2000年7月17日月曜日

☆Chris Dedrick:『Be Free』(Air Mail/AIRAC1003)

待望のクリス・デドリックが72年に制作した未発表アルバム『Be Free』がリリースされた。私はこのアルバムのテープをクリス本人から96年に8曲を聴かせてもらってその出来の良さに驚き『ソフト・ロックA to Z』で紹介したのだが、ようやくここで全貌を聴くことができた。その時のタイトルは『Wishes』だったが、本CDでは12曲に増え、音質も格段にアップしてさらに鮮烈な印象を受けた。ソロということで、それまでの女性コーラスがなく、全体的に落ち着いたいぶし銀の輝きがある。そのドライな肌触りは70年代の空気を敏感にキャッチしていた。シンプルな演奏ながらホーンを付けるのセンスが抜群だ。タイトルの「Be Free」はそのテープでは「Antidisestablishmentarianism」という長ーいタイトルがついていて、繊細な歌い出しと中盤のホーンの不協和音が印象的。アコースティックな演奏を生かしたクロスビー、・スティルス&ナッシュ、そしてフリー・デザインを彷彿とさせる曲が多いが、ピアノとストリングスだけのバッキングでそのメロディアスさが際立つ「I'll Come To See You」や、まどろむような「Someday」、途中のテンポ・チェンジが冴える「You Are My Lover」のようなナンバーもある。その中でもアコースティック・ギターを生かしながらエレキギターを前面に出し強いビートに彩られたロック・ナンバーがハイライトだ。イントロのギターが決まった「I'm A New Man」、これはデモ・テープでは「When」というタイトルだったもの。そしてこのアルバムのベスト・ナンバーがヘヴィなギターのリフに乗せた「Begin Works」、途中のつっかかるようなベースにホーンがからみ、新境地を切り開いている。ソロならではの醍醐味だ。ちなみにこの曲はデモでのタイトルは「A Man」。(佐野/Special thanks to Elliot Kendall)
Chris Dedrick - Be Free

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