世の中にはまだまだ若い才能が隠れているものだ。
今回紹介する『第七話』は、若干23歳の新鋭女性シンガー・ソングライター、オオタユキのファースト・ミニ・アルバムである。
彼女の紡ぎ出す作品は一人の女性の極めて等身大の姿を綴った歌詞と、オールド・タイミーなテイストが漂う、独特の気怠さを持つ曲とが毛糸で編み上げられた様な優しさと温かさに溢れている。その透明感溢れる歌声も相まって、マリア・マルダーからリッキー・リー・ジョーンズらをこよなく愛する往年のファンにも好意的に受け入れられるかも知れない。各曲、生のピアノとギターを軸に最小限の打ち込みを足した演奏なのだが、彼女の世界を誇大演出する事無く効果的に構成されている。
冒頭の「メロディー」の歌詞には一瞬ドキリとさせられるが、幼気さが残るプリミティヴな言葉使いには魅力を感じてしまう。
ヴォーカルに呼応する右チャンネルのレイジーなギターのフレーズも心に浸み入る素晴らしさである。アレンジ的にも最も完成されているのは「36°C」だろう。ピアノを基調にハモンド・オルガンのアクセントがドラマティックに曲を展開させる。
70年代初期の典型的SSWサウンドがソウル・フィーリングで彩られた様に幸福な融合性が瑞々しいのだ。
これは古くならないアレンジの典型であり、有能なシンガー・ソングライターを陰で演出するプロフェッショナルなスタッフの存在をひしひしと感じさせる。
(ウチタカヒデ)
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