近年バカラックがフィールドの異なる才人とコラボレートした作品として、98年のエルヴィス・コステロとの『Painted from Memory』が挙げられるが、共同の新作でお互いががっぷり四つに組んだ意欲作といえるものだった。(バカラック単独で作曲された曲もあったらしい)
一方本作は表向きはコンポーザー兼アレンジャーとシンガーのコラボレートの体裁をしているものの、嘗てのディオンヌ・ワーウィックとの"水は方円の器に随う"といった関係を成している訳ではない。何といってもロナルドの真骨頂とされる歌唱法が本作の純然たる魅力であり、既に完成されている彼のシンガーとしての可能性をより引き出し、バカラック・クラシックに新たな息吹を当てようとしているのだ。つまりその構造関係は異なれ、『Painted from Memory』で結晶させた様な有機的コラボレートを目指しているのである。
レコーディングは嘗てフランク・シナトラやナット・キング・コールの名曲を生んだ、ハリウッドのキャピトル・スタジオで行われ、殆どの曲はリズム・セクションとオーケストラを同時録音したらしい。
そんな本作の中でも特出すべき曲として、B.J. トーマスで知られる「Raindrops Keep Fallin' on My Head」を挙げたい。 原曲の楽観的な三連リズムからは予想不可能な、ゴスペル・フィールに満ち溢れたロナルド節が崇高な余韻を残すばかりだ。
アイズリー全盛期にはキャロル・キングからジェイムス・テイラー、シールズ&クロフツ等の曲をディープ・メロウな解釈でカバーしていたが、30年を経ても変わらぬ姿勢にはただただ脱帽する。
(テキスト:ウチタカヒデ)
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