筆者が今、最もその紹介に力を入れているのが冨田勲だが、冨田の作品の中でも最も入手しにくいアルバムのひとつがめでたくリイシューされた。内容についてはVANDA29号で詳しく記述したが、作曲:冨田勲、作詞:八坂裕子のコンビで、アルバム1枚がひとつのストーリーとして組み立てられた73年リリースの本作は、同じコンビで同じコンセプトで71年にリリースされた西郷輝彦の『坂道の教会』と表裏一体の、対の作品である。
後者ではストーリーは西郷のモノローグで語られていたが、本作では、このアルバムのプロデューサーの栗山章が連れてきたフォークシンガーの男性が、曲間でピアノをバックに短く歌って進行を告げていく。そう、このアルバムはパーティーの一夜の出来事が描かれているので、時間の進行はこの無名の男性ヴォーカルが告げていく。曲は憂いを帯びたレトロな雰囲気を持つものが多く、朱里エイコの卓抜したヴォーカルと、冨田の広がりのあるオーケストレーションが見事に一体となり、魅力的な作品になった。
このリイシューを担当した濱田高志氏は、冨田勲自身にもインタビューしており、ここにも注目だ。まずは黙って購入すべき。大好きな『坂道の教会』のリイシューも切望したい。(佐野)
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