大物GSで唯一、CD化が遅れていたワイルド・ワンズだが、なんと66年のデビューから71年までの解散までにリリースした8枚のオリジナル・アルバムに加え、別ヴァージョン、カセットのみの曲、CMソング、未発表ライヴ、未発表テイクなど貴重な音源がさらに3枚のCDにまとめられ、計11枚のCDが36PものLPサイズの豪華カラー・パンフレットと共にボックス・セットとしてリイシューされた。これは凄い!全166曲中初CD化が86曲、未発表曲も27曲入ったまさに究極のボックスである。そしてこれだけ充実した内容ながら価格は税込20000円とこれまた安い!初回限定生産なのですぐに買いに行くべき。解説はVANDA本誌でガロの充実した原稿を書いていただいた高木龍太さんが中心で、これも読みごたえ十分。さて、私は初めてワイルド・ワンズのアルバムをたどっていく事が出来たのだが、GSの中で彼らはロックよりもポップス、フォークに近いスタンスのグループであり、特にライブでは小編成のオーケストラと女性コーラスを従えるなど、バンド・サウンドへのこだわりはあまりないようだ。カンツォーネ、ジャズのスタンダードまで歌い、レターメンの後にクリームが出てくるのがワイルド・ワンズのライブだった。ファースト・アルバム『The Wild OnesAlbum』は全曲加瀬邦彦のオリジナル、12弦ギター中心の軽快なフォーク・ロック・ナンバーが並んだ日本GS史上の傑作アルバムに仕上がった。ここでは日本的な歌謡曲っぽいものは皆無だったが、アルバムを重ねる度にカバーが増え、シングル中心に歌謡化が進んでくる。しかしその中で音楽的なピークが再び訪れる。それが69年リリースのアルバム『The 5』である。このアルバムも全曲オリジナルながら加瀬は2曲のみで、渡辺6曲、植田2曲、鳥塚、島各1曲とメンバー全員が書き、特に新加入の渡辺茂樹の音楽的成長が著しく、ボサノヴァの名曲 "夢は流れても"は日本のポップ史上に残る傑作となった。また植田の "ハロー・ミスター・レイン"は植田得意の英語詞による洒落たナンバーで、これも聴きものだ。加瀬の "やさしい人々"も美しい。後期ワイルド・ワンズはハーモニーが充実しているが、このアルバムではこれらの曲を中心に効果的にハーモニーが付けられていた。10曲の編曲を担当した東海林修の力が大きい。この『The 5』はソフト・ロック・ファンに絶対おすすめの傑作である。なお、新星堂で予約した人には68年の「女学生の友」の付録ソノシートのCDシングルが付いてくるので、こちらがお徳。(佐野)
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