CD時代になってリイシューが進むジェリー・ロスのワークスだが、残された数少ない未CD化のアルバムの中でも待望の傑作がリリースされた。この黒人歌手ボビー・ヘブは、自ら書いた「Sunny」が66年に全米2位の大ヒット、一躍知られるようになったものの続くヒットがなく、ボビー・ヘブではなく、「Sunny」だけが残った。そしてジェリー・ロスにとっては「Sunny」はプロデューサーとして始めてのメガ・ヒットであり、彼をステップ・アップさせるきっかけになった記念すべき曲となる。この「Sunny」は、哀愁を帯びたマイナー調の心引かれるメロディを持ち、いかにも日本人好みの名作。ただジェリー・ロス作品の中では異色の曲だろう。そしてこのヒットを受けて作られたのが本作なのだが、この中にはジェリー・ロスらしさが出た傑作が多く含まれていた。黒人シンガーだけあってR&Bタッチの曲が多くそれはそれで魅力的なのだが、やはりこちらが望むのは華麗なジェリー・ロス・サウンドだ。そういう観点ではスウィング感のあるジャズ・タッチの洒落たナンバー「Where Are You」がいい。ミディアム・テンポのバリー・マン作の「Good Good Lovin'」のカバーも、ゆったりとしていて心地よい。なんといってもハイライトはロスとアレンジャーのジョー・レンゼッティとの共作「Love Love Love」。力強いビートと美しいピアノの響きが見事にマッチし、高揚感のある傑作中の傑作だ。またボビー・ヘブの声は、ジェイ&ザ・テクニクスのジェイ・プロクターよりもくせがなく、様々なタイプの曲によく溶けこんでいた。(佐野/Special Thanks 宮木)
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