食感で例えよう。「クリスピー」とか「クランキー」とか呼ばれる、あの感じである。
本作随一の楽しさは、鼓膜を軽く弾ませるような、クリスピーな新食感(新「聴」感)リズムにあるのだと思う。
ブラジルから、全く楽しい未体験の「歯ごたえ」の提示である。
しかしながら、それだけに滞まらないのがこのアルバムの凄いところ。驚くなかれ、楽器とプログラミングのほとんどがフェルナンダ自身の手によるとのことだ。第一の食感「歯ごたえ」にあたる軽快なリズム・アプローチはもちろんのこと、スリリングなコードワーク、真摯で存在感ある歌声、そして卓越した様々な楽器演奏技術という具合に、第二、第三と用意されている心地よい食感刺激----。
そのほとんど全てが彼女自身によるものだというのだから、その実力の高さに圧倒される。そして、甘さに流されず抑制の利いた個々の刺激の組合わさりが、まさに料理と呼ぶに相応しい統一感と説得力とを持っているのだ。
これはまさに五つ星シェフによる仕事である。味付けはもちろん甘さ控え目のサウダ味。ちょうど手動のコーヒーミルで豆を挽いた時のような、香ばしい
匂いと心地よい振動を体験出来るのが本作品だ。
2001年に『Sambassim』が大ヒット、昨年末には本国ブラジルのデビューアルバムがゴールド・ディスクに輝いた。新食感を追い求める日本人にとっても、これはたまらない新しい味覚に違いない。
(テキスト:石垣健太郎 / QYPTHONE)
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