このアルバムはブルース・ジョンストンとテリー・メルチャーのプロデュースによる74年のイクイノックス・ワークスだ。ビル・ハウスはこのアルバムの後、5年後にもう1枚アルバムを出しただけでプロデューサーに転身してしまった、ミュージシャンとしては無名の人物である。ただこのアルバムは明快なメロディとカラっとしたサウンドによる良質なSSWのアルバムに仕上がっていて、なかなか心地良い。ビル・ハウスの歌い方も、一本調子ながらストレートでくせのない歌い方をしており、私の苦手なSSWにありがちな自分の世界に入り込んでいないのもいい。ベストは軽快な「The Damage Is Done」と「Jenny」。ブルース&テリーのコーラスも派手ではないがポイントで入る。(佐野)
2000年3月27日月曜日
☆Curt Boettcher:『Misty Mirage』(TYO/0024)
2年前のVANDA24号で、カート・ベッチャー、ゲイリー・アッシャー、キース・オルセンが作ったTogetherレーベルの膨大な未発表トラックの存在について報じたが、そのマスターが遂にまとめて登場してきた。このCDはカートの未発表曲・デモを9曲にジングル2曲、Togetherでのソロ・シングル2曲、さらに歌のないオケとインストを5曲収めたものだ。Togetherのソロ・シングルは大変レアなもので価値は高いが、サジタリアスの『The Blue Marble』と同じマスター管理されていただけあって音もその延長上、ミレニウムを期待しているとちょっとガッカリだ。ミシェル・オマリーのソロ・アルバムに入っていた2曲のカート・ヴァージョンは、Aメロが地味でもサビで聴かせる「Misty Mirage」はともかくとして、「Astral Cowboy」はいかにも地味。みな作曲がカートもしくはカート中心、カート自身はブライアン・ウィルソンのようなメロディ・メイカーではないのでそれは仕方がないだろう。それよりも驚いたのが冒頭の「Tumbling Tumbleweeds」。きらびやかなサウンドに転調を繰り返すポップなハーモニー、実に洗練された高度なサウンドの曲でさすがカートといいたくなる傑作だ。続く「Baby It's Real」はカートとマイケル・フェネリー、サンディ・サルスベリーの共作で、サンディが入っただけあって曲はポップで楽しめる。高揚感のあるサビの盛り上げた方が素晴らしい。リー・マロリーのソロ・シングルだった「That's The Way It's Gonna Be」はガラっとポップなアレンジになり、サイケデリックからジャズ・テイストへ見事に切り替わっていた。デでは「Another Time」がボールルームのCDのデモとは異なるコーラスを一部付けたヴァージョン。そしてポップでキャッチーなリーヴァイスのCMジングルは、カートがこの道でも食っていけたのではと思わせる快調な出来だった。(佐野)
2000年3月21日火曜日
☆Beach Boys:Endless Harmony (Brother/72434-92353-9-7) DVD
アメリカで今年、DVDとして発売された際に、特典としてボーナス映像+音源がプラスされた。まず映画の中でも一部分が使われていた63年のTVショーでの口パクライブ「Surfin' USA」「Things We Did Last Summer」が完全版、プールでふざけている66年の「Sloop John B.」のプロモ・フィルムも完全版が披露されている。またメンバーが子供達とハイキングへ行って野原を走り回る68年の「Friends」のプロモ・フィルムは、オリジナルの形では初の登場、もちろん完全版だ。あとはマーク・リネットのサラウンド・ミックスが「California Girls」「Kiss Me Baby」「God Only Knows」「Surf's Up」「Long Promised Road」「Sail On Sailor」「Do It Again」と7曲収められた。リード・ヴォーカルがくっきりと浮かび上がったこのミックスは非常に新鮮だ。映像は基本的にスチール写真を使用しているが、「Long Promised Road」はカールがロンドンで公園などを一人で散歩している映像が使われ、「Do It Again」は80年のイギリスのKnebworthでのライブがそのまま使われた。この公演では6人のメンバーが揃っているのだが、フル・メンバーが揃う映像はこれだけと言われている貴重なもの。ライブの音質は良く、映像もいいが、口の空け方が合わないなど、映像と歌は厳密には合わせていないようだ。以前LDを買った人もこれだけのボーナス映像があればこのDVDは絶対必要だろう。(佐野)
2000年3月14日火曜日
☆Beach Boys:Unsurpassed Masters Vol 18~20プラス1で4タイトル発売、これで最終リリース。
*Vol.18『The
Alternate "Smiley Smile" Album』
1967年に録音された『Smiley
Smile』セッションからのセレクト。まず「Wonderful」だが、『Smiley Smile』の時のウィスパリングの歌い方と、中間部での「Heroes
And Villains」のフレーズを使ったガヤガヤという基本的プロットは一緒だが、バッキングがオルガンではなくピアノで録音されていることが決定的に違う。パート別に録音されている「Wind Chimes」は、エンディングのアカペラの聖歌隊のようなコーラスが、ここではハープシコードのバッキングで録音されていて、その美しい響きがとても新鮮だった。「Vegetable」はベースのみ、ベースとピアノのみ、ヴォーカル入りと順に過程が分かる。「She's Going Bald」は3パートで分けて録音、「Gettin'
Hungry」はコーラス部分のみ、「With Me Tonight」はイントロ部分のみのセッション風景が収録されている。
*Vol.19『The
Alternate "Wild Honey" Album』
CD2枚組。ディスク1にはまず録音が67年ということで「Cool Cool Water」からスタート、ソロから徐々にコーラスが厚く付けられていく様がよく分かるセッション。当時は未発表だった「Can't Wait Too Long」はピアノから始まり、ギター、鉄きんが徐々に増えて歌も入っていく。「I Was Made To Love Her」は本チャンでは使われなかったドゥ・ワップ・コーラスの練習と、そのコーラスに乗せたカールのソウルフルなヴォーカルなどが聴きもの。ディスク2はまず「Here Comes The Night」、初めの頃のラフな演奏が面白い。「A
Thing Or Two」は通しではなくロックンロールのパートと間を置きながら録音している。当時未発表の「The Letter」はかなり軽く歌ったテイクまで。「Darlin'」はピアノからスタート、歌、ホーン、バックコーラスと順に入り完成まで。「Wild Honey」も同様で順に完成までが味わえる。
*Vol.20『Friends,20/20
And Odds & Ends』
CD2枚組。
ディスク1の目玉はなんといっても「Friends」。今まで聴いたものとは全然違うテイクで、特徴的な上昇していくコーラス・パートがストリングスになっている。「Do It Again」は初期ヴァージョンで、『Endless
Harmony』のテイクは中間のテイク。当時未発表だった「We're Together Again」と「Walk On
By」は、中間の生々しいヴォーカルとハーモニーが付けられたばかりのテイクが新鮮。ディスク2の目玉は文句なしに「I Can Hear Music」。初期のテイクはカールの歌い方が違うし、バックコーラスも一部別のパターンで付けられている。アカペラ・パートもはじめはない。生ギター一本のバッキングでカールが歌うテイクなんて聴いてみたいでしょ。「Unknown Instrumental」は『Smile』の残骸のような簡単なインスト。「Time To Get Alone」はインストまで完成まで。「Sherry,She
Needs Me」は既にお馴染みのテイク。「Break Away」は『Endless
Harmony』収録のデモにたどり着くまでの3テイクも収録。以下の「Ode To Betty Joe」「It's
Time」「America,I Know You」はビーチボーイズの録音ではない。
*『Today
& Summer Days Stereo Version With Bonus Track』
これは『Today』と『Summer Days』の正規ヴァージョンのステレオ・ミックスではなく、Unsurpassed MastersのVol.7からVol.9に収録された膨大なテイクの中から、より完成に近いステレオのテイクを集めたものだ。よって歌なしのものもあるし、別テイクのものもある。そして2イン1シリーズにも収められた別テイクなどがボーナス・トラックになった。既に他のブートでは有名な「Three Blind Mice」がこのシリーズでは初登場ということくらい。無理して買う必要のないディスクだ。
2000年3月11日土曜日
☆Carnival:『The Carnival』(Vivid Sound/VSCD582)
世界初CD化を続けるVividは東芝EMIのライセンスでこのカーニヴァルの唯一のアルバムをCD化した。「Soft Rock A to Z」で既にご存じの方もいるだろうが、このカーニヴァルのアルバムのスタッフを見ると、プロデュースがボーンズ・ハウ、アレンジにボブ・アルシヴァー他と、おおこれはアソシエイションの『Birthday』やフィフス・ディメンションの『The Magic Garden』というソフト・ロックの理想が結実した超名盤を生み出したコンビなのだから、いいのは初めから決まったようなもの。そしてバッキングにはハル・ブレイン、ジョー・オズボーン、マイク・デジー、ラリー・ネクテルなどアメリカ最強のレッキングクルーの面々が受け持つのだから完璧だ。そして男女4人のメンバーはヴォーカルにセルジオ・メンデス&ブラジル'66のジャニス・ハンセンに、マーメイズのテリー・フィッチャーなどこれまた実力者揃いと、まさにプロの力が結集し、プロの実力を見せつけた傑作と言えるだろう。コーラス・ワークが実に素晴らしく、見事なアレンジの「Turn Turn Turn」、幾重にもからむハーモニーに心を奪われる「Laia Ladaia」、転調と流れるコーラスが心地よい「Hope」、徐々に盛り上がり至福のハーモニーを聴かせてくれる「A Famous Myth」と見事なナンバーが目白押しだ。聴いたことのない人は黙って買いましょう。(佐野)
2000年3月10日金曜日
☆Who:『BBC Sessions』(Point Entertainments/PNT9019)
アメリカのBest Buyという通販ネットがあるが、ここで『BBC Sessions』を買うと、なんと7曲のCD未収録曲が収められたボーナスCDがプラスされる。内容はまずピートのインタビューからつながる70年4月13日の「Pinball Wizard」からスタート、同日の「The Seeker」のヴァージョン2、67年10月10日の「I Can See For Miles」と「Summertime Blues」、69年の「See Me Feel Me」、70年4月19日の「Heaven And Hell」と「I Don't Even Know Myself」がその収録曲。その中で「The Seeker」はよりレコードに近いテイク。「I Can See For Miles」はベースが非常に大きくミックスされたテイクで、これはアルバム『The Singles』収録のものと同じと思うのだがどうだろうか。「Summertime Blues」と「Pinball Wizard」の演奏のテンションは非常に高く、ボーナス・ディスクのみ収録なのがもったいない出来。2枚セットで12.56ドルは安い。bestbuy.comを参照。(佐野)
2000年3月9日木曜日
☆Pete Townshend:『Lifehouse Chronicles』(Eel Pie)
『Lifehouse』は未完で終わったピート・タウンゼンドの大作で、その残骸で作った『Who's Next』がフーの最高傑作になったため、もし完成していればと、今や『Smile』のように永遠の幻の名作になっているのは、フーのファンなら誰でも知っていることだろう。その『Lifehouse』は昨年の12月5日のピート自身の手によりBBCでラジオドラマ化され、オン・エアーされた。ピートはネット販売でそのドラマをCD2枚に収録、さらにこの『Lifehouse』を30年ぶりに全貌を明らかにすべくさらに4枚のCDを加えて、CD6枚組のボックス・セットでネット販売した。LPサイズの豪華な箱に、46Pに及ぶブックレットを付け、それがなんとたったの40ポンドなのだから、安いのひとこと。これを買わなきゃもうロック・ファンとは名乗れないぞ。内容的な目玉はディスク1、2のCD2枚、24曲、132分に渡って収められたピートの当時のデモ集だ。ピートのデモの完成度が高いのは有名で、すでにフー時代のデモ集が2セット発売されているが、この『Lifehouse』のデモのクオリティは飛び切り高い。『Who's Next』のピートの全曲、シングルの「Join Together」「Relay」「Let's See Action」「I Don't Know Myself」、『Odds And Sods』の「Pure And Easy」「Too Much Of Anything」「Put The Money Down」、『By Numbers』の「Slip Kid」、『Who Are You』の「Who Are You」「Music Must Change」「Sister Disco」、未発表の「Teenage Wasteland」「Time Is Passing」「Mary」「Greyhound Girl」とそのどれもが素晴らしい。フーの曲はほとんどアレンジが完成されており、ピートの底知れぬ才能に驚かされるばかりだ。ディスク3は大半が最近のライブや新録音ヴァージョン。その中には「Who Are You」の“Gateway"ヴァージョンまである。ディスク4はラジオ・ドラマ用のオーケストラのスコア。そして残るディスク5、6がラジオ・ドラマという訳だ。さっそくeelpie.comへ申し込もう。petetownshend.co.ukよりも直接行ける。(佐野)
2000年3月5日日曜日
☆Pete Townshend:『Avatar』(Eel Pie)
ピートが敬愛していた導師ミハー・ババに捧げた自主制作盤は70年の『Happy Birthday』、72年の『I Am 』、76年の『With Love』の3枚があるが、限定1000枚といった超レア盤ばかりなので、この3枚を揃えるのは至難の業だった。ところがピートは今回、この3枚を限定2000セットでCD化、おまけにミハー・ババの生前の姿が移ったCD-ROMまでプラスし、都合4枚セット40ポンドでネット販売を開始した。箱にはナンバリングも入っているので、あまりゆっくりしていると売り切れる可能性があり、早くに購入しなければいけない。なにしろピートだけではなく、ロニー・レーン、ビリー・ニコルスも書き下ろしで参加しているので、絶対買いだ。ミハー・ババの顔なんてと、不要に思われたCD-ROMも、BGMにピートの「O'Parvardigar」の初登場と思われるライブが使われていて、これも価値がある。Rykoの『Who Came First』のボーナストラックに入った6曲を除いてこのボックス・セットでしか聴けない曲はピートの「Content」「Mary Jane」「Baba O'Riley」「Parvardigar」があり、ロニー・レーンは「Evolution」「Just For A Moment」、ビリー・ニコルスは「Forever's No Time At All」「This Song Is Green」「Give It Up」「Without Your Love」「Gotta Know Ya」とレア・トラック満載だ。シンプルな演奏の曲が多いが、こういったバッキングはメロディアスな曲に特に合う。箱の中身はミハー・ババ関係の不要なものばかりだったが、このCD3枚はUKロック・ファンの必須アイテムだろう。申し込みは上記と同じ。(佐野)
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