2001年2月18日日曜日

☆California:『Passion Fruit』(TYO/0046)




これこそ待ちに待ったという言葉が相応しい傑作が、ようやく姿を現した。カート・ベッチャーが心血注いで完成させながら発売拒否され、24年もの間眠っていたマスターテープを遂に聴くことが出来るのだ。ライナーには当時のカートと共同プロデューサーのゲイリー・アッシャーなどの言葉が書かれていて、未発表で終わるまでの経緯を初めて知ったが、既発表曲と、未発表の"Banana Boat Song"などのトラックにここまでの意見の相違があるとは思わなかった。ゲイリーらはカートに"Banana Boat Song"らは過剰にディスコの影響を受けているとして"I Love You So"のサウンドに回帰しろと訴え、カートはそれを聴き入れず、嫌気が差したゲイリーは最後に離れていったという事実。私はアコースティックギターとカートの美しいハイトーン・ヴォイスが溶け合った"I Love YouSo"は70年代を代表するナンバーになり得た傑作だと確信しているし、そして激しいビートに引っ張られた"Banana Boat Song"は(ディスコビートとは思えない)ビートとハーモニーが溶け合ったこれも前例のない大傑作ナンバーだと、ブートで聴いていた時から感じていた。これらのナンバーが混在しているからこの『Passion Fruit』は名盤だと思っていたのだが、統一感のないアルバムだとしてマイク・カーブに拒否されたとすれば、その見解には同意できない。バラード、ビートそのどちらも満たしたからビートルズは普遍なのであって、どちらか片方ではじきに飽きてしまう。『Passion Fruit』はカートのハーモニーも十分堪能できるし、ブルース・ジョンストンが書いた"Brand New OldFriends"(ブートで聴いた時にブルースっぽいナンバーだと思ったがまさかブルース作とは)というまた違った肌触りのウェットなバラードも楽しめる。とにかくこのアルバムは黙って買うべき。ボーナストラックに頭に前の曲が被っている"Happy In Hollywood"はシングル・ヴァージョン、後のRSOからのシングル2曲と12インチシングルのディスコミックス2曲、"We Can,Yes We Can"の歌詞を変えたCMソング"Head Shampoo"も収められ、これで完璧。最後に、ブートに入っていた"Banana Boat Song"はドラムのビートがもっと激しくコーラスも含めて圧倒的な音圧があり、個人的にはこちらの方がカッコいいので好き。他の曲でもパーカッションの数に違いがある。また、ブートに入っていた初期Californiaのアセテート、"Keep It Up"、"Preacher's Daughter"が収録されていない。カートのいない時のものだからしようがないが、この2曲もレベルが高かったので何らかの機会に出て欲しいものだ。(佐野)

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