2002年1月27-30 と6月9-10日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた『Pet Sounds Tour』の様子を収録した DVD である。ロック史上最高のアルバムである『ペット・サウンズ』の再現という、このツアーのコンセプトを体言するため、 DVD にはアルバム全曲以外には、アンコールの "Good Vibrations" 1曲しか収められていない。つまり66年にリリースした曲しか入っていない訳で、通して見ると、実に的確な編集と言える。 コンサートの模様は、日本で会場に足を運ばれた方も多いと思うので、もう脳裏に焼きついていることだろう。あの『ペット・サウンズ』が、本当に再現できているのだ。 まず、バッキング・メンバーの完璧な演奏とハーモニーに驚かされるだろう。 ビーチ・ボーイズのツアー・メンバーではこうはいかない。ワンダーミンツやジェフリー・フォスケットらの力の賜物だ。そして肝心なブライアン。最初のツアーでは不安定だったブライアンの音程が、この2回目のツアーでは見事に復活し、ブライアンは全部のリード・パートを歌い通す。 何しろ、マイクやカールのパートまですべてのリード・パートを歌うのだ。 特に難しい "Don't Talk"を歌い通した時は、会場はスタンディング・オベーションの嵐。 会場のファンは、何を評価すればいいのか分かっている本当のファンばかりだ。高度な "I Just Wasn't Made For These Times"が再現された時は、そのまま体をサウンドの中に投げ出してしまったような幸せな感覚に包まれた。その当時は売り上げが伸びず、その後も風変わりなアルバムとして長く置かれたままだった『ペット・サウンズ』。Mojo誌でロック史上最高のアルバムに選ばれたように、90年代に入ってから『ペット・サウンズ』は伝説になった。 30年以上経って、ようやく時代が『ペット・サウンズ』に追いついたのである。(佐野)
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