このCDはフリー・デザインの新作で、クリス・デドリックが全11曲の内8曲を書き、2曲は兄のブルース、残る1曲はクリスとブルースの共作と、全曲新曲の完全なオリジナルアルバムである。音楽一家のデドリック家の兄弟姉妹はみな音楽で成功を収めていて、各地で多忙な生活を送っているのだが、前に紹介したブライアン・ウィルソン&ビーチ・ボーイズヘのトリビュート・アルバムでこのマリナ・レコードよりリリースされた『Caroline Now!』にフリー・デザインとして「Endless Harmony」のカバーで参加し、これがきっかけとなって新作の話が持ち上がり、再び兄弟姉妹が集まってこのアルバムが作られた。クリスとブルース、そしてサンディというオリジナルのフリー・デザインのメンバーに、若きレベッカ・パレットが加わり、男2人女2人というフリー・デザインのハーモニー・スタイルが出来上がった。さて肝心な出来だが、これが凄い!素晴らしいなんていう月並みな表現ではとても気持ちを洗わせない。なにしろ最後のアルバム『There Is ASong』から2年もの日時が経っているのだ。それまでの再結成アルバムというのは、ファンだけが楽しめる代物で、当時のクオリティが保たれている事はまずなかった。しかしこのアルバムは違う。歌声、ハーモニー、サウンド、アレンジすべてが当時の衝撃そのままに、いやさらにクオリティを増して迫ってくる。ポップ・フィールドに姿を現さなくとも、スター・スケイプ・シンガースなどで第一線を続けてきた実力と、きちんとした音楽教育を受けてきた彼らのインテリジェンスが、音楽を錆び付かせなかった。複雑で高度なコーラス・ワークを全面に出し、ヴォーカルの魅力を最大限聴かせてくれる。人間の声が最高の楽器だというのは私の持論だが、フリー・デザインのこのアルバムを聴いてさらに思いを深くした。そしてアコースティック・ギターとピアノ、トランペット、ヴァイオリン、チェロなどの当時と変わらない楽器構成は、実は今でも最も通用する「不変」の楽器構成であり、このアルバムを聴きやすくすると共に古さも感じさせない。2001年の最高傑作になるだろう、このアルバム、ともかく黙って購入して聴いて欲しい。絶対に期待を裏切らない。発売は2月23日。(佐野/ Special Thanks to Frank Laehnemann of Marina Records & Eric Mason)
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