2003年10月24日金曜日
モダーン今夜: 『赤い夜の足音』(MOTEL BLEU MBRD-004)
"モダーン今夜" は、リーダーでヴォーカリストのマキが大学在学中に結成したバンドを母胎に発展した、11人編成の非常にユニークなビッグ・バンドだ。
ホーンセクション3名にパーカッショニスト2名、それにヴァイオリニストまでを抱える大所帯である。 本作『赤い夜の足音』は、そんな個性溢れるバンドの記念すべきファースト・ミニ・アルバムだ。 メイン・ソングライターのマキの描く世界は、泡沫のメルヘンがシャボン玉の様に浮かんでは消え、浮かんでは消え、微かな飛沫からはペーソス溢れる人生模様が見え隠れする実にピュアなもの。
冒頭のしなやかなブラジリアン・グルーヴ「星屑サンバ」は、夢現になるトキメキを「ああ君にとどけ このメロディ」というフックのラインと、メンバー全員によるコーダのコーラスでさらに高揚させる感動的な曲だ。 「うたかた花電車」は60年代のR&Bからブラス・ロックを経由した昭和歌謡(ピン・キラ度高し)というべきサウンドに、場末のストリッパーの悲恋を赤裸に描いた異色作。 この曲のみキーボーディストのタムが単独で作曲を担当しているのだが、その技巧的センスはマキ共々一目置く存在といえる。 「涙の雨」はオールドタイミーなビッグ・バンド・サウンド。 殆どのメンバーがジャズ・プレイヤーとしての素養を持っているので、そのスインギングさは中途半端に終わらず聴き応えのあるものだ。 この曲でも悲恋が描かれているのだが、主人公のひたむきな生き様には心打たれてしまう。 聴き終わった後には雲一つない爽快感が残り、筆者が最も気に入った曲でもある。
アルバムは全5曲であるが、曲毎にサウンドと歌詞の完成度が高いので、曲数の少なさを全く感じさせない。 寧ろこの5曲に絞った事で成功したケースといえよう。 そして何より本作の素晴らしさは、潜在的に大正~昭和期に培われた、日本特有の折衷感覚と大衆性が脈々と受け継がれている懐の深さなのだ。 世代を越えて聴き込まれるであろう優良盤である事は間違いない。
(ウチタカヒデ)
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