流線形。数回のライヴとTOKYO BOSSA NOVAの最新コンピに収録された1曲が話題を呼んだ彼らのこの待望のデビューアルバム。そのタイトルは「シティ・ミュージック」。
聴く前から山下達郎、デオダート、CTI、リオンウェア、ブライアン・エリオット・・・、沢山のレコードの忘れられないフレーズが頭をよぎる。そんな元ネタ探しも楽しいけれど、振り返って素直に好きな音楽を見つけられた者の喜びはそれを上回る楽しさがあるはず。
流線形はそんな当たり前の提案を極めてハイクオリティーに、それでいてごく普通にボクらの前に広げて見せてくれた。
冒頭の「3号線」はコンパクトにまとまった8小節の鈴木茂meetsジェームス・ジェマーソン風イントロが見事。キラキラした言葉が冴える2曲目「恋のサイダー」。この2曲でアルバムの魅力がおぼろげながら見えてくる。
続いてアルバム前半の一つの頂点とも言える「東京コースター」は、TOKYO BOSSA NOVA収録曲から大幅にアレンジを変えての登場。絵画的なTOKYO BOSSA NOVAのヴァージョンも、躍動感溢れるアルバム・バージョンも流線形が持つ溢れんばかりのアイディアの一角なのだろう。CTIを思わせる雰囲気作りが心地よい。ある種の心地よさをサウンド面から追求していった70年代中期~80年代初頭の空気を今のグルーヴから構築していくスタイルを描ききった前半の3曲はいつまでも耳に残る。
続く後半は楽器の音色が耳をひく。中でも「エアポート'80」で使われるシモンズのエレドラ(!!)は、このアルバムの魅力を一層引き立てているし、流線形のレゾンデートルを明確にしている。堂々たるシティ・ミュージック。
アルバムの中で流線形は仮想東京の夜に向かって、エンディングまで一気に駆け抜けていく。
最後に気になった点を2つ。この見事なアレンジに包まれた楽曲群を聴いていると、時として耳は強烈な歌唱力を求めてしまう。その意味ではインストゥルメントと対等或いは負けないくらいに引っ張っていく歌が欲しかった。
もう一つはポップスという漠然たるものへの不安だ。それはアカデミズムなのか、ある種の躍動なのか、おそらくはその両方を抱え持つのだろう。シュガーベイブのリイシューCDの帯に書かれていた言葉を思い出す。
「え?そんなの25年前にシュガーベイブがやってるよ!」
その言葉を随分前のことのような、ちょっと前の事の様な両方の気分で思い出す。
確かにボクらのレコードの聴き方はついこの間まで、正にこんな感じ
だった様な気がする。しかしこのアルバムを聴いていると心地よく楽しんでいる自分が、一方で不安感を覚えているという妙な気分になる瞬間がある。
そしてあの頃の聴き方とは明らかに変化している事に気付く。とても不思議な気分だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿