にじわじわ染みて泣けてくる。イズント・イット・ア・ピティ~ってね。
さて、本作でのそれぞれ二人の代表的な曲を聴いてみた訳だけど、やはり作風の違いが前作よりくっきり分かれてきたという感じですね。
各々がLampとして意識を持って創作しているから、バンドの幅が広がったサウンドがさらに開花したという感じですね。
では、そのあたりの分析を踏まえて、最後にこのアルバムの総評をお願いします。

M:成熟した側面ばかりに触れてしまいましたけど、一方でLampはバンドとしての勢いってあると思うんです。だからこそ、それぞれのカラーが確立しはじめた二人の作品が気持ちよくなじむ。バンドとしての勢いって、ある種の若さですよね。
その一方の達観。歌詞の構造や和声に著しいと思うんですけど、勢いに任せずに熟成させようとするチカラ。
このアルバムは両者の拮抗がバンドのマジックにうまく溶け合ってると思う。
そういうところが、70年代の日本のポップス、又は米国のSSW達、或いは80年代の突然変異的なUKアコースティック・シーンとか?そういったところの名盤と比較されるところかなーと。これは1stと比べると著しい成長だと思います。
雰囲気だけでは語れないという意味で。こういう達観って、先々あまりに激シブに行き過ぎちゃう、ってあるじゃないですか(笑)。
Lampはね、その点、どこかしら必ずポップなんです。それは、普段二人とハナシなんかしていてよく分かる自然体なんですよね。ホントに。
職人的でいて自然体、それはLampの、彼らの魅力なんでしょうね。


(設問作成&テキスト:ウチタカヒデ