このCDはブルース・ジョンストンの才能を愛する私や、多くのビーチ・ボーイズ・コレクターのマスト・アイテムになることは間違いない。現在Del-Fiレーベルのリイシューを一手に手掛けているElliot Kendall氏が、数多いマスター・テープの中からいくつもの未発表トラックを捜しだし、はたまたあの『Surf's Up』にも載っていないブルースが書いたシングル曲などを見つけだした。Elliotの努力に本当に感謝したい。さて本CDはCD2枚組で、完全に入ってるアルバムはブルースの最初のソロ・アルバム『Surfer's Pajama Party』で、これはかつてテイチクからもCD化されたものと同じ。しかし「Hide Away」「Summertime」「Ed's Number One」「John's Number Two」「Balboa Blue」「San-Ho-Zay」「Bruces's Number One」と7曲の未発表ライブが加えられた。歌があるものは「Summertime」1曲だけだが、インストはギターを中心にワイルドなプレイをしているものもあり聴きごたえがある。ただ同じくDel-Fiのライセンスで91年にリリースされたCD『One Beach Boys Original Album』(Woodford Music/5632)で初めて収録された「Blue Moon」、それと「I Need Your Love」などの曲は収録されていない。さらにテイチクのCDのボーナスに入っていたブルースのソロ・シングル2枚の内、歌い入りの「Do The Surfer Stomp Part1」はなぜか収録されなかったが、「Soupy Shuffle Stomp」はセッション風景や、別ヴァージョンのインストまで収められた。CDの冒頭を飾ったのは、このCDの目玉であるブルースが歌うマリアッチ風のオールディーズ・ナンバーの62年の未発表作「Mazatlan」で、やはりこれもセッションやインストまで収められた。つづいてディスク2にはグルーヴ感のある未発表インスト「Untitled Instrumental」からスタートする。The Bob Keene OrchestraとPharaosのシングル2枚はすべてブルースが書いた曲で、後者は古色蒼然としているが、前者はジャズ風の「Teen Talk」、映画のサントラのような美しい「The Toughest Theme」とどちらも十分楽しめる。特に「The Toughest Theme」は本CDのベスト・ナンバーだろう。ロン・ホルデンは既にCD化されたものからの4曲なので目新しいものではないが、Studs Donegan and The Mobの「The Bend/Rock N' Roll Honky Tonk」(Donna/1329)とMillard Woodsの「Don't Put Me Down」(Del-Fi/4150)の3曲はオフィシャル音源としては今までまったく知られていな かったブルースの書いた作品で驚かされた。前者はインストだが、後者は巧みにジャズのコード進行を使った洒落たナンバーで、これも本CDの目玉。その他Mel Carterのヴァージョンで知られていた「I'm Coming Home」のJanis Rado and The Sequins(Edsel/45-782)のヴァージョンもまったくの知られていなかったもので、ブルースはピアノでも参加していることから、こちらがオリジナルなのかも知れない。さらに『Twist Album』(Del-Fi/LP1222)からの収録曲「The Twist」にもブルースがピアノで参加して新発見、これらは早く『Beach Boys Complete』改訂版に書き加えたいものだ。音源全体としては60~63年のものなので、オールディーズ色が強くインストも多いので、ブルースらしいメロディ・ラインやサーフィン&ホットロッド調のハーモニーを期待していると肩透かしを食うだろう。しかし上記の幾つかの曲や、甘いメロディのバラード「Gee But I'm Lonesome」などを聴くと、その萌芽は十分にある。わずか17歳でDel-Fiへ来たという若きブルースのワークスはどれも貴重で入手困難なものばかり。日本のみ発売のシリアルナンバー入り限定盤なので、早いうちに入手しておくべきだろう。お近くの店にない場合はリアルミュージック(03-3235-2323)まで。(佐野/Special thanks to Real Music & Elliot Kendall)
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